キツネノマド

松岡永子
趣味の物書き
(趣味とはなんであるか語ると長くなるので、それはあらためて)

虹の翼

2010-03-27 06:01:56 | 500文字の心臓
 その日、天界は大騒ぎだった。なにしろ数千年ぶりに天使が生まれるのだ。天界もすっかり少子化が進み、今や天使が一人生まれるというだけで、皆、そわそわうきうき、落ち着かなくなる。
「やはり希望の黄色でしょう」
「いや、癒しの緑だ」
「精神性の青と情熱の赤で染め分けるという手もあるぞ」
 天使が着る衣の色、着ける翼の色、などという些細なことですらなかなか決まらない。決まらないどころか、口論はエスカレートしてつかみあいにまで発展した。
「いいかげんにしなさい!」
 至上の方に一喝されて、皆、首をすくめた。至上の方はため息をつきながら言った。
「まあ、皆の意見を採り入れることにしましょう」
 ということで。天使の翼の色はやはり白である。スペクトル上のすべての色を重ねると、光は白くなるものなのだ。

「500文字の心臓」投稿作

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