横浜山下公園に程近い場所に神奈川県民ホールができたのは昭和50(1975)年
である。その大ホールはNHKホールをモデルにしたとされ、約2,500席の収容
人数、音響もなかなかいい。
昭和52(1977)年9月25日(日)、その大ホールでムラヴィンスキー、レニング
ラード・フィルハーモニー管弦楽団を聴いた。
プログラムは、
1.ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
2.ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
3.ブラームス/交響曲第2番
というものだった。
会場は開演時間になり異常なまでに静まり返る中、オーケストラが整然と入場。
その後も咳(しわぶき)ひとつ聞こえず、聴衆全員が「本当にムラヴィンスキ
ーは現れるのだろうか」と固唾(かたず)をのむ中、ムラヴィンスキーがゆっく
りとした足取りで登場し、割れんばかり盛大な拍手が起こった。
その後に演奏されたワーグナーは本当にすごかった。弦のピッチもボウイング
もまさに一糸乱れず、とくに速めのテンポの「マイスタージンガー」を聴いた
9分間というもの、まったく呼吸することすら忘れて聴いたかのような思い出が
残っている。ムラヴィンスキー、当時74歳。生で聴けたことは一生の宝である。
さて、ムラヴィンスキーより5歳年下のカラヤン。この人の「ワーグナー管弦楽
曲集(Ⅰ)(Ⅱ)」がまたいい。録音時期・場所は1974年10月ベルリン。この
“LP”を買ったのは、クラシックレコードを購入し始めた初期、昭和50(1975)
年12月(28日)である。
その中の「マイスタージンガー」第1幕への前奏曲は快調なテンポ、色彩感にあ
ふれ、興奮の極みである。トライアングルもきれいに録音されている。
この演奏は現在でもEMIからCDとなって発売されている。(CD番号;TOCE
-14077~8@1,500-)カラヤンはワーグナー管弦楽曲の一部を'80年代にデジタ
ル録音しているが、'74年の録音には満足していたのであろう、これだけのもの
は再録音しなかった。
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