かやのなか

あれやこれやと考える

スーパーナチュラルから学ぶアメリカ合衆国

2020-10-04 23:17:02 | 海外ドラマ
優れた物語は25字以内で概要を表現することが可能だと言いますが、スーパーナチュラルを25字以内で表すと「イケメン兄弟がアメリカ大陸を悪霊退治して回る話」になるので身も蓋もありません。

ストーリーは、幼少期に母親を悪魔に殺されたウィンチェスター兄弟が、復讐を誓った父に連れられ幼い頃より悪霊退治ハンターとして各地を放浪するものです。シーズン1は、同じく悪霊退治ハンターである彼らの父親が仕事中に失踪してしまったところから始まります。父親を探す彼らが行く先々で出会った悪霊や怪物を退治する一話完結物として、肩の力を抜いて水戸黄門のような安心感で観られる点が、ご長寿ドラマに成長した原因ではないでしょうか。。
水戸黄門といってもシーズンを重ねていくうちに、一話完結の裏で地球そして人類の存亡をかけた壮大なドラマが13回程度繰り返されていきます。毎シーズンのラストは適度にクライマックスが設けられています。例えば兄が、弟の命と人類の命運を天秤にかけて弟を選ぶとか、あるいは弟が兄の命と人類の命を天秤にかけて人類を選ぶとか、兄が弟の命と人類の命運を天秤にかけて弟を選ぶとか、あるいは弟が兄の命と人類の命を天秤にかけて人類を選ぶとか、(以下くりかえし)一応、毎度のシリーズ終盤は手に汗握る演出で飽きさせない工夫が凝らされているのですが、シーズン12になるころには流石にスタッフももう良いんじゃねと思ったのか、シーズン12からは、シーズンの最初で死んだ兄弟の母親を復活させたり、人間側の悪の組織(UK版賢者の会)を出してきたりと、少し趣向を変えてきています。残念ながら現在放映中のシーズン15でファイナルとなるということなので、シーズン12の時点で睡眠導入剤代わりに毎日15分しか観られない体になってしまった私ですが、ここまで来たら最後まで付き合いたいと思います。

さてそんな深夜のコンビニスナックのようなお手軽海外ドラマ・スーパーナチュラルですが、お手軽で安心というだけでなく、ところどころに意外な発見もあって楽しいです。たとえばシーズン1放映当時の2005年はスマホなど存在せず、パカパカ式の携帯電話を通話に使い、もっぱら机上に地図を広げてマーカーで線をひきながら悪霊退治を行っていた兄弟ですが、そのうち携帯にGPS機能が付いて位置を割り出したり、SNSでメッセージをやりとりするようになり、着信音で遊んだり、悪魔とスマホで自撮りするようになったりと、テクノロジーを自然に台本と演出に取り入れているところはうまいです。
あと、一番おもしろいのはドラマから明らかになるアメリカの価値観です。
スーパーナチュラルに登場する登場する魔物の大半はいわゆる「悪魔」「悪霊」「吸血鬼」「魔物」などで、これらは日本人でも直感的に「退治すべきもの」だなと感じられるので特に展開に違和感をおぼえることはないのですが、ときどき「神話の神」とか「妖精」「土着の神」とかも出てきて、ときに悪意を持って、ときに悪意を持たず、人間に悪さをします。こういう存在って、日本人的にはぶっ殺すべき対象ではなく、訳知り顔の地元の老婆とかが登場して「この土地に住むなら彼らとうまく共存しなければならない」とか「彼らの領分を荒らしてはならぬのじゃ」とかいって諭しにくるのが定番だと思うのですが、ウィンチェスター兄弟の場合、土着の神だろうが妖精だろうが悪意があろうがなかろうが、ためらいなくナイフや杭をぶっ刺してぶっ殺します。不問に処すなんてことはほとんどありません。人間の生活を脅かすやつはぶっ殺す。そこに区別はないのです。ストーリー的にもその後日本人の恐れる「タタリ」とか「バランスが崩れる」とかいった負の反動はほぼ起こらず、「呪い」が発生して兄弟が呪われることはありますが、なんやかんやで兄弟以外の誰かが犠牲になったりするくらいで事なきを得ます。

そう、もう一つ特筆すべきは、この兄弟は周りをどれだけ犠牲にしてでも家族だけは守る、家族だけは信じるという信条で生きている点です。そら片方が死んじゃうとシリーズが終わってしまいますからね。いや実際は何度も何度も死んで地獄に落ちたり、煉獄という地獄から更に下層のこの世の果てみたいな世界に落ちたりしているのですが、しぶとく何度も生還します。一応製作者側もやりすぎだと思うのか、シーズン12にもなると、兄弟の家族ファーストの態度は作中で批判されるシーンも増えてきました。ちなみに自己犠牲精神は兄弟ともにあります。しかし、だいたい
サム(弟)「人類を守るためには僕が犠牲になるしかないんだ・・・仕方ないんだよディーン(兄)」
ディーン「なぜお前が犠牲にならなければならないんだ!人類のためとはいえ・・・そんなの間違ってる!諦めるな、俺が別の解決策をみつける!」
となるが解決策が見つからず、サムが犠牲になろうとするギリギリでディーンが止めて、人類もしくは近くにいた誰かが犠牲になるのがお決まりのパターンなのです。これが、サムとディーンをひっくり返したパターンだと、意外にサムは人類を優先して、ディーンが地獄に落ちたり煉獄に落ちたりするわけですが・・・サムの方がドライですな。
ここで思い出すのは一昨年の大ヒットアニメ映画「天気の子」。天気の子では、主人公が好きな女の子を救うために、東京を水びたしにする運命を選びます。これは知り合いの某若きブロガーなんかには自分勝手だと大不評だったわけですが、スーパーナチュラルの世界観に比べたら甘っちょろいもんです。天気の子と違い、この兄弟の家族愛のために何千人何万人が犠牲になっている光景は作中で描かれているわけです。それでもなお家族ファーストを主人公に掲げさせ続けるドラマは、意思の力で建国されたアメリカのような国からでなければ生まれないんじゃないかと思いました。まぁアメリカ人がサムライ映画をみて「日本人は皆もしものときはハラキリするつもりで毎日を生きているんだ」と納得してしまうのに近い誤解かもしれませんが。
そういえばシーズンいくつかで世界各国の神(インドのシヴァ神とか)が一堂に会して人類皆殺し計画を立てていたのを、別の悪玉が皆殺しにする展開がありましたが、この世界における神は、いわゆるGODの神をピラミッドの頂点にしたトップダウン式で、GODの神以外は雑魚扱いです。
もはやGODの神すらいつか討伐しそうな気配のあるウィンチェスター兄弟ですが、コロナ禍で予定していたアメリカ留学が延期になってしまったような皆さん、ぜひ、スーパーナチュラルでアメリカの価値観を学んではいかがでしょうか。
ちなみに兄弟があまりにもホモくさいので腐女子のみなさんにもおすすめです。

すみません

2020-10-04 02:27:40 | 日々のこと
昼頃に起きて、近所のフレンチにランチを食いに。なんて怠惰で贅沢な生活か。魚のセットと肉のセットが選べる。パンがとりあえずうまかった。量もこういう店には珍しくボリューミー。デザートまでいただく。そして帰ってきて寝てしまった。なんだか生きていてすみませんという気持ちになった。