キツネノマド

松岡永子
趣味の物書き
(趣味とはなんであるか語ると長くなるので、それはあらためて)

遅刻

2014-12-27 06:10:05 | 掌編
「ごめんね、待った?」
「うん、ちょっとだけね」
 彼女はいつも約束の時間に五分遅刻してくる。きっちり五分。だったら五分前に家を出ればいいと思うのだが、そうもいかないらしい。遅れてくるのがわかってるんだから、ぼくも五分遅れていけばいいのだが、どうしてもそうできない。約束の時間の十分前には着いてしまう。
 三時に会いたければ、ぼくは三時十分、彼女には二時五十五分と約束すればいいのだろうか。
 ところが今日。電車にトラブルがあったせいで三十分も遅刻だ。駅から約束のコーヒーショップまでダッシュ。
 待たせるのが平気な人は待つのも平気かな。それともものすごく怒るかな。
 息を切らせながら店内を見まわすと、いない。帰っちゃったのかな。とにかく落ち着こうとコーヒーを飲む。五分後。
「ごめんね、待った?」

 という話を友達にしたら不思議そうな顔をした。
「おまえ、彼女なんかいたっけ?」
「……あれ?」

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