今日でモリムラさんは辞めていった。
今日はカレー作りのイベントがあったが、私はアイさんと一緒に身体に障害がある子供たちの担当にあたったので、
他の子供たちとのカレー作りには、モリムラさん、24歳さん、ユウさん、そしてヒロキが担当した。
だからどんな様子でモリムラさんがヒロキと接していたのか見てないが、たまに見かけるモリムラさんは、なんだかイキイキしていた。
そうしてモリムラさんが帰る時間が来た。
モリムラさんが、私とアイさんが居る1階の部屋に顔を出した。
「あ!モリムラさーん、今までお疲れさまでしたー」
と、私が言うと、モリムラさんはささささっと部屋に入ってきて、私とアイさんにあいさつをした。
そして、
「やっと今日が来ました。これで辞めれます。スッキリです!」
とモリムラさん。
そのあと私達3人でヒロキや上司のグチ大会になった。
アイさんが、「とにかく私はヒロキさんは無理!大っ嫌い!」と言えば、
モリムラさんも、「あんな人が居る施設に居る子供たちが可哀想で可哀想で」。
私もあれこれこれまでのヒロキエピソードを披露。
いやあ!愉快快感爽快感!
モリムラさんは最後にアイさんに、
「アイさんにも辞めて欲しいです。アイさんがこんなとこに居るなんてもったいないですよ」
と言い、近々辞める私には、
「こんな最悪な職場だったけど、私はたかぽんさんの明るさにはいつも救われてました。本当にありがとうございました」
と言った。
え…
モリムラさんのことを、仕事ができるかもしれないけど少し生意気だなとか思っていたのに。
そんな風に思ってくれてたなんて、なんだか涙出そう。
玄関に行くモリムラさんを見ながら、あ!と、私はとっさに2階に駆け上がり、「みんなおいでー!モリムラさんにあいさつしよう」と子供たちをを呼んだ。
「えー…すみません」と下からモリムラさんの声が聞こえた。
モリムラさんを前にした子供たちに、
「○○ちゃん、モリムラさんにプールで支えてもらったよね」
「○○くんはいつもモリムラさんとポケモンの話しをしたよね」
「○○ちゃん、ピクニックに行った時、モリムラさんと一緒にお弁当食べたね」
など、私は思い出したことを子供たちひとりひとりに言って思い出させた。
これがせめてもの私がモリムラさんにしてあげられること。
子供たちも「うん」「あ、そうだった」とか言ってモリムラさんとのお別れを惜しんでいた。
そして皆でモリムラさんにサヨナラをした。
モリムラさんは「さよなら」と言って笑顔で手を振ると、あとは1度も振り向くこともなく行ってしまった。