3学期が始まった。
だけど、なんだか落ち着かない日々だ。
冬休みの間に中学校の制服の採寸をした。
僕らのところは、公民館で何人かでサイズを集まってはかってもらった。
皆、ダボダボのサイズで作るようで(お母さんがあとで、すぐに大きくなるからと言っていた)なんだか恥ずかしいような、うれしいような。
僕とテンちゃんは近くなので一緒に測ってもらった。
お互いに制服を着たときに
「格好いいぜー!」と言って褒めあった。
もう、制服は届いている。
これを見ると本当にもう少しで中学生なんだと思う。
勉強ついていけるかなって。
3学期に入ってもその話ばかりになった。
やっぱり落ち着かない。
そんな中「卒業記念」を作る事になった。
僕らが製作して、学校にプレゼントする。
いろいろ作るものがあり、班を作って受け持ちを決めることになった。
僕らは4人ですぐに集まった。
ボスと坂崎君も入ってきた。
僕らが選んだのは、ベンチ作成なんだが・・・ボスは女の子だけど大丈夫かなと思ったが、よく考えたらピアノをやっている坂崎君の方が心配になった。
ボスならなんとなく力仕事でも大丈夫そうだ。
赤城先生が近づいてきた。
「星野君も入れてやってくれ」と。
坂崎君がさわやかに
「はい、わかりました」と言うとボスがうっとりと見とれた。
ボス・・・頑張っているよな。
どうやら、坂崎君と同じ中学校を受験するためにピアノと勉強を必死で頑張ったらしい。
いい結果が出るといいよね。
引越ししてしまうやまさん以外は皆公立の中学校に行く。
ちょっとボスの怒鳴り声がなくなるのも寂しいような気がするが、近くに住んでいるんだからきっと会えるだろう。
「星野君か・・・」横でみずっちが呟いた。
なんだろう。
星野君はとても大人しい子で、僕は6年生になってはじめて一緒のクラスになった。
あまりしゃべった事はない。
勉強は、どうやらあまり出来ないようだけど、僕だってみずっちだって一緒のような感じだ。
いつも一人でいて、なかなか皆の仲間に入れず、赤城先生が班分けの時は、彼を割り振っている。
この日は、僕ら4人とボスが一緒に帰った。
忙しい坂崎君は学校から直接稽古事に行った。
その時、みずっちが
「僕さ、星野君と一緒のクラスになったんだけど、すごく星野君不器用なんだ。入れても役に立たないよ」と。
「何言っているの!あんただって相当な不器用じゃない!」
バコン!みずっちの頭にボスの鉄拳がはいった。
ボス・・・坂崎君がいる時と全然違うし。
「別にいいと思うよ。道具を持ってきたり、後でペンキを塗ったりしてもらおう」
さすがテンちゃん。
いい事言う!
僕らはそのまま笑ってわかれた。
ところが・・・星野君は僕らの想像をはるかに超えていた事が翌日にわかった。
ベンチ作成は特別講師としてキュンのおじさんが来てくれた。
僕らが先生に頼んだのだ。
他のところもまわって指導をしてくれる。
皆、自分の役割を一生懸命にこなしていた。
ところが、星野君はずっと立ったままだった。
やまさんが、
「星野君、一緒に木材を運ぼう」
と言うとやっと動く。
しかし、持っていたものを落としたりとなんだか散々だった。
皆より小柄で力が弱いせいもあるかもしれない。
皆、それぞれ自分の役目を考えて動いている中、星野君の動きだけがとまっていた。
みずっちがとうとう切れた。
「星野君、さっさと動けよ!」
すると星野君の表情は凍ったようになった。
「ぼ・・・僕はいつも『動くな!』って言われるから」
星野君の目から涙がポロポロとこぼれて落ちた。
少し離れていた坂崎君とボスが急いでやってきた。
「なんで、そんな風に言われるの?」
ボスが優しく聞いた。
「僕、すごく不器用なんだ。だから、僕が一緒にやるといつも完成しないんだ。だから、皆『動くな!』って言うんだ。何もしない方がいいんだ」
星野君は、しゃくりあげながら言った。
僕らは、うーんと唸ってしまった。
やまさんがのんびりと言った。
「それならさ、星野君は僕らの作成のことを書きとめてくれないか?記録って感じで」
「あー!それいいね!」と坂崎君がさわやかにいったので、またボスがうっとりとした。
テンちゃんや僕も大賛成だ。
切れたみずっちだけ少しふくれていたのだけど。
その日から、星野君は僕らがベンチを作る工程をノートに書きとめてくれた。
とても面白い漫画入りで。
みずっちが釘の代わりに自分の指を打ってしまったところなどお腹抱えて皆で笑った。
