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善き人のためのソナタ

2009-08-31 | 映画
台風か近づいて来ているせいで、今日は朝から雨。


雨脚がどんどん強くなっていく中、街へ歯医者に出掛けました。

診察が終って外にでると、雨はさらに激しくなっていました。
「午後もずっと雨だろうなあ」
とイヤな気持ちになりましたが、こんなときこそ…と思いなおし、雨がしきりに跳ね返るウルトラマン商店街を歩いて、レンタルショップで映画を二本借りてきました。

その一本が『善きひとのためのソナタ』でした。



おととしのアカデミー外国語映画賞受賞作…というコピーに惹かれて借りたのですが、あらすじ解説には、
「旧東ドイツを舞台にした、秘密警察の捜査官が劇作家の盗聴を続けるうちに人間の絆に目覚めるドラマ…」
みたいなことが書いてあって、面白そうだけれど重たいかなアと、少し案じてもいたのです。

でも観始めたらグイグイと引寄せられて、最近の収穫の一本でした。

監視社会の恐ろしさを克明に描いている…ということも宣伝文句にはあって、まあ、それは確かにそうなのですが、私が共感したのは、主人公の国家保安省の大尉に、何ともしれぬ「中年男の物哀しさ」がづっと画面から伝わってきたことです。



「党に忠実に生きてきたエリート官僚」とは言うものの、いつも配給品みたいなジャンバーを着て、しかもそれを無粋にファスナーを首元まであげているのです。
姿勢は良いけれどどちらかと言えば小柄だし、髪の毛もずいぶん淋しくなっています。

彼の住むマンションの部屋の場面があります。
これがまた何とも侘しい。家具は必要最低限しか置いてないし、どうやらひとり暮らしらしく自分のぶんだけパスタかなんか作ってひとりで食べてるし。
そういうのを観ると、ほとんど「痛みを伴った共感」すら覚えました。

ドラマの設定が1984年ですから「ベルリンの壁崩壊」の五年前で、その頃の東ドイツの経済状態がどんなものだったかはまるで知りませんが、まア、けっして芳しくはなかったでしょう。
ですから、大臣と直接話もできる優秀な捜査官が質素な暮らしをしていても、イメージとしてはぴったりなのですが、その質素さ侘しさ加減が、私や私の周辺の中年男にWる…。



劇作家は有名な舞台女優と同棲をしていて、その女優に国家保安省の大臣が横恋慕を抱きます。
そこで劇作家の家の監視を命じて何かあれば召し上げてしまおう…という大臣と、大臣に取り入って出世を企む中佐。そして、上官の命令に忠実に生きてきた大尉が、中佐の指令に従い、劇作家宅の盗撮と盗聴を始める…というのが展開です。

サスペンスもたっぷりあるし、何より演出のタッチが爽やかで理知的な印象です。
後で調べたら、監督は33歳の若手で長編第一作だと知りました。それも大学の卒業制作で、シナリオを読んで共感したドイツの有名俳優がたくさん出てくれた…とありました。
そうしたらドイツで絶賛され、色んな賞を受賞し、ついにはアカデミー賞まで…。

まアこういう話は宣伝用にけっこう脚色されたりしてるものだけど、確かに「彗星のように現れた若手の第一作!」にふさわしい初々しさが香ってくる映画でした。

タイトルは、レーニンの言葉から来ています。レーニンはベートーベンのソナタを評して、
「こういう曲を聴くと『善き人』にしてしまい、革命を妨げる」
と言ったとか。
そういう感性をもつレーニンも、レーニンをしてそこまで言わしめるベートーベンもカッコ良いナ…と思いました。



そうそう、私はしょっちゅうパスタを食べてるんですよ。
何しろ「食費の節約に」と考えて、ヤフーショッピングでダンボール買いをしてしまったので。
150食分も…。

映画を観終わった頃には、雨が上がっていました。
台風がそれてくれたようです。


ご退屈さまでした。




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