人生ブンダバー

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細谷雄一『歴史認識とは何か』

2020-02-25 05:00:00 | 近現代史

慶應法学部教授細谷(ほそや)雄一先生が、戦後70年の平成27(2015)
年に一気に書き上げた「日露戦争からアジア太平洋戦争まで」を扱
ったもので、世界史的視野に立った「歴史エッセイ」と言っていい
のではないかしらん。

★×5に値するすばらしい本だ。論文のように、センテンスごとに参
照文献が巻末に整理されていることもすばらしい(今日の標準形式
かな?)



次はいずれも本書からの引用だ。「歴史認識」とはすなわち「現状
認識」であると言えるのかもしれない。


〇歴史家がありとあらゆる史料を読むことができないとすれば、歴
 史家は史料を取捨選択して用いざるを得なくなり、そこに一定の
 偏りや、解釈の違い、見解の対立が生じる余地が生まれる。


〇「戦争は、人類と同じぐらい古いものであるが、平和は近代の発
 明である」。これは、十九世紀半ばにイギリスの法学者サー・ヘ
 ンリー・メインが述べた言葉である。


〇多くの日本人は、パリ不戦条約の意義を、必ずしも世界史的な視
 座から理解していたわけではなかった。それゆえに、この満州事
 変が国際秩序全体に与える破滅的な影響を理解できなかった。


〇近衛は幣原に向かって、「いよいよ仏印の南部に兵を送ることに
 しました」と淡々と告げた。それに対して幣原が、「船はもう出
 帆したんですか」と尋ねると、近衛は「ええ、一昨日出帆しまし
 た」と答えた。
 幣原は事の重大さに気づき、次のように忠告した。「台湾かどこ
 かに引戻して、そこで待機させるということは、出来ませんか」。
 この言葉に驚いた近衛は、「すでに御前会議で論議を尽くして決
 定したのですから、今さらその決定を翻すことは、私の力ではで
 きません」という。
 それを聞いて、幣原は深刻な面持ちで次のように警告した。「そ
 うですか。それならば私は断言します。これは大きな戦争になり
 ます」。これには、近衛も驚いた。


●本書では、通常の学校教育で「世界史」と「日本史」に分裂して
 いる歴史観を、現代史として一つに統合した上で、二十世紀前半
 に国際社会の中で日本が辿った道を描写してきた。



「井の中の蛙大海を知らず」というが、世界情勢の中に日本がある
ことを忘れてはならない?



細谷雄一『歴史認識とは何か』(新潮選書)★★★★★


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