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J.S.バッハ「ミサ曲ロ短調」 慶應/志木高ワグネル 壺井一歩ピアノ曲集

2011-05-02 05:00:00 | 音楽

今週は(当たり前だが)先週の続きである。22日(金)、23日(土)に続き、24日
(日)は音楽会三連荘(サンレンチャン)となった。三連荘はさすがに初めてでは
ないかしらん。実はさらに中一日おいて26日(火)も演奏会となった。たまたま
このようなスケジュールとなったが、キツイ!ことこの上ない。

バッハ「ミサ曲ロ短調」
4月24日(日) テアトロ・ジーリオ・ショウワで合唱団<アニモKAWASAKI>の
第12回演奏会が開催された。曲目はJ.S.バッハ「ミサ曲ロ短調」。このような合
唱の大曲は半年以上にわたって練習する。東日本大震災前から予定されていた
ものだが、プログラムには「この演奏を大震災で被災された方々に捧げます」と
あった。お客さんの入りは上々だ。

<プログラム>
J.S.バッハ ミサ曲ロ短調
指揮・音楽監督;堀俊輔
ソプラノ;佐竹由美
メゾ・ソプラノ;加納悦子
テノール;吉田浩之
バリトン;河野克典
オルガン;藤井美紀
合唱;合唱団「アニモKAWASAKI」
管弦楽;東京交響楽団
コンサートマスター;高木和弘
フルート;相澤政宏
オーボエ・ダモーレ;荒絵里子
ホルン;ジョナサン・ハミル
公演アドバイザー;礒山雅

合唱団アニモKAWASAKIは平成10(1998)年に川崎市合唱連盟加盟団体の
精鋭たちとオーディションに合格したメンバーにより結成されている。平成17
(2005)年から東京交響楽団指揮者堀俊輔さんを音楽監督に迎え、東京交響
楽団と共に毎年演奏会を開催している。なお、アニモとはスペイン語で「頑張れ」
という意味だそうだ。アニモ日本!

1時27分、ステージに合唱団が入ってきた。ほとんどの人は楽譜を持っていな
い!東響コーラスがカルミナ・ブラーナを暗譜で演奏したのにも驚いたが、この大
曲を(ほとんどの人が)暗譜とは!女性は約100人、男性が約30人の構成だ。
弦楽は少人数編成である。

バッハの「ミサ曲ロ短調」は、2月にもブリュッヘン/新日本フィルで聴いたばかり
なので印象深い。ソロ、重唱があるのはむろんのこと、合唱は4部、5部~8部と
さまざまなものが展開する。この大曲を作曲するのにバッハは長い年月を費やし
た。

プログラム掲載の礒山雅さんの解説が大変勉強になった。

<Kyrie>
1.5部合唱「主よ、憐れんでください」 Altoパートが好調。東響もまたしかり。
2.ソプラノ、メゾの二重唱 発声の練習のごときレガート唱法が見事だ。
3.4部合唱 バスから始まるフーガである。バロック、いいですね~。

<Gloria>
4.トランペットとティンパニを含む管弦楽 東響は調子がいい。いかにもバッハ。
5.4部合唱 フーガ「神に栄光がありますように」 堀さんの動きが激しくなる。
6.ヴァイオリン・ソロと加納さんソロ 加納さんはさすがお上手でステキだ。
7.4部合唱 Altoがきいている。堂々たる、指揮と演奏。
8.ソプラノ、テノールの二重唱 吉田さんは思ったより強く、たっぷり歌った。相澤
 さんのフルートもVery Good!
9.4部合唱 2本のフルートが美しい。このあたりは本当にいい曲。
10.オーボエ・ダモールがすばらしい。加納さんのソロもすてき。オーボエ・ダモー
 ルの荒さんは演奏が終わり、指揮者を見てニッコリした。
11.ハミルさんのホルン・ソロに河野さんのアリア。オルガンは通奏低音として流
 れている。河野さんはいいお声だ。中山悌一かしらん。ちなみに河野さんは前
 日、前々日とN響の定期で「さすらう若人の歌」を歌っている。
12.5部合唱ヴィヴァーチェ「聖霊とともに」 自信を持った暗譜の合唱。

