キツネノマド

松岡永子
趣味の物書き
(趣味とはなんであるか語ると長くなるので、それはあらためて)

二人だけの秘密

2010-09-11 22:34:03 | 500文字の心臓
 小説家に、漫画家にも例があるから誰も不審を抱かない。ぼくと君が二人で一人だということに。一緒に二人の名を共有していることに。ひとびとは勝手に想像をめぐらせている。二人はとても円満なのだ、とか、実は冷えきっている、とか、口もきかないらしい、とか。
 ひとびとはほんとうのことを知らない。知る必要もない。
 ぼくは今でも君のことを想っている。傍に君を感じている。だから。僕には思い出せない。いつから君はいないのか。君がほんとうにいたのかどうかも。
 ぼくはずっと君を想っている。君はぼくの傍にいる。ぼくの傍に、ほとんどぼくの裡に。ほんとうのことになど興味はない。これからも、ぼくは二人で生きてゆく。

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