ちょっと前に井伏鱒二さんの「さざなみ軍記」のことを述べました。今月初めに熊本の古本屋さんで買った本です。タイトルを見て、作者を見て、中をちょっと読んで買い求めました。私の本の購入はほとんどこんな感じです。いま現在は‘歴史小説’に凝っているので、(軍記)となると、つい手が出ているのです。井伏鱒二さんはむろん知っている作家のひとりです。ただし、井伏さんの作品はあんまり読んだことはないと思います。
この作品は始めの部分(自序)でもあとがき(跋)でも井伏さん自らこの作品について語っておられます。時代は平家がまさしく滅ぼうとするとき、いちおう架空の物語のようですが主人公は平敦盛・・敦盛が都落ちしていく様子を陣中日記風に書かれていました。日記風なので会話「」がとても少ない小説です。昭和3年に書き始め、跡切れに雑誌に発表、書きあがったのは13年3月、10年もわざとかけて書かれたのだそうです。それほど秀作という作品ではないのでしょうが、私には真新しい小説のように受け止めながら読むことができました。80年も前に書かれたものが新しく感じられるというのは不思議なことです。
挿絵も写真のようにていねいに書かれたものが挿入されていていいな!と思いました。ひょいと巡りあった「さざなみ軍記」、天国に行かれた井伏鱒二さんに感謝でした。
今日も真夏前を感じさせる陽気でした。
今日の天気(&)