牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

10月23日(火) 「リベラルな秩序か帝国か アメリカと世界政治の行方」  ジョン・アイケンベリー著 

2012-10-23 16:00:27 | 日記
 ジョン・アイケンベリー教授は、現代アメリカを代表する国際政治学者で、オバマ政権への最も影響力ある外交政策アドバイザーとして名前があがることもあるそうだ。 

 多国間主義(秩序)か一国主義(帝国)のどちらがアメリカの進むべき道かが検証されている本だと思う。著者は多国間主義こそがアメリカ政治の進むべき道であることを歴史を振り返りながら書いている。国際政治においてのパートナーシップの大切さが論じられている本である。 

 本からの引用。「アメリカは移民を受け入れる積極性や能力を持っているために、頭脳流出の受け手側となり、すでに知識やサービス産業の面で優位性を享受しているのである。このような優位性は今後も高まってゆくばかりではなく、アメリカを世界経済の活力の中心に据えるであろう。19世紀の多民族で多人種の帝国は、最後には破綻して20世紀に分裂していった。それに対してアメリカは、市民的な国家という基礎の上につくられ、多文化・多民族の政治秩序の持つ新たなかたちを開拓してきた。このような政治秩序は安定したものであり、グルーバルな近代化の要求にしだいに役だってゆくものと思われる。」

 「アメリカは、1940年代以降、世界秩序を構築するためにパワーを活用してきた。同盟や多国間制度など複雑に絡み合った対外関係を持つ全体的なシステムが出現し、アメリカの単極構造を独特な政治構造として論じることができるほどになっている。」  「1940年代につくりだされた世界秩序はいまだ存在し続けている。」
 
 「第二次大戦後のアメリカとソ連の大きな違いのひとつは、ソ連が事実上は威圧的な単独行動主義の国家であったということである。ソ連は領土を得るという狭量な国益や、東ヨーロッパに対する直接的な政治的支配を追求した。一方でアメリカは「環境整備戦略」とでも言えるものを追求したが、すなわちそれは民主主義の確立と制度の構築を支援しつつ、自身のパワーをほかの民主主義国と結び付けるものであった。その結果、アメリカのパワーには正統性が与えられ、冷戦期にはソ連に対する大きな強みとなった。たしかに、ラテンアメリカや中東で顕著に見られたように、かつてアメリカは露骨な帝国主義的政策を推進していた。しかしそうした政策は外交政策を導く論理というよりは、一般的にはむしろ例外であった。」

 「冷戦終結の真の教訓とは、西側が一つにまとまっていたからこそ勝利したというものである。アメリカは、歴史上例のない繁栄と、同盟諸国の支援を生み出した多国間主義の経済的および安全保障秩序を構築するうえで、先頭に立っていた。アメリカは自らを西側諸国に結びつけたうえで自国を開放し、それによって政治的強調と地政学的なパワーの偉大な原動力をつくりだしたのである。」



 アメリカはヨーロッパや日本と同盟を結び、多国間主義と民主主義の世界秩序(協力関係、パートナーシップ)を構築してきたと論じている。一国主義ではなくこれからも多国間主義の世界秩序によってアメリカは進むべきであると著者は主張している。アメリカがどのように政治を行うかは世界と日本に大きな影響を与える。世界においてアメリカの存在は大きい。ロシアや中国の存在はやはり脅威だと思う。でもアメリカの存在が彼らに抑止力となっているのは事実だろう。アメリカ大統領の決断は世界政治の行方に多大な影響を与える。アメリカ大統領選挙が近づいているが、オバマ大統領とロムニー候補のどちらが選ばれるのだろうか?