質問本文情報
令和四年八月三日提出
質問第一〇号
「統一協会」=世界平和統一家庭連合に関する質問主意書
提出者 宮本 徹
安倍晋三元首相が殺害された事件で、容疑者は、世界平和統一家庭連合(旧名称世界基督教統一神霊協会。以下、「統一協会(家庭連合)」と略)の信者である母親が「多額の寄付をして破産させられ、家庭生活が滅茶苦茶にされ、統一協会に恨みがあった」と供述していると報じられている。
また、容疑者は「去年九月、統一協会の代表らが設立した天宙平和連合(UPF)の集会に寄せられた安倍元首相のメッセージを見たころに殺害を決意した」と述べていると報じられている。
(かつて、アメリカ下院の外交委員会国際機構小委員会(フレーザー委員会)の最終報告書では、「文鮮明が関係している多数の教会、企業、委員会、財団その他の集団は、文の中央集権的な指導と統制下にある実質上単一の世界的機関の一部分である」「これらの多数の組織のあいだには、主として諸組織間の人事異動や財政の混合の点で、あれこれの構成要素を一体であるかのように使用する点で、そしてもちろん、文という人物において、たえまない、緊密な交流がある」として、それらを総称して「文鮮明機関」と呼んでいる。
「統一協会(家庭連合)」は、国際勝共連合、原理研究会、ハッピーワールド、世界日報、世界平和女性連合、天宙平和連合、世界戦略総合研究所、勝共UNITEなど様々な顔を持ち活動しているが、この質問主意書では、これらを「統一協会(家庭連合)」もしくは「統一協会系団体」と呼ぶ。)
これを踏まえ、以下、質問する。
一 「統一協会(家庭連合)」は、組織的な活動として、先祖因縁や霊界の恐怖を煽る脅迫的行為によって、国民・信徒に対して社会的に不相当な高額な献金・物品購入を強いる(いわゆる霊感商法)など、大きな被害を広げてきた。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、把握されている被害は、一九八七年から二〇二一年までに、三万四千五百三十七件、被害額は、千二百三十七億円余にのぼる。「統一協会(家庭連合)」の「霊感商法」は、刑事裁判で断罪され、民事裁判でも違法性が繰り返し認定されてきた。
また、「統一協会(家庭連合)」の伝導・教化活動そのものについても、被勧誘者に対する違法な行為であることを認めた一連の判決がでている(二〇一三年十月三十一日の札幌高裁判決など)。
政府として、「統一協会(家庭連合)」の反社会的な行為を、どう把握しているのか。把握している内容を明らかにされたい。また、政府として、「統一協会(家庭連合)」をどう総体的に認識しているのか、示されたい。
二 一九八七年六月四日参院決算委員会で、佐藤昭夫議員が、「統一協会」(「統一協会系団体」含む)による組織的違法活動への対処を求めたのに対し、遠藤要法務大臣は「刑罰にかかわる問題のときには厳正な対応をしたいということは当然でございますが、さらにまたその根を絶やす方途もこれから検討していかなければならぬ問題だ」と答弁している。
しかし、全国霊感商法対策弁護士連絡会によれば、今日なお、「統一協会(家庭連合)」(「統一協会系団体」含む)による被害が続いている。
1 今日にいたるまで、「統一協会(家庭連合)」(「統一協会系団体」含む)の反社会的な行為の根を絶やす方途の検討は、どのようにおこなわれたのか、明らかにされたい。
2 「統一協会(家庭連合)」(「統一協会系団体」含む)による霊感商法等について、政府は「違法行為があれば各種の法令を適用して、厳正な取り締まりを行っていく所存」(一九八七年七月二十八日衆院地方行政委員会)と答弁しているが、警察はどう取り締まってきたのか。警察が、「統一協会(家庭連合)」(「統一協会系団体」含む)による霊感商法等について、詐欺罪、恐喝罪、脅迫罪、特定商取引法(旧訪問販売等に関する法律)、薬機法(旧薬事法)、迷惑防止条例等を適用して、これまでに検挙した件数は何件か。うち有罪となったものは何件か。可能な限り答えられたい。