<ニケーア信経>
13.7部合唱 7声のフーガが展開する。
14.5部合唱 堀さんは自信に満ちた指揮ぶり。
15.二重唱(佐竹さん、加納さん) お二人とも大きくないが、全身を使っている。
16.5部合唱「聖霊によって」 粛々とした難しい曲。コントロールされ、すばらし
 かった。
17.4部合唱「十字架につけられ」 ここも抑えた表情がいい。
18.5部合唱「聖書にあるように」 復活の喜びに満ちた合唱。トランペットが響く。 
19.バス・アリア 河野さんのソロがすばらしい。
20.5部合唱 このあたり譜面にかじりつきたくなる部分も見事な暗譜。
21.5部合唱 大きな盛り上がりをみせた。

<Sanctus>
22.6部合唱「聖なるかな」 バッハのSanctusは堂々として力強い。

<Osannna、Benedictus、Agnus Dei、Dona nobis pacem>
23.8部合唱 文字どおり、全員の「オザンナ」である。
24.テノール・ソロ 吉田さんがたっぷり歌った。
25.第23曲の繰り返し
26.アルト・アリア「神の小羊よ 私たちを憐れんでください」
 堀さんはほとんど振らない。加納さん、入魂の絶唱。ブレスに支えられた弱声
 と感動が会場を突き抜けた。この日一番聴かせたといってもいいだろう。大変
 なコンセントレーションだった。
 (信じられない長いブレス--酸素ボンベを背負っている?)
27.4部合唱 第7曲の繰り返し!ソリストたちも立ち上がっての全員合唱。「私
 たちに平和を与えてください」。この日、この終曲を、指揮者を含めたステージ
 上の全員が「大震災で被災された方々」を思いながら演奏したに違いない。そ
 れが伝わってくる演奏だった。


前述のとおり、2月にも同じ曲を聴いている(ソリストも今回の方がよかった。)が、
その後、母が亡くなり、東日本大震災の発生もあったためか、一人ひとりの絶唱
が心に響いた。奇しくも(?)この日は復活祭だった。

来年の「ドイツ・レクイエム」もぜひ聴きに行こう!


当日のプログラム


昭和音楽大学
通りのケヤキははや新緑の盛り

志木高ワグネル
4月26日(火) 慶應志木高ワグネルの定期演奏会。当初、3月16日(水)に予
定されていたが、大震災による会場の都合で仕切り直しとなった。

志木高ワグネルは、1月21日(金)に行われた第22回埼玉ヴォーカルアンサン
ブルコンテスト(高校の部 ア・カペラ)において金賞(4位)を受賞している。


JR川口駅前 立派なマンション群 川口で下車したのは初めてでビックリした


川口総合文化センターリリア



開演前から行列ができていた



定員600人の立派な音楽ホール 響きがよかった

オープニング;塾歌
「見よ~」にグッと来た。の~びたり、ちぢんだりする塾歌だった。

1.「遊星ひとつ」(詩;木島始 曲;三善晃)
 指揮;吉川誠二 ピアノ;長川晶子 大脇万莉
T1;6人、T2;6人、B1;7人、B2;7人による若々しい声。しかし、デュナーミクが
すごい!終曲「バトンタッチのうた」の、一心不乱の演奏にひきつけられ、風邪声
でブラボーを叫んだ。


ワグネル・ブレザー姿のステージ



2.「名曲セレクション」指揮・独唱;河野大樹 ピアノ;木原雅裕
(1)セレナータ(トスティ) 独唱;河野大樹
(2)最後の歌(トスティ)独唱;河野大樹 
 やや荒削りながらテノール・ソロのスピントと声量がすばらしかった。河野さん
は昨年の全日本学生音楽コンクール東京予選に入賞、本選に進出した逸材で
ある。



(3)柳河(多田武彦)
 先に書いたように、1月の第22回埼玉ヴォーカルアンサンブルコンテストに
おいて1・2年生が金賞を受賞した時に歌ったものだという。
(4)梅雨の晴れ間(多田武彦)
 合唱としての声量たっぷりに感心!

