お城でグルメ!

ドイツの古城ホテルでグルメな食事を。

シュヴァルツェンシュタイン城

2021年05月16日 | 旅行

ほとんど全行程で南から北に向かって流れるライン河が、マインツとビンゲンの間約35kmをほぼ東西に流れる。この区間は両岸の後背地が丘陵で北側の斜面は南からの太陽光線が真正面から当たるため、ラインの流域で最も高品質といわれるワインの産地となっていて、ラインガウ地方と呼ばれる。特に、リュウデスハイムという町はよく知られていて、ライン下りの観光船は必ず寄港をする。ワイン・バーが軒を連ねる石畳の路地が入り組んだダウンタウンは、少々観光ずれしている感があるが、それなりに楽しめる。

 

リュウデスハイムの東隣にガイゼンハイムという、やはり良質のワインで有名な町があるが、この町の中心部を丘の頂上に広がるライン・タウヌス自然公園に向かって抜けていくと、ブドウ畑に囲まれたシュヴァルツェンシュタイン城、すなわち黒石城に着く。

 

 

敷地への入り口付近からレストランを見る

 

城といっても本来の城郭は殆どなく、今は、廃墟の一部を修理して建て増しした建物と別のレストランから成るホテルになっている。お城には広くはないが地中海地方を思わせる公園が付属していて、所々に、文化財保護の対象になっている200年の古さを誇る城壁が残る。敷地が広くなく城郭もないので城塞ホテルとしての雰囲気は不十分であるが、緩やかに下降する広大なブドウ畑とその向うをゆっくりと流れるライン河を見下ろすテラスからの景色は、またとない味わいである。

 

 

シュヴァルツェンシュタイン城 と 葡萄畑 1 & 2

 

以前南ドイツのホテルで、城の塔を改装した部屋に泊まったことがあって、上り階段のきつさ以外は大変満足したので、このラインガウのホテルでも “城塔ルーム“ を予約していた。しかし、このホテルのそれは全く構造が違った。何しろ、背の低い直径の小さい円柱形の塔があるだけで、中に部屋を造るスペースはない。どうなっているかというと、塔の外壁が部屋の壁の一部になるように建て増ししているのである。広くはないが、部屋の中に2、3段の階段が2箇所にあるモダンな造りの部屋は立体的なイメージを醸し出しているし、黒っぽい石造りの塔の外壁は良いアクセントになっている。モダンな黒檀の家具は暖かいクリーム色の部屋に上品に調和している。浴室もクリーム色の大理石で、ガラス張りのシャワーがあり、黒っぽい木材の浴室家具とクローム製の付属品がいい感じで、何よりも使い勝手が良い。

 

 

私たちの部屋 1 & 2

 

レストランはラインの谷に面した側が前面ガラス張りで、緩やかな谷を見下ろす景色がすばらしい。当地では “デザインレストラン“ と表現するモダンなエレガントな雰囲気で、古典的フランス料理を現代風にアレンジして出す、そうだ。“そうだ“ というのは、どこがどうアレンジされているのか、私にはよく分からないからだ。古典的フランス料理が、クリームやバターを沢山使った重い料理であることは想像できるのだが、、、、、。

 

とりあえず、コースメニューはサケマスの燻製にパイナップルの薄切りがのったのを西洋ワサビで食べさせる料理で始まった。次が、ホタテを軽くあぶってグリーンアスパラ添え。これをオランデース・ソースで食べさせる。続いて、赤バーブ (鯉の種類) にパプリカと煮込みニンジン添え。そして、鴨の胸肉にチコリとアンズダケの組み合わせ。5品目は、ノロジカにキャベツの付け合せとレバーに詰め物をして焼いた料理だ。最後にイチゴを使ったデザートがあり、それなりにすべて美味しかったのだが、特に驚いた、もしくは感激したコース調理ではなかった。

ワインは、“ワイン旅行“ と名づけられた、一種のお遊びをしたのだが、これには少し驚いた。ソムリエが、コースの6品それぞれに、その料理に合ったワインをグラス1杯ずつ出してくれるのである。有名なラインワインの産地ではあるが、それにこだわってはいないらしく本当に料理を引き立てる他国のワインも飲ませてくれた。しかしながら、妻も私もアルコールはそれ程強くない。無理をしてやっと飲み干せたのは2杯目までだっただろうか。後は、ほんの少し舐めるだけで片付けてもらわざるを得なかった。残念である。

2日目はもちろん “ワイン旅行“ には出かけなかった。また、意外だったし残念だったのは、ここのコースメニューは3週間変わらないし、それがひとつしかないことだった。ミシュラン1つ星を標榜するレストランとしては、あるまじき事ではないか。シェフが我々のために前夜と違うコースメニューを作ってくれたけれども、食材がほとんど同じなので大きな差はないと感じた。

ここのレストランで特筆すべきは、2007年から毎年2月に開かれる „国際グルメ週間“ であろう。月曜日から土曜日まで、ドイツ国内や近隣国から6人の著名な、大抵はミシュランの星を持つシェフが毎日1人ずつ来て、この城のキッチンで腕を振るうのである。そしてハイライトは、日曜日の正装晩餐会。それは、別の7人のシェフが一堂に会して調理をするのであるが、2008年の例で言うと、それぞれのシェフが持つミシュランの星は合計10個とのことだった。この晩餐会では、シェフ達がそれぞれ1品ずつ作って7品のコース料理を出すという趣向であった。

 

ところで、私はこのような „お祭り“ は好まない。社交を好む人なら良いが、妻や私のような美味しい料理を食べたいだけの人間は、静かにゆっくり食事に集中したい。

一度だけ、ハノーファーで開かれた同様の催し物に参加したことがある。自宅から近いレストランで、ミシュラン1つ星のシェフが „コショウとワインの相性“ というテーマで味覚に及ぼす相互作用を楽しむ催しである。

19時からというので時間どうりに行くと、まだ殆ど誰も来ていない。シャンペンを振舞われて、展示してある各種のコショウと各地のワインを見る。30分程してゲストが少し集まったら、一口で食べられる付出をスープ用スプーンにのせてウェイトレスが客の間をサーヴィスして廻る。5種類ほどの付出が出たと思う。いつの間にかシェフがやって来ていて、何人かのゲストと談笑している。

「あれあれっ、シェフは今、額に汗してディナーの最後の仕上げをする時間ではないのかな?」

こうしてまた30分程過ぎた頃、大きな長テーブルに案内されて、自分の名札のあるところに着席する。まず主催者の挨拶があり、食事が始まるわけだが、全員に最初の料理が行き渡るのに少し時間がかかる。そして、シェフがその料理と使ったコショウについて説明を加え、ソムリエがそのコショウにあうワインについて付言する。これが5回くらい繰り返されるのだが、シェフが調理場に居る時間が非常に少ない。多分料理はすでに作り置きしてあって、暖めるだけになっているのだろう。ゲストの人数が多いので、サーヴィスに時間がかかる上、話が多くて料理が冷めてしまうし、自分のペースで食べられない。その後、調理場を見学させてもらって、別室のバーでコーヒーを飲んで、シェフに挨拶して帰ったが、何だか満足感が希薄だった。

やはり食事はひとりで又は妻と二人で、食べたい料理を注文して、我々だけのために作ってくれた料理を熱々で食し、偏見と独断で個人的評価をするのが良い。

 

〔2008年10月〕〔2021年5月 加筆・修正〕

 

 

 

 

 

 

 


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