3 消費者行政として、「統一協会(家庭連合)」(「統一協会系団体」含む)の霊感商法等(高額献金を含む)に対して、国民生活を守るためにどう取り組んできたのか。全国の消費生活センター、国民生活センターに寄せられている、「統一協会(家庭連合)」(「統一協会系団体」含む)の霊感商法等の相談件数、平均契約金額、手口、契約当事者の特徴などを国は把握しているか。「統一協会(家庭連合)」(「統一協会系団体」含む)の霊感商法等の被害件数、被害額は、行政処分に値すると思われるが、行政処分の検討はこれまでおこなってきているのか。
4 人権擁護局や全国の法務局に「統一協会(家庭連合)」にマインドコントロールされた「入信者」の家族から、「入信者の家族の所在を知りたい」「入信者と連絡をとりたい」「入信者を救出したい」など「統一協会(家庭連合)」に関わる相談はこれまで何件寄せられているか、可能な限り答えられたい。「統一協会(家庭連合)」にかかわる多数の相談に、どのような対応をとってきているのか、可能な限り答えられたい。
三 深刻な被害が広がる中、警察が全国的に「統一協会(家庭連合)」の霊感商法等の違法行為の摘発をすすめ、二〇〇七年秋以降二〇一〇年にかけて、特定商取引法違反、薬事法違反、公選法違反などで、十三件、三十人以上の信者が逮捕された。いわゆる「新世事件」の二人は懲役刑(執行猶予つき)、それ以外は罰金刑に処せられた。これらの摘発の際、警察は、「統一協会(家庭連合)」系のダミー会社だけでなく、各地の教会についても強制捜査をおこなっている。
新世事件の判決では、信者らの販売活動は、「統一協会(家庭連合)」の「相当高度な組織性が認められる継続的犯行の一環」とされた。
一方、新世事件の摘発をうけて、二〇〇九年に「統一協会(家庭連合)」は、会長名で「教会指導者に対する注意と指導」と題する文書を二度にわたって公表したが、「統一協会(家庭連合)」の組織的責任を認めるものではなく、信者の個人的な活動だと誤魔化そうとするものであった。
全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、その後も、「統一協会(家庭連合)」の被害は続いている。政府は、二〇〇九年以降も、「統一協会(家庭連合)」がおこなう、先祖因縁や霊界の恐怖を煽る脅迫的行為によって、社会的に不相当な高額な献金を強いる等の被害が続いているとの認識があるか。被害の根絶に向けて、捜査姿勢を見直す必要があるのではないのか。
四 宗教法人法は、第八十一条において、「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる」とし、一として、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」、二として、「第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」を挙げている。
問三で述べたように、立件された「統一協会(家庭連合)」の信者らの霊感商法などの販売活動は、「統一協会(家庭連合)」の「相当高度な組織性が認められる継続的犯行の一環」とする判決が出ている。二〇〇九年以降にも違法な献金勧誘行為があったことが複数の判決で明らかになっている。「統一協会(家庭連合)」が、霊感商法や自己破産に追い込むほどの献金勧誘行為を繰り返していることは「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」にあたるのではないか。
問一で述べたように、いわゆる「青春を返せ裁判」において、「統一協会(家庭連合)」の伝導・教化過程について、被勧誘者に対する違法な行為であることを認めた判決がでている(二〇一三年十月三十一日の札幌高裁判決など)。これは、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」にあたるのではないか。
これらの「統一協会(家庭連合)」の違法行為は、「一部の教会員の行き過ぎた活動」ではなく、長年にわたり、組織的な活動としておこなわれてきたとの認識はあるか。
「統一協会(家庭連合)」の活動は、霊視商法詐欺事件の詐欺行為を理由に宗教法人の解散命令が出された「明覚寺」を大きく上回る被害額を出している。「統一協会(家庭連合)」による被害根絶のために、宗教法人法第八十一条に基づく、解散命令を視野に入れた検討をすべきではないのか。
