港区のマンションで、シンドラー社製エレベーターの死亡事故が発生してから、6月3日で、丸2年になるのだそうです。
以下に関連の新聞記事を掲載しました。
どうも、シンドラー社の立件は難しく、保守管理業者のSECが立件される見通しのようです。
ご遺族としては、おそらくそれでは納得が行かないでしょう。
「原因の説明も、遺族以外の同席を認めないだけでなく直接スイスに来るよう求めるなど、誠実な態度が感じられない」というのがもし本当であるならば、シンドラー社の、企業としての姿勢に疑問を感じざるを得ません。
ただ、保守点検業者が立件される見通しであるという事は、いろいろ考えさせられます。
「海外のギシギシすごい音がするエレベーターに比べれば、日本のエレベーター技術はしっかりしていて、とても安全です」みたいな話をよく聞きますが、こうした話も額面通りには受け取れない雰囲気になりつつあります。
いずれにせよ、人の生命を預かる機械なのですから、業界全体が安全性向上と信用回復を目指して頂きたい。
そして、マンション管理組合という立場で申し上げれば、住民側(=利用者側)も、しっかり業者を監視し、ただ安いからという安易な理由で業者を選んだりするのでなく、安全性や、技術的レベル、危機管理等について、どこまで配慮されているか、住民全体がそれを納得できるか、といった事まで、充分に考えなければならないのだと感じます。
改めて、被害に遭われた方のご冥福をお祈り致します。
エレベーター死亡事故2年、再発防止へ遺族らが署名提出
東京都港区のマンションのエレベーターで都立高校2年、市川大輔さん(当時16)が死亡した事故から丸2年となった3日、大輔さんの母、正子さん(56)らは東京地検を訪れ、事故の再発防止と原因究明を求める署名を提出した。正子さんらは同日午後にも同様の署名を国土交通省と警察庁に提出するという。
正子さんらは昨年、大輔さんの同級生の有志らと「赤とんぼの会」を発足させて署名集めを開始。全国で約13万人分の署名が集まった。正子さんは「署名を通じて励ましの手紙をもらった。署名活動は要求が実現するまで続けたい」などと話す。
事故から2年が過ぎた今も正子さんはエレベーターに乗ることはできない。「恐怖感が今でも消えない。心の整理は全く進んでいない」という。事故原因について警視庁などの捜査が続いているが、正子さんは「原因究明を目指す第三者機関が必要だ」と訴える。
(2008年6月3日 日本経済新聞)
エレベーター高2死亡事故、点検作業員を6月中にも立件
東京都港区のマンションのエレベーターで都立高校2年、市川大輔さん(当時16)が死亡した事故で、警視庁は3日までに、事故機の保守管理業者「エス・イー・シーエレベーター」(台東区)の点検作業員を月内にも業務上過失致死容疑で立件する方針を固めた。エス社の作業員が事前の点検で事故機のブレーキ部分の異常を見落としたことが事故につながったとの見方を強めた。
製造元の「シンドラーエレベータ」(江東区)については、事故機の動きをコンピューター制御する制御盤などに構造上の欠陥はなかったとして、刑事責任は問えないと判断したとみられる。
(2008年6月3日 日本経済新聞)
芝のエレベーター事故死:シンドラー会見「遺族に原因説明したい」/東京
◇被害者側、「態度不誠実」と反発
港区のマンションで06年に起きたエレベーター事故で亡くなった都立小山台高校2年、市川大輔さん(当時16歳)の事故から2年が経過した3日、「シンドラーエレベータ」のスイス本部の代理人が都内で会見し、「事故直後と違い、捜査に支障のない範囲で遺族に事故原因を説明する方針に変わった。今後も遺族との接触を続けたい」と述べた。
代理人の楠元みのり氏によると、同社側は当初、捜査への影響を考慮し、遺族への説明を一切拒んでいた。しかし、遺族に不信感を与えたため、昨年4月から数通の手紙を送付。事故を謝罪した上で、捜査への影響がない範囲で事故原因を説明する準備があることを伝えたという。
楠元氏は「今も遺族の心痛が癒やされていないのは耐え難いこと。依然として会社側の説明を聞いてもらえないが、今後も遺族にアプローチしたい」と話す。
一方、遺族の代理人は手紙があったことを認めた上で「『哀悼の意』という文字はあったが明確な謝罪の文章はない。原因の説明も、遺族以外の同席を認めないだけでなく直接スイスに来るよう求めるなど、誠実な態度が感じられない」と話しており、平行線が続いている。【川上晃弘、古関俊樹】
(毎日新聞 2008年6月4日 都内版)
エレベーター高2死亡事故あす2年 シンドラー立件、焦点
東京都港区のマンションで二〇〇六年六月、都立高校二年市川大輔(ひろすけ)さん=当時(16)=がエレベーターに挟まれて死亡した事故から三日で二年。警視庁捜査一課は直接の事故原因の解明をほぼ終え、業務上過失致死容疑で保守点検業者を立件する方針だが、最大の焦点は製造元のシンドラーエレベータ社(東京都江東区)の刑事責任を問えるかどうか。同課はさらに関係者から事情聴取を重ね、東京地検などと慎重に協議を進めている。
