それはおとといの仕事中の時だった(2)

2017年02月14日 | 日記
嫌な予感がするが、施設長に電話を入れるのは常識的なことだ。

鬼女に電話を入れる。

「もしもし」

めっちゃ不機嫌な低いトーンの施設長の声。

ビクビクしながら事情を話す私。

「はあっ?」

あーだこーだと怒鳴ってくる鬼女。

息子が昨日から具合が悪かったのなら、なぜ昨日電話を入れなかったのかとか怒鳴っている。

いやいやあんた、私がこの前血圧が高くて頭が痛いから休ませてもらえないかと電話をした時に、「前の日に電話をよこされても困るっ」と休ませてくれなかったじゃないか。

そう言いたい。言いたいけど「すみません」「申し訳ありません」と受話器を握り、謝る私。

「どうぞ行って下さいっ!救急でどうぞっ!」

ガチャン!

吐き捨てるように嫌みを怒鳴られ、電話を強く切られた。

その様子を見守ってくれていたCさんが、

「気にしないで行って。あの人はそういう人なんだよ」

と言ってくれたのが、その場での気持ちの救いだった。

「職員の健康なんて、職員の家族の健康なんて、どうでもいい人なんですね」

あきれすぎて悲しくて、私は涙が出た。

Cさんは「そうなのよ、あの人は」としかめ顔をしていた。

CさんとSくんにお礼を言い、私は外に出た。

ちょうど息子もフラフラしながら歩いて来たのが見えた。

車に倒れこむように乗り込んだ、青い顔の息子を気にしながら、大きい総合病院の救急外来に向かった。


早くやめたい。
早くやめたい。

あんな女のもとで働くなんて吐き気がする。



病院に着き、あれこれ検査。

きっと肺炎なんだろうなあ。

入院になるかもしれない。。


そんな覚悟をして、先生からの説明を受けた。


「検査をしましたが…」

「はい…」

肺炎でしょ、はいえん…


「風邪ですね」

はい、え…?

ん…

ちょ、こんなに大騒動の末、風邪って、ちょ、えー!

わたしゃどのツラさげてあの鬼女に「風邪でした」って言えばいいのよー

隣に座ってる息子が私を申し訳なさそうな顔でチラチラ見ているし。

「あのぉ先生、息子は、下痢が続いているし胸が痛いんですが…」

「まあ、風邪から腸炎を起こしていたんですね。胸は咳のし過ぎですね。」

先生…そんなあっさりと。

「あ、でも風邪ってばかにできないんですよ。いろんなタイプの風邪がありますからね。息子さんは重めの風邪をひいた感じですね」

あ、そこポイント。

重めの風邪。

腸炎の可能性。

メモメモ、心にメモ。


明日仕事に行って、鬼女に謝りながら病状の説明をすることになるだろうから、「ただの風邪でした」じゃどんな罵倒を浴びさせられるか。

重めの風邪。腸炎。

ここ重要だわ。うんうん。



帰りの車の中で、息子にもいろんな話をした。

今はこうやって母が居るけれど、もし地元を離れた希望の大学に進めたら、
これからは自分でどうにかしていかなきゃならないんだよ、ということも。

どうやら私に職場で嫌な思いをさせたことを察してる様子。

そんな息子16歳最後の日であった。

で、

明日職場に行くのが、ものすごーく憂鬱な気分でいる私であった。






















それはおとといの仕事中の時だった(1)

2017年02月14日 | 日記
鬼女施設長も冷血女リーダーも休みで、いくら仕事は大変でも、苦痛ではなかったおととい。

私と同世代のCさんと、若いSくんの3人体制で仕事をしていた午後2時半頃。

事務所から電話が来た。

「たかぽんさんの家族の方から電話が入ってますので外線を押してください」

「え?はい。。」

「もしもし…」

弱ってる様子の声の息子だった。

息子が仕事中の私に電話をかけて来るのは初めてのこと。

昨日から体調が悪そうだったがよほど酷くなったのか!

その直感通り、息子はお腹と胸が痛くて苦しみ、脈拍を測ったら134になってると、やっと言葉にした。

「今は仕事中だから抜けれない、自分で休日当番医を調べてタクシーで行きなさい」

と言って電話を切る。

あ、保険証は家族全員分、私がいつも持ち歩いていた。

私も急いで休日当番医を調べ、その病院に電話をした。

「今から高校生の子供がそちらに行きますが、保険証を持ってないので番号をこの電話で言っていいですか?」

「番号だけではお受けできません。10割り負担になります。どのような症状なんですか?」

えー、10割ぃー…

息子の財布にそんなに入ってないはず…困ったな。

とりあえず私は息子の症状を伝えた。

すると電話の向こうで当番医の看護師が、

「それは肺炎の可能性がありますね。すみませんが、レントゲン技士が今日休みで、レントゲンを撮れないんです。他の病院に行って下さい」

と言う。

ちょっとぉー!休日当番医なんだからレントゲン技士も待機してろよー!

とにかく何も知らずその病院に向かっている息子に急いで電話。

「ちょっと待ってちょっと待って!違う病院じゃなきゃ診てもらえない!」

「違う病院てハァハァ…どこに行けばいいの…ハァハァ…」

どうしよう!どうしたらいいんだ!ええい!

「よしわかった。じゃあとにかくタクシーでここに来なさい。そして車の中で待ってなさい」

なるべく冷静にそう言い聞かせた。


さて、このあとはどうしよう。

私は6時までの勤務(そのあと常にサービス残業で7時まで勤務してるが)。

とりあえずCさんとSくんに相談した。

「僕代わりに残っていいですよ」

Sくんは3時上がりだったが、私の勤務時間まで居てくれると言う。

「えええ!いいんですか?」

Cさんも、

「肺炎だったら大変だよ。急いで病院に連れて行ってあげて。私の息子もインフルのあと、入院したことあるんだよ。心配だから早く診てもらって」

と言ってくれた。

「ありがとうございます」

感謝で涙が出そうだった。

…と、

「あ、でもその前にいちおう施設長に電話をいれてもらえますか?施設長にことわってから行って下さい」

え…

Sくん…

ま、まあそりゃそうよね。

鬼女にひとこと電話入れなきゃね。

でも、嫌な予感がするなあ…


(長くなったので続きはあとで)