オオフトイによる椅子の座面編み

2021-09-11 | 椅子
森林文化アカデミーの久津輪さんからご厚意で分けていただいたオオフトイ
3週間吊って、乾燥を終え待ちに待った座面編みしてみました。

オオフトイのことをヨーロッパではラッシュと呼び、伝統的に使われてきた座面編みの植物です。
ちょうど10年前スペインアンダルシアへ原点の椅子に会うために訪れた時に使われていた素材そのもののようです。
座編み作業をさせてもらった時の素材感が正にこの感じでした。

生の状態で2000gだったものが乾燥し920gになりました。
資料では乾くと5分の1になるということでしたが、約半分という結果でとても歩留りの良い感じです。

 

 

 

 
乾いたオオフトイを地面に広げ、表裏からジョウロで水をかけ、濡らした布でくるみ、更にビニールシートで覆って3時間程置き、ゆっくり水を吸わせて柔らかくします。
この時水につけたままにしておくと繊維がもろくなってしまうそうです。


編み始め 
手順は私が初めて座編みを習った方法とは逆で、座面の中から引き上げ、枠の外側を引き下ろしながら進みます。
外国から来た椅子の編み直しではほとんどこの方向で進みます。
なぜどんな経緯で日本には逆に伝わったのか知りたいところです。

 

 
1本ずつ途中で継ぎ足します。
継ぎ足し方は、真っ直ぐな所では、1回ひねり先を挟み込むだけ、コーナーで足す時は90度で折れ曲がる角に1本挟み込み全体をねじるだけです。
オオフトイは1本が直径5〜13mmと一様ではないので、本数では4〜8本ほどを束ね、ねじった直径5、6mmになるように太さの違うものを選んで足していきます。
オオフトイ1本13mmの直径とはいえ、中身をひねりつぶすと3mmほどに細くなります。
ちょうど良い太さに調整するのが難しい所です。
一度ねじると元に戻ろうとはしない性質なので、ねじったひもを引っ張って編み込むという感じではなく、きれいにねじった部分をそこへ置いていくという印象です。
途中で手を離しても戻らなくてそのままの形でいてくれるので力もあまり必要としません。新感覚です。
逆に強くねじり過ぎると特に先の方の緑色が鮮やかな部分は少し弱いのでちぎれてしまいます。
元の白色と先の緑色がストライプで残るように程よくねじり、伏せていくことが肝心です。
裏や見えなくなる部分はほとんどねじることなく真っ直ぐ引っ張ります。

 

 


編み進み縦横交差したポケット部にクッションと補強のためのあんこを詰め込みます。
ここでは普段使っている七島いの切れ端があったのでそれを詰め込んでいます。
木のヘラで押し込んでぱんぱんに詰め込みました。

  


全体の残りのスペースが一定になるようにその都度太さを調整しながら最後の1本がちょうどぎりぎり納まるように編み進みます。
最後の1本はクサビ状のヘラで押し込みやっと通します。

 

 

 
普段座編みとして使っている七島いとは同じ緑といっても違います。
どちらもいいです。
何より裏から見た感じが、正にスペインで見てきた編みそのものでぞくぞくします。
椅子の座面の裏フェチって聞いたことがないですけど・・・異常?
前世は多分スペインの片田舎で椅子の座面を編んで楽しく暮らしていたおばさん(なぜか)だったような気がする。

座った感じは、良好。まだ編みたてなのでカチカチで固いのですがこれが乾いてくると弾力が出てきて良くなる気がします。
あとは、耐久性ですが、こればかりは使い込んでみないと分かりません。
分けていただいてすぐに種を取ってバケツで沼のような環境をを作り蒔いてみましたがまだ芽が出ません。
一冬越えないと芽が出ないタイプなのでしょうか?
自分で育てたオオフトイで座面を編むことができたらそんな楽しいことはありません。
次の夢としてやりがいがあります。

思った以上に歩留りがよくまだまだオオフトイが余っていたので、
キッズチェアに編み込んでみたら、十分に足りてかわいい椅子が完成できました。
台形の編み順もスペインで見た方法で、途中2本に分けそれぞれ編み、反対側で1本にまとめる方法で中心に編みすぼまる形にしました。
ゴッホの椅子もこの方法で編まれています。

小さい椅子2脚編み終わり残ったオオフトイは22本でした。
オオフトイの必要乾燥重量は
座面の面積平方センチメートル×0.5(g)
2脚合わせて1780平方センチ×0.5=890g(あんこなし、編むだけ必要乾燥重量。元は920g)でした。
七島いの場合の目安は ×0.75(g)なのでオオフトイの方がかなり歩留りは良いです。

 

 



 

 

 



 
大きい座面2脚が七島い編みです。
七島いとの緑色の違いが写真では分かりにくいかもしれませんがかなり違います。
どちらもいいです。
しっかり除湿乾燥します。

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