同課の調べで、かごが突然上昇したのは、機械室内のブレーキパッドが摩耗していてブレーキドラムを制止できなかったことが原因と判明。鑑定や再現実験を重ねた結果、同課は、パッドを制御する電磁コイルの損傷により、パッドとドラムが接した状態で運転が続き、徐々にパッドが摩耗したとみている。
同課は、保守点検を担っていた「エス・イー・シーエレベーター」(台東区)が事故の九日前に定期点検した際、パッドの摩耗を見落とさずに部品を交換するなど適正に対応すれば事故を防げたとして、点検作業員らを立件する見通しだ。
一方、シンドラー社は事故機を製造して一九九八年に設置し、〇五年三月までは自社で保守点検もしていた。だが事故当時は、部品交換など事故を防ぐ直接の手だてを講じる立場にはなかった。
ただ、同課などによると、事故機ではシ社が保守点検していた当時から目標階で停止しないなどの不具合や故障がたびたび生じていた。しかし、シ社はトラブルについて十分な情報をエス社に開示していなかったという。
原因解明と安全 両親、国に要請へ
市川大輔さんの三回忌となる三日、父和民さん(54)と母正子さん(56)は東京地検と警察庁、国土交通省に約十二万人分の署名を添えた請願書を提出する。その骨子は速やかに事故原因を徹底解明し、安全なエレベーターに利用者が安心して乗れるようにすることだ。
事故後も、シンドラー社による点検作業資格の不正取得が明らかになったり、別の大手メーカーがずさんな保守点検を続け、六本木ヒルズのエレベーターでは火災が発生した。
両親は業界にはびこる安全軽視の体質を耳にする度に「やっぱり息子は殺されたんだ」との思いを強くしてきた。「このまま何も変わらな「のでは突然奪われた息子の命が浮かばれない」。事故の背景まで含めた徹底的な原因究明と再発防止を強く願っている。
<シンドラーエレベータの事故> 2006年6月3日午後7時20分ごろ、東京都港区芝のマンション「シティハイツ竹芝」の12階で止まったシンドラー社製エレベーターから、市川大輔さんが後ろ向きで自転車を押しながら降りようとした際、扉が開いたままかごが上昇し、かごの床面と乗り場の外枠に体を挟まれて圧死した。事故後、全国のシンドラー社製でトラブルが多発していることが表面化し、国交省は同社製全機の緊急点検を要請した。
(2008年6月2日 朝刊 東京新聞)
以下に関連の新聞記事を掲載しました。
どうも、シンドラー社の立件は難しく、保守管理業者のSECが立件される見通しのようです。
ご遺族としては、おそらくそれでは納得が行かないでしょう。
「原因の説明も、遺族以外の同席を認めないだけでなく直接スイスに来るよう求めるなど、誠実な態度が感じられない」というのがもし本当であるならば、シンドラー社の、企業としての姿勢に疑問を感じざるを得ません。
ただ、保守点検業者が立件される見通しであるという事は、いろいろ考えさせられます。
「海外のギシギシすごい音がするエレベーターに比べれば、日本のエレベーター技術はしっかりしていて、とても安全です」みたいな話をよく聞きますが、こうした話も額面通りには受け取れない雰囲気になりつつあります。
いずれにせよ、人の生命を預かる機械なのですから、業界全体が安全性向上と信用回復を目指して頂きたい。
そして、マンション管理組合という立場で申し上げれば、住民側(=利用者側)も、しっかり業者を監視し、ただ安いからという安易な理由で業者を選んだりするのでなく、安全性や、技術的レベル、危機管理等について、どこまで配慮されているか、住民全体がそれを納得できるか、といった事まで、充分に考えなければならないのだと感じます。
改めて、被害に遭われた方のご冥福をお祈り致します。
エレベーター死亡事故2年、再発防止へ遺族らが署名提出
東京都港区のマンションのエレベーターで都立高校2年、市川大輔さん(当時16)が死亡した事故から丸2年となった3日、大輔さんの母、正子さん(56)らは東京地検を訪れ、事故の再発防止と原因究明を求める署名を提出した。正子さんらは同日午後にも同様の署名を国土交通省と警察庁に提出するという。
正子さんらは昨年、大輔さんの同級生の有志らと「赤とんぼの会」を発足させて署名集めを開始。全国で約13万人分の署名が集まった。正子さんは「署名を通じて励ましの手紙をもらった。署名活動は要求が実現するまで続けたい」などと話す。
事故から2年が過ぎた今も正子さんはエレベーターに乗ることはできない。「恐怖感が今でも消えない。心の整理は全く進んでいない」という。事故原因について警視庁などの捜査が続いているが、正子さんは「原因究明を目指す第三者機関が必要だ」と訴える。
(2008年6月3日 日本経済新聞)
エレベーター高2死亡事故、点検作業員を6月中にも立件
