牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

1月29日(水) 「ロスジェネの逆襲」 池井戸潤著  ダイヤモンド社

2014-01-29 06:41:47 | 日記

 本書は「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」に続く「半沢直樹」シリーズ第3弾である。テレビドラマ「半沢直樹」もDVDで観たが、とてもスカッとして面白かった。

 「ロスジェネ」はロストジェネレーション(失われた世代)の略である。バブル崩壊後の不景気の10年間、1994年から2004年の就職氷河期に世の中に出た若者たちのことを指す。本書は物語の設定が2004年なので、その時点では22歳~32歳を指している。現在2014年でいえば、32歳~42歳だろう。自分もこの世代である。一方バブル世代は好景気によって大量採用された世代である。

 半沢直樹シリーズ1,2弾は半沢たちバブル世代の視点でその上の世代(団塊世代)との確執が描かれていたが、この3弾ではそれに加えてロスジェネが加わり、ロスジェネの視点で描かれている。ロスジェネの世代が本書を読むとより心に響いてくるだろう。

  2弾のラストで半沢は出向を命じられた。3弾で半沢は、銀行の系列子会社の証券会社で働いている。そこでIT会社の買収や粉飾の話などが出てくる。これはライブドア事件がモデルになっているらしい。

 あいかわらず著者は銀行の実体を厳しく書き、銀行の腐敗を暴いている。主人公にこのように言わせている。「組織に屈した人間に、決して組織は変えられない。」正しいことを正しいと言え、間違っていることを間違っていると言えること。これが組織にいるとできなくなってしまう。自分たちの利益だけを守ろうとするようになってしまう。そのような会社(組織)で半沢は今回も戦う。ただ今回はロスジェネの部下と一緒に戦う。半沢のような人間がいればいるほど会社と社会は良くなるだろう。ただ実際はどうだろうか。このようにすると会社組織をクビにされ追い出されるのだろう。家族を養わなければならないから不正と戦うのが難しい。それが現実であろうと思う。だからこそこのような正義が勝つ物語が好まれ、昨年日本でヒットしたのだろう。

 でも願わくは、勇気を持って戦う人たちが起こされ、社会が良くなりますように。