・・・無人の町に、昼下がりの白熱した日射しが照りつけていた・・・
藩中随一とうたわれている剣の遣い手、牛岦V次郎が、密会した妻女とその相手を斬り殺し、更に逮捕に向かった徒目付2名を斬殺して、麦屋町の料理茶屋に立て籠もっているという。
討手を命じられ、これ、また、不伝流の俊才剣士 片桐敬助が、奇しき宿命の糸にむすばれ牛墲ニ対峙する。
男の闘いの一部始終を緊密な構成、乾いた抒情で鮮烈に描き出す、藤沢周平の秀作の一篇。
平成4年10月に執筆、一時間もあれば読みきってしまう短編だが、何回も読み返してしまうほどの面白さで・・・お奨め。
ストーリは大分異なるが、男の心意気と炎天下昼下がりの決闘ということで、半世紀前の不滅の名作である「真昼の決闘」の映画が、何故かダブル。
今となっては確かめようがないが、作者も恐らく意識して書いたように思うのだが。