東京都港区のマンションのエレベーターで都立高校2年、市川大輔さん(当時16)が死亡した事故で、警視庁は3日までに、事故機の保守管理業者「エス・イー・シーエレベーター」(台東区)の点検作業員を月内にも業務上過失致死容疑で立件する方針を固めた。エス社の作業員が事前の点検で事故機のブレーキ部分の異常を見落としたことが事故につながったとの見方を強めた。
製造元の「シンドラーエレベータ」(江東区)については、事故機の動きをコンピューター制御する制御盤などに構造上の欠陥はなかったとして、刑事責任は問えないと判断したとみられる。
(2008年6月3日 日本経済新聞)
芝のエレベーター事故死:シンドラー会見「遺族に原因説明したい」/東京
◇被害者側、「態度不誠実」と反発
港区のマンションで06年に起きたエレベーター事故で亡くなった都立小山台高校2年、市川大輔さん(当時16歳)の事故から2年が経過した3日、「シンドラーエレベータ」のスイス本部の代理人が都内で会見し、「事故直後と違い、捜査に支障のない範囲で遺族に事故原因を説明する方針に変わった。今後も遺族との接触を続けたい」と述べた。
代理人の楠元みのり氏によると、同社側は当初、捜査への影響を考慮し、遺族への説明を一切拒んでいた。しかし、遺族に不信感を与えたため、昨年4月から数通の手紙を送付。事故を謝罪した上で、捜査への影響がない範囲で事故原因を説明する準備があることを伝えたという。
楠元氏は「今も遺族の心痛が癒やされていないのは耐え難いこと。依然として会社側の説明を聞いてもらえないが、今後も遺族にアプローチしたい」と話す。
一方、遺族の代理人は手紙があったことを認めた上で「『哀悼の意』という文字はあったが明確な謝罪の文章はない。原因の説明も、遺族以外の同席を認めないだけでなく直接スイスに来るよう求めるなど、誠実な態度が感じられない」と話しており、平行線が続いている。【川上晃弘、古関俊樹】
(毎日新聞 2008年6月4日 都内版)
エレベーター高2死亡事故あす2年 シンドラー立件、焦点
東京都港区のマンションで二〇〇六年六月、都立高校二年市川大輔(ひろすけ)さん=当時(16)=がエレベーターに挟まれて死亡した事故から三日で二年。警視庁捜査一課は直接の事故原因の解明をほぼ終え、業務上過失致死容疑で保守点検業者を立件する方針だが、最大の焦点は製造元のシンドラーエレベータ社(東京都江東区)の刑事責任を問えるかどうか。同課はさらに関係者から事情聴取を重ね、東京地検などと慎重に協議を進めている。
同課の調べで、かごが突然上昇したのは、機械室内のブレーキパッドが摩耗していてブレーキドラムを制止できなかったことが原因と判明。鑑定や再現実験を重ねた結果、同課は、パッドを制御する電磁コイルの損傷により、パッドとドラムが接した状態で運転が続き、徐々にパッドが摩耗したとみている。
同課は、保守点検を担っていた「エス・イー・シーエレベーター」(台東区)が事故の九日前に定期点検した際、パッドの摩耗を見落とさずに部品を交換するなど適正に対応すれば事故を防げたとして、点検作業員らを立件する見通しだ。
一方、シンドラー社は事故機を製造して一九九八年に設置し、〇五年三月までは自社で保守点検もしていた。だが事故当時は、部品交換など事故を防ぐ直接の手だてを講じる立場にはなかった。
ただ、同課などによると、事故機ではシ社が保守点検していた当時から目標階で停止しないなどの不具合や故障がたびたび生じていた。しかし、シ社はトラブルについて十分な情報をエス社に開示していなかったという。
原因解明と安全 両親、国に要請へ
市川大輔さんの三回忌となる三日、父和民さん(54)と母正子さん(56)は東京地検と警察庁、国土交通省に約十二万人分の署名を添えた請願書を提出する。その骨子は速やかに事故原因を徹底解明し、安全なエレベーターに利用者が安心して乗れるようにすることだ。
事故後も、シンドラー社による点検作業資格の不正取得が明らかになったり、別の大手メーカーがずさんな保守点検を続け、六本木ヒルズのエレベーターでは火災が発生した。
両親は業界にはびこる安全軽視の体質を耳にする度に「やっぱり息子は殺されたんだ」との思いを強くしてきた。「このまま何も変わらな「のでは突然奪われた息子の命が浮かばれない」。事故の背景まで含めた徹底的な原因究明と再発防止を強く願っている。
<シンドラーエレベータの事故> 2006年6月3日午後7時20分ごろ、東京都港区芝のマンション「シティハイツ竹芝」の12階で止まったシンドラー社製エレベーターから、市川大輔さんが後ろ向きで自転車を押しながら降りようとした際、扉が開いたままかごが上昇し、かごの床面と乗り場の外枠に体を挟まれて圧死した。事故後、全国のシンドラー社製でトラブルが多発していることが表面化し、国交省は同社製全機の緊急点検を要請した。
(2008年6月2日 朝刊 東京新聞)