「有難うございます。この曲を大震災に被災された方々に送ります」
(5)「虹」(木下牧子) 
 「ひとびとの 悲しいおもいが 昇天して虹になる ・・・・・・」


3.スペシャル・オペラ・ガラステージ
 指揮;吉川誠二 独唱;倉石真(テノール) 萩原潤(バリトン)
 ピアノ;長川晶子 大脇万莉
 中堅(働き盛り)の一流プロをお招きしたステージ。どうやってお招きするのか
しらん。こういうステージは、こういう曲があるから演奏するんだというのではな
く、「企画する力」がないとできないハズ。

(1)「ホフマン物語」より 学生の合唱

いきなり第一声「やあ、お疲れっ」で動き始めた。

(2)「リゴレット」より マントヴァ公爵のアリア;倉石真(テノール)
 さすがプロのステージ。ステージに立っただけで雰囲気が作られる。アマチュア
はうまくても、こうはいかない。


(3)「セヴィリアの理髪師」より 「俺は街の何でも屋」;萩原潤(バリトン)
 萩原さんの十八番。萩原さんのオッカケになりたくなった。ドイツ、ラインスベル
ク音楽祭で数百人から選ばれ、このフィガロを歌っておられる。すばらしかった!
(当日は入場無料であったが、通常であればお二人のプロだけで4,000円以
上はするでしょう。)


(4)「魔笛」より 「僧侶達の合唱」
 音楽的だった。吉川先生の熱心な指導の賜物だろう。毎日のように練習して
いるらしい。
(5)「トゥーランドット」より 「誰も寝てはならぬ」;倉石真(テノール)
 倉石さんは気持ち暗め、太めのテノール。アクートっていうのかしらん。ブレス
の支えから高音へ破綻なく持っていくのがすばらしい。
(6)「カルメン」より 闘牛士の歌;萩原潤(バリトン)
 志木高ワグネルの皆さんと萩原さんが繰り広げる酒場の場面。志木高ワグネ
ルの<一人ひとり>が役割と目線を真剣に演じている。その昔、ワグネルの後
輩がオペラに出演したことを思い出した。



4.「路標のうた」(詩;木島始 曲;三善晃)
 指揮;吉川誠二 ピアノ;長川晶子
 「ワグネル」らしい本格的な声を聴かせてくれた。圧倒的な声量だった。



「アンコール」として東北地方への想いを寄せて、「斎太郎節(さいたらぶし)」が
元気よく歌われた。

合唱を素人なりに聴き始めて40年以上(「あれから40年」は綾小路きみまろカ
ナ?)になるが、高校生の定期演奏会を聴いたのは初めてだった。一口に「定
期演奏会」というが、「定演」を開催するということは大変なことだ。何か(「目標」)
にぶつかっていく、木下保先生いわく「クレッシェンドする気持ち」、精神力がなけ
れば到底できることではない。それを<やり遂げる>志木高ワグネルの皆さん
に心から拍手を送りたい。

来年の定演も聴きに行きたいナ。


壺井一歩ピアノ曲集
4月29日(金・祝) 昭和の日。珍しく、<巡りの旅 壺井一歩ピアノ曲集>とい
うピアノの演奏会を聴く。(於サロン・テッセラ)
主催;アルモニク・木下記念スタジオ
後援;日本作曲家協議会


サロン・テッセラ(4F)のあるビル 左側階段となりにエレベーターの入口



第Ⅰ部
青色の表情 平島牧子(ピアノ以下同様)
巡りのための拾遺第1集 廣澤真緒実
巡りのための拾遺第4集 廣澤真緒実
巡りのための拾遺第5集 増山歌子

第Ⅱ部
12の前奏曲 No.1~6、12 中條ひかる
  No.7~11 小野寺美和
詩人の幻想航路 藤澤弥生
天空率 (初演) 増山歌子

会場は三軒茶屋キャロットタワーすぐ近くのサロン・テッセラ。客席は100席に満
たない、おそらく80人程度の、ステキなサロン会場だった。
アルモニクの会は、この日も演奏された、桐朋出身の藤澤さんが後輩に呼びか
け、演奏会活動をされているものである。
日頃は合唱とかオーケストラの演奏会を聴きに行くことが多いが、客層が合唱、
オーケストラそれぞれでなんとなく違うのと同様に、ピアノの演奏会のそれもまた
「ピアノ・ファン」のお顔であった。