やがて、ベンチが完成した。
星野君の記録ノートも完成した。
僕らはそれを先生に提出した。
とても、その記録は面白くて先生は一部を印刷をして皆に渡してくれた。
僕らの宝物になった。
他の班も、自分たちもすればよかったという事になり、思い出しながら作っていたけど、星野君の記録がぴか一だった。
完成した日、班の皆で帰った。
この日は、いつも忙しい坂崎君も一緒でもちろん星野君も一緒だ。
少し公園で話をした。
星野君は漫画を描くのが得意らしく、いつも教室で一人でいる時は漫画を描いているそうだ。
僕らは、その漫画を見せてもらう約束をした。
「僕、こうやって誰かと帰るの初めてだ」と星野君が言った。
「星野君は、どこの中学に行くの?」と僕が聞くと
「皆と一緒の公立だよ」と言った。
「じゃあ、中学でも漫画見せてよね」とテンちゃんが言った。
「うん」
「僕らは別の中学だから、見れないな」と坂崎君が言うとボスが大人しくうなづいた。
「中学校が別々だからって、会えないわけじゃない」とみずっち。
「俺には、定期的に送って送ってくれよな」と倉敷に行ってしまうやまさんが言った。
「当たり前だよ。友達だもんな」と僕が言うと星野君がうなづいた。
その目は少し涙ぐんでいた。
「もっと早く、友達になっていたら星野君の漫画読めたのに」と僕が言うと
星野君はうれしそうに笑った。
でも、僕らにはまだまだ時間がある。
遅いって事はないのかもしれない。
その日、こっそりと体操服を洗濯機に入れるとお母さんの悲鳴が聞こえてきた。
「なんなの~~!このペンキ!」
そうそう・・・ベンチ完成したの嬉しくって乾いてないのに座っちゃんだ・・・。
「大事に置いておこうと思ったのに!」とお母さん。
いやいや、そのペンキが思い出なんだよと、僕は心の中で思った。
だけど、なんだか落ち着かない日々だ。
冬休みの間に中学校の制服の採寸をした。
僕らのところは、公民館で何人かでサイズを集まってはかってもらった。
皆、ダボダボのサイズで作るようで(お母さんがあとで、すぐに大きくなるからと言っていた)なんだか恥ずかしいような、うれしいような。
僕とテンちゃんは近くなので一緒に測ってもらった。
お互いに制服を着たときに
「格好いいぜー!」と言って褒めあった。
もう、制服は届いている。
これを見ると本当にもう少しで中学生なんだと思う。
勉強ついていけるかなって。
3学期に入ってもその話ばかりになった。
やっぱり落ち着かない。
そんな中「卒業記念」を作る事になった。
僕らが製作して、学校にプレゼントする。
いろいろ作るものがあり、班を作って受け持ちを決めることになった。
僕らは4人ですぐに集まった。
ボスと坂崎君も入ってきた。
僕らが選んだのは、ベンチ作成なんだが・・・ボスは女の子だけど大丈夫かなと思ったが、よく考えたらピアノをやっている坂崎君の方が心配になった。
ボスならなんとなく力仕事でも大丈夫そうだ。
赤城先生が近づいてきた。
「星野君も入れてやってくれ」と。
坂崎君がさわやかに
「はい、わかりました」と言うとボスがうっとりと見とれた。
ボス・・・頑張っているよな。
どうやら、坂崎君と同じ中学校を受験するためにピアノと勉強を必死で頑張ったらしい。
いい結果が出るといいよね。
引越ししてしまうやまさん以外は皆公立の中学校に行く。
ちょっとボスの怒鳴り声がなくなるのも寂しいような気がするが、近くに住んでいるんだからきっと会えるだろう。
「星野君か・・・」横でみずっちが呟いた。
なんだろう。
星野君はとても大人しい子で、僕は6年生になってはじめて一緒のクラスになった。
あまりしゃべった事はない。
勉強は、どうやらあまり出来ないようだけど、僕だってみずっちだって一緒のような感じだ。
いつも一人でいて、なかなか皆の仲間に入れず、赤城先生が班分けの時は、彼を割り振っている。
この日は、僕ら4人とボスが一緒に帰った。
忙しい坂崎君は学校から直接稽古事に行った。
その時、みずっちが
「僕さ、星野君と一緒のクラスになったんだけど、すごく星野君不器用なんだ。入れても役に立たないよ」と。
「何言っているの!あんただって相当な不器用じゃない!」
バコン!みずっちの頭にボスの鉄拳がはいった。
ボス・・・坂崎君がいる時と全然違うし。
「別にいいと思うよ。道具を持ってきたり、後でペンキを塗ったりしてもらおう」
さすがテンちゃん。
いい事言う!
