黒檀にめげた。

前々から分かっていても、黒檀特に真黒が動くというのは、ホントに毎回めげる。

だいぶ以前、そう、かれこれ３０年ぐらい前かも、黒檀の仏壇を頼まれて、作った。

それも真黒が良いと言うので、木場の知り合い通して、２０年は乾かして有るという真黒を購入した、当時はまだ自前の乾燥器など無く、人工乾燥やさんに、

ゆっくりやってと、３ヶ月もかけて、乾燥してもらった、

それも木の肌が傷むのは嫌なので、材のぐるりを、ボンドを塗って、乾燥してもらった。

開けてみてびっくり、もう罅だらけ、とてもではないけれど、これは使えない。

いた仕方なく、福島の市場に出て来るそれこそ戦前の真黒を買った。

たまたま床柱用にと、取っておいたものだそうだ、含水率を測ると、２０％。

まあこれなら、と、半年かけて、人工乾燥。

中には傷んだ部分も有ったけれど、これは真真としては問題ないと、さっそくに仏壇作り。

３ヶ月掛かって作り上げた仏壇は、事情が分かっていていただいただけにとても喜ばれた。

多分モントリオールの仕事をした後だったから、納品してから４年は立っていたと思うが、

ある日「仏壇の抽斗の前板に罅が、、、」

慌てて、お客様のお宅に、、、見事に、罅。

とっても綺麗な木目（よくよく見ると黒檀系でも木目は見えます。）かすかに、罅が入っていて、多分埃もはいったのかかすかに白い線が見える。

当然、持ち帰って、補修しようか、新しい材で作り直すか、、、

結局新しい材で作り直し。がっちがちに乾燥して、含水率１０％、どうだこれなら動くまい、

普通ここまで落とすと普通の木は流石に動かないのです）

２年後それでも、狂った、今度は抽斗が動かなくなった。

まあこれも、削りなおして作り直し、ところが、再度罅が、、、、

お客様に相談して、以前外した真黒の板を罅の所で敢えて割って、接ぎ直し。

見た目は全く何事も無くし、未だに狂ってはいない。

結局ちゃんと納まるのに、８年かかった。

真黒はこういうことがあります。

よく良い黒檀の二胡ですね、というのを年間４台くらいはこのひび割れ直しの仕事が入って来ます。

真黒とはそういうものですと、言いながら、今度は自分の作った二胡に、ひび割れが、人の作ったのはこういう物ですからと平気で説明できるのだが、自分の作ったものだと、とても、平気でという気にはならない、（結構気が小さい）


お買い上げいただいて多少花窓を違う形に変えてと、納品前にもう一度と細かく見たら、

何と、かすかな罅、これはもうお客様に言って、直させてもらうしか仕方が無い、

むしろ、納品前で良かったという気持ちと、寒い国からわざわざ見に来ていただいて、とっても気にいったのが、真黒だったということも有り、これはちゃんと説明に寒い国まで行こうかと予定をいろいろ、

でもお客様が大変ご理解のある方で、真黒とはそういう物です、という私の説明を納得して下さった、感謝です。

でも、もう私も老い先短いし、何時までも直しているというのも多分出来ない特に地方いってしまった物に、これからどこまで対応出来るのかというのは問題だし、

やっぱり通販なんかしなくて良かったとも、思う。

数を稼がなければいけないという物でも無し、もともと日本で二胡作って採算合うとも思えないし。
弾きに来ていただいて気にいっていただいてご縁のある方に喜んでもらえれば、私の二胡作りも、納得できるし。

皆さん我が胡という言い方を御自分の二胡になさるけれど、私にとっても我が胡、

これを仕事にはしたくない、というより、ホント仕事になるような物ではないなという気もする。

あの胡もこの胡も皆な気になって、これでは売れない。

もう、真黒は作りたくない。店に一台置いておけばよいのかも、。