牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

10月27日(土) 「100年予測」 ジョージ・フリードマン著  早川書房

2012-10-27 08:52:15 | 日記
 
 100年予測の副題は、「世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図」。
 著者のジョージ・フリードマンは、地政学を用いて21世紀の100年を予測している。国家の性格や国家間の関係が「地理」に大きく左右される、としている。

 著者の大まかな予測はまとめると次の通りである。

 ①アメリカの時代の幕開け
   本からの引用。「アメリカの支配はまだ始まったばかりであり、21世紀はアメリカの世紀になる
  「国際システムの中心は、過去500年の間、ヨーロッパにあった。ヨーロッパの帝国が、人類史上初めて地球規模の体制を作り上げた。そのヨーロッパへの主な交通路が、北大西洋だった。北大西洋を制する国が、ヨーロッパへの航路を、そしてヨーロッパから世界に向かう航路を制した。国際政治が根ざしていた地理は不変だった。1980年代初めに、注目に値することが起きた。史上初めて、太平洋貿易額が大西洋貿易額に並んだのだ。第二次世界大戦後にヨーロッパが二級の大国の寄せ集めに成り下がり、また貿易パターンが変化したために、北大西洋が何かのカギを握るということはなくなった。今や北大西洋と太平洋の二つの大洋を制する国こそが、望みとあらば世界貿易体制と、ひいては世界経済を制するようになった。二一世紀にはこの二つの大洋に面する国が、計り知れない強みを持つのである。」

 「アメリカとソ連の対立、いわゆる冷戦は、本当の意味での地球規模の紛争だった。端的に言えば冷戦は、荒廃したヨーロッパ帝国の継承者を決める戦いだった。米ソのどちらもが強大な軍事力を有していたが、アメリカには本質的な強みがあった。ソ連は巨大ではあるが事実上の内陸国だったのに対し、アメリカはほぼ同等の規模を持ちながら、世界中の海洋に容易に出ることができた。ソ連は相手を封じ込めることはできなかったが、アメリカには当然それができた。」
 
 「数千キロ離れた海域を管理するには、膨大なコストがかかる。、、、、、大西洋あるいは太平洋を、どちらの海にも面していない国から支配することは、いかなる国の経済力をもってしても不可能なのだ。大西洋と太平洋に同時に権力を誇示できる大陸横断国家の拠点たり得る大陸は、北米をおいて他にない。だからこそ、北米が国際システムの重心だというのだ。北米の時代が幕を開けた今、アメリカは北米の中ですば抜けて有力な強国である。、、、、、本書では、北米が今後数百年にわたって世界システムの重心を占め、その北米が今後少なくとも100年間はアメリカの支配を受けると予測する。」

 大航海時代からはじまった過去500年間はヨーロッパ時代(スペインやイギリス)だったが、北米大陸が世界の重心の座をヨーロッパから奪い、北米大陸を支配する国が世界を制する、という訳だ。今後100年間はアメリカが北米を支配し、世界を支配するだろうとのことだ。


 ②2020年頃  2020年という文脈では、中国とロシアが最重要となるが、しかし両国とも力を失う。
 ・イスラムとの戦いは終わる。イスラム世界は世界の大きな流れでは小さいものだ。
 ・大方の予想に反して、中国が世界を支配する国とはならない。理由は、中国が物理的に著しく孤立していること、過去何世紀も前から海軍国でないこと、本質的に国が不安定であることを挙げている。
 ・再びアメリカとロシアの冷戦が起こるが、今度の冷戦は前回と比べれば小規模であり、前回同様ロシアの自壊で幕を閉じるであろうとしている。


 ③2030ー2040年頃 3つの国が力をつける。すなわち日本、トルコ、ポーランド。
 本からの引用。「2010年代の中国の分裂と、2020年代のロシア崩壊は、太平洋沿岸からカルパチア山脈にまでおよぶ、広大な真空地帯を生み出す。この真空地帯を取り囲むようにして、弱小国がかじり取り、かぶりつき、口いっぱい頬張ることのできる、さまざまな機会が生じる、、、、、、、しかし思い切った措置を講じる能力と必要性を併せ持つ国は、三国しかない。日本はロシア沿岸部や中国の一部にまで勢力を拡大する。トルコはコーカサスのみならず、北西と南方の全域に向かって勢力を拡大する。そしてポーランドは東欧諸国同盟の盟主として、ベラルーシとウクライナの奥深くまで東進するだろう。」


 ④21世紀半ば  第三次世界大戦。 日本とトルコの連合軍 VS アメリカ
 本からの引用。「わたしの考えを方向づけている、基本的な地政学的原則がある。第二次世界大戦では二つの新興国、ドイツと日本が世界秩序を塗り替えようとした。二一世紀半ばにも、この終わりなき地政学的周期が繰り返されるだろう。」 違いは日本がドイツではなく、トルコと連合を組むことであるとしている。
 本からの引用。「二〇世紀半ばの第二次世界大戦は、5000万人を超える犠牲者を出した。その100年後に起こった最初の宇宙戦争で失われた人命は、5万人ほどだった。そのほとんどが、トルコ・ドイツを相手にヨーロッパで戦われた地上戦や、中国における戦闘での犠牲者である。」  宇宙偵察システムによる情報収集など宇宙を制する者が地上を制するとしている。

 ⑤2060年ー2070年頃  アメリカの黄金時代
  ・戦争被害の最も小さかったアメリカが、第二次世界大戦同様またしても戦争の恩恵を最も大きく受ける。
  ・2060年代、宇宙の商業利用を進めるアメリカは、黄金時代を迎える。
  本からの引用。「大西洋と太平洋を制する者が、世界貿易を制する。そして宇宙を制する者が、世界の海洋を制するのだ。

 ⑥2080年代ー2090年代  メキシコの台頭。
  ・2080年代のアメリカは、過剰な移民という新たな問題を抱え込む。とくにメキシコ系移住民の問題がクローズアップされる。
  ・経済大国の一つに浮上しているメキシコは、アメリカの覇権に挑戦することになるだろう。



  著者は歴史を振り返りながら地政学的に今後を予測しているので、なるほどと思わせるところがある。私としては21世紀に日本がまたアメリカと戦争することは何としても避けてもらいたい。私は聖書の黙示録の預言を参考にしながら、また現状を見据えて勝手に将来を予測(予想)すると、全体的な流れとしては、北米の時代になるのではなく、もう一度ヨーロッパが力を取り戻しヨーロッパの時代が再来するのではないかと考えている。著者が言うようにアメリカは大国としての地位を維持し続けるのであろう。だが私はアメリカこそ力を失う可能性があるように感じている。中国とロシアも波があるのかもしれないが、力を失うことはないと思う。むしろ力を着実につけてくるのではないだろうか。逆に日本は力を失っていくと思う。著者の中国と日本への評価が逆だったので以外だった。いずれにしても私は、中国とロシアに対するバランスとしてアメリカか西ヨーロッパが力を持っておいて欲しいと願っている。トルコとポーランド、そしてメキシコの台頭に関しては素人の私には全く分からないが、著者の予測は興味深い。このような本を読むと国際政治の動向に関心が出てくる。