僕らはそのまま笑ってわかれた。
ところが・・・星野君は僕らの想像をはるかに超えていた事が翌日にわかった。
ベンチ作成は特別講師としてキュンのおじさんが来てくれた。
僕らが先生に頼んだのだ。
他のところもまわって指導をしてくれる。
皆、自分の役割を一生懸命にこなしていた。
ところが、星野君はずっと立ったままだった。
やまさんが、
「星野君、一緒に木材を運ぼう」
と言うとやっと動く。
しかし、持っていたものを落としたりとなんだか散々だった。
皆より小柄で力が弱いせいもあるかもしれない。
皆、それぞれ自分の役目を考えて動いている中、星野君の動きだけがとまっていた。
みずっちがとうとう切れた。
「星野君、さっさと動けよ!」
すると星野君の表情は凍ったようになった。
「ぼ・・・僕はいつも『動くな!』って言われるから」
星野君の目から涙がポロポロとこぼれて落ちた。
少し離れていた坂崎君とボスが急いでやってきた。
「なんで、そんな風に言われるの?」
ボスが優しく聞いた。
「僕、すごく不器用なんだ。だから、僕が一緒にやるといつも完成しないんだ。だから、皆『動くな!』って言うんだ。何もしない方がいいんだ」
星野君は、しゃくりあげながら言った。
僕らは、うーんと唸ってしまった。
やまさんがのんびりと言った。
「それならさ、星野君は僕らの作成のことを書きとめてくれないか?記録って感じで」
「あー!それいいね!」と坂崎君がさわやかにいったので、またボスがうっとりとした。
テンちゃんや僕も大賛成だ。
切れたみずっちだけ少しふくれていたのだけど。
その日から、星野君は僕らがベンチを作る工程をノートに書きとめてくれた。
とても面白い漫画入りで。
みずっちが釘の代わりに自分の指を打ってしまったところなどお腹抱えて皆で笑った。
やがて、ベンチが完成した。
星野君の記録ノートも完成した。
僕らはそれを先生に提出した。
とても、その記録は面白くて先生は一部を印刷をして皆に渡してくれた。
僕らの宝物になった。
他の班も、自分たちもすればよかったという事になり、思い出しながら作っていたけど、星野君の記録がぴか一だった。
完成した日、班の皆で帰った。
この日は、いつも忙しい坂崎君も一緒でもちろん星野君も一緒だ。
少し公園で話をした。
星野君は漫画を描くのが得意らしく、いつも教室で一人でいる時は漫画を描いているそうだ。
僕らは、その漫画を見せてもらう約束をした。
「僕、こうやって誰かと帰るの初めてだ」と星野君が言った。
「星野君は、どこの中学に行くの?」と僕が聞くと
「皆と一緒の公立だよ」と言った。
「じゃあ、中学でも漫画見せてよね」とテンちゃんが言った。
「うん」
「僕らは別の中学だから、見れないな」と坂崎君が言うとボスが大人しくうなづいた。
「中学校が別々だからって、会えないわけじゃない」とみずっち。
「俺には、定期的に送って送ってくれよな」と倉敷に行ってしまうやまさんが言った。
「当たり前だよ。友達だもんな」と僕が言うと星野君がうなづいた。
その目は少し涙ぐんでいた。
「もっと早く、友達になっていたら星野君の漫画読めたのに」と僕が言うと
星野君はうれしそうに笑った。
でも、僕らにはまだまだ時間がある。
遅いって事はないのかもしれない。
その日、こっそりと体操服を洗濯機に入れるとお母さんの悲鳴が聞こえてきた。
「なんなの~~!このペンキ!」
そうそう・・・ベンチ完成したの嬉しくって乾いてないのに座っちゃんだ・・・。
「大事に置いておこうと思ったのに!」とお母さん。
いやいや、そのペンキが思い出なんだよと、僕は心の中で思った。