五 フランスではカルトの被害の防止のための法律(「人権および基本的自由を侵害するセクト的団体の防止および取締を強化する二〇〇一年六月十二日の法律」)が作られている。同法では、カルト法人等やその幹部が、複数回、詐欺など法律の定める犯罪を複数回宣告された時は、解散が宣告されうるとしている。また、マインドコントロール等にかかわって、「重大または反復した圧力行為または判断を歪めうる技術の結果、心理的または身体的服従状態にある者に対して、その者に重大な損害を与えうる作為または不作為に導くために、その者の無知または脆弱状態を不法に利用することは、三年の拘禁刑および三十七万五千ユーロの罰金に処せられる」などとする無知・脆弱状態不法利用罪が設けられている。
こうした事例も参考にしながら、カルトの被害の防止のための法的規制について検討をすすめるべきではないか。
六 「統一協会(家庭連合)」の「信者」の子どもたち(いわゆる統一協会二世)から、親の「献金」による困窮や信教の自由、結婚・恋愛の自由が認められないことへの悲痛な声が上がっている。
フランスでは、「統一協会」被害者の運動から生まれた「UNADFI」(家族と個人を守る会全国連合)が、公益団体として国から補助を受けて、研究、対策、被害者の救済、情報提供、予防などの活動をおこなっている。
「統一協会(家庭連合)」などのカルトの被害について、カルト問題にとりくむ民間団体へ財政的支援をおこなうなど民間団体と協力しながら、「二世」のみなさんの苦しみも含めて、被害者救済・支援に取り組む必要があるのではないか。
また、「統一協会(家庭連合)」の「信者」が子等に、子等の意思にそむいて「信仰」を押しつけることは、児童虐待に当たると考えるか。親が子どもの奨学金を献金に回すなど、行き過ぎた献金により子どもが進学ができなくなるようなケースは児童虐待にあたるかと考えるか。カルト教団の信者である親の行動で、子どもの人権がふみにじられている場合は、児童相談所や自治体は積極的に行動すべきではないか。
七 全国霊感商法対策弁護士連絡会は、繰り返し、国会議員に対して、統一協会やそのダミー組織のイベントに参加したり、賛同メッセージをおこなわないこと、選挙で「統一協会(家庭連合)」信者らからの支援を受けないことを求めている。その理由として、「統一協会(家庭連合)」は反社会的団体であり、違法活動にお墨付きを与えかねないこと、政治家によるお墨付きは、「統一協会(家庭連合)」による反社会的な活動を容易にし、また、その反社会的活動の是正を困難にするものとして悪用されることをあげている。
1 岸田内閣の、閣僚、副大臣、政務官で、「統一協会系団体」の催しに、参加したり、賛同メッセージを出した者がいれば、把握するところを明らかにされたい。
2 岸田内閣の、閣僚、副大臣、政務官で、選挙にあたって、「統一協会(家庭連合)」信者らから支援を受けた者がいれば、把握するところを明らかにされたい。
3 岸田内閣の、閣僚、副大臣、政務官で、自らが代表をつとめる政党支部や自らの資金管理団体、関係政治団体に対して、「統一協会系団体」、またはそれらの役員から、寄付を受けたり、パーティー券を購入してもらっている者がいれば、把握するところを明らかにされたい。また、逆に、「統一協会系団体」に会費を支払っている者がいれば、把握するところを明らかにされたい。
4 岸田内閣の、閣僚、副大臣、政務官で、「統一協会系団体」から、秘書を受け入れている者がいれば、把握するところを明らかにされたい。
5 政治家が「統一協会系団体」の催しに参加したり、賛同メッセージを送ること自体が、「統一協会(家庭連合)」の反社会的活動を容易にしているとの認識はあるか。今後、岸田内閣の閣僚、副大臣、政務官は、問七の1~4に挙げた行為は厳に慎むべきではないか。
右質問する。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さすがわが日本国の国会はよい仕事をしておられます。(文責:吉田)
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