(私の聞き間違えでなければ)この日、最初に挨拶された増山歌子先生が、一
昨年奏楽堂日本歌曲コンクール(作曲部門)を聴きに行かれた際に、壺井さん
の曲がすばらしかった、何より弾いている人が楽しそうだったので、壺井さんの
ピアノの曲を集めて演奏会を開くことになったそうだ。
壺井一歩さん(36)のプロフィールはこちら

この日はむろん壺井さんも来られ、曲目の紹介をしてくださった。壺井さんの曲
だけの演奏会は初めてだという。演奏されたのはほぼ作曲順であった。

これだけ近くで聴くと、いかにも打楽器、スタインウェイの音量(そして奏者のブレ
ス)がすごい!客席は身じろぎひとつせず集中していた。

生まれては消えていく、生まれて初めて聴く音楽に、20世紀フランス音楽の影
響かしらん?、ジャズっぽいところもあるカナ?このへんは独特な音だななどさ
まざまな想いが私の頭の中を駆け巡った。
チラシには「日本固有の瞑想的、詩的、自然の美しさにも通ずる感性」とあった。

<アンコール>
南部牛追唄 なるほど南部牛追唄という編曲だった。
ひとひらのメランコリー 壺井さんと増山歌子先生による、楽しそうな連弾だった。

4月末のマチネにふさわしい、すがすがしい演奏会だった。




<「迷惑をかけない」日本人>
4月28日(木) 講和条約調印60年の4月28日(日付が前後するが。)、産経新
聞の一面に表記のタイトルで黒田勝弘ソウル支局長の論説が掲載されていた。

--日本の大震災に際し、激しく悲しまない日本人はもどかしく、じれったいと
韓国人は感じている。これに対して
「韓国と違って日本は自然災害が多い。これは人間の力ではどうすることもでき
ない。誰の責任でもないし、誰かを非難するわけにもいかず、ひたすらガマンし、
耐えるしかない。日本人の災難観にはあきらめ、諦念がある」
と答えた。
「人に迷惑をかけない」は他者への配慮だが、一方で他者を過剰に意識するこ
とにもあり、「村八分」や「いじめ」が出てくるという韓国での解説もあったという。

おもしろかった。


<ハナミズキ>


ハナミズキが満開である (4月29日撮影)
1912年東京市長尾崎行雄が米国ワシントンにソメイヨシノを送った
その返礼に日本に送られたのがハナミズキである(北アメリカ原産)


赤いハナミズキ (4月24日撮影)
今年のハナミズキは元気がいい


○今日、5月2日(月)は「夏も近づく八十八夜」である。


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4 コメント

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ありがとうございます (あき)
2011-05-07 20:31:01
はじめまして。

歌っていた合唱団の者です。

私も、最初と最後は泣きそうになりました。
この状況の中で無事に終えることができ、本当に有り難いです。

返信する
Re;ありがとうございます (katsura1125)
2011-05-07 20:39:21
あきサン、コメントありがとうございます。
今でもあの日の感動を思い出します。この曲のファンにもなりました。
アニモKAWASAKIの演奏会、これからもおじゃまします。
返信する
Unknown (壺井一歩)
2011-05-13 02:39:18
4月29日の記事、ありがとうございました。
ピアノソロの作品というのは最近あまり作曲する機会がなく(すでにいい曲がたくさんあるからでしょうね、なかなかピアニストからの委嘱いただくことはありません)、私の場合それがかえって正直な、奇をてらわない素のままの音楽になっている気がします。

合唱をよく聴かれるのですね。
僕は合唱曲はまだ1曲だけしかありません。
http://ippotsuboi.kumogakure.com/sakuhin/yuyake.html
これからはどんどん書いていきたいなと思っています。。
あ、最近こんなプロジェクトに加わらせてもらってます。
http://editionkawai.jp/utaou/
オリジナル作品も近々ここで無料公開の予定です。
返信する
Re;Unknown (katsura1125)
2011-05-13 16:54:50
壺井さま、お忙しいところお立ち寄りいただき有難うございます。
日頃は、交響楽と合唱、声楽を中心に聴いておりますが、歌子先生からご紹介いただき、拝聴しました。ピアノの世界も、あらためていいものだな~と思いました。
これから壺井さんのHPも時々覗かせていただきます。よろしくお願いします。
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