人生ブンダバー

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佐藤優『日米開戦の真実』

2008-05-18 05:15:44 | 近現代史
ベストセラー『国家の罠』(新潮文庫)で有名な佐藤優の『日米開戦の真実』
(小学館)を読んだ。副題は「大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く」で
ある。おもしろいが、いろいろな意味で難しい本だった。

大川周明は東京裁判のA級戦犯。裁判中、精神異常をきたしたのか東条英機の頭
を叩き、結局免訴となった。

ちなみに極東国際軍事裁判の戦犯にはA級、B級、C級とあるが、A級が「最も悪
い」という意味ではない。A級は「平和に対する罪」、B級は「通例の戦争犯罪
--戦争法規違反」、C級は「人道に対する罪」であり、単なるイ、ロ、ハの意
味である。(このあたりのことは本書にも詳しく述べられている。)
先日、「明日への遺言」という映画(原作;大岡昇平『ながい坂』角川文庫)に
なった岡田中将は横浜裁判のB級戦犯である。


日本は外来思想の国だが、神道(これは外来ではないといっていいのかしら。)、
儒教、仏教、朱子学、明治維新後の英米流自由主義等々いろいろな考え方がある。

大川周明の考え方は、日本、中国、印度におよぶ大アジア主義である。
その大川が昭和16(1941)年12月14日から25日までNHKラジオで「米英東亜侵
略史」という講演を行い、その後、その速記録を元に出版された単行本がベスト
セラーになったことはまったく知らなかった。(実際に何万部売れたとは書かれ
ていない。)

大川は単なる「右翼急進主義者」だと思っていたが、なるほど当時はベストセラ
ーの思想家でもあったのか。

本書は、大川周明『米英東亜侵略史』と佐藤氏の論評・論説からできている。
『米英東亜侵略史』は、例えば清水馨八郎『侵略の世界史--この500年、白人
は世界で何をしてきたのか?」(平成10(1998)年発売、現在祥伝社文庫)にも
影響を与えている。

さて、佐藤優は大川周明をもって何を主張したかったのであろうか?
ひとつには、外交を「性善説」で考える日本と「性悪説」で考えるイギリス・・・
・・・この点は、戦前も戦後も変わっていないのではないか、ということのようだ。


なお、大川周明は明治23(1886)年生まれ。石橋湛山(明治17年生まれ。下記注
参照)、小泉信三(明治21年生まれ)とほぼ同世代である。戦前の日本、同じ世
代でもいろいろな考え方の人がいたのである。

(注)最近、あらためて新版『戦う石橋湛山』(半藤一利)が出た。その石橋湛
   山は戦前植民地を放棄せよとの論陣を張った勇気ある人である。


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