特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

時計の仮説

2023-04-12 02:27:46 | 日記

時間の遅れを測定する為には時計が必要になります。

それで時計について考察する訳ですが、それに先立って従来から言われている「時計の仮説」についてのういきの記事を参照しておきます。

ういき英語版:時間の遅れ(time dilation): https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Time_dilation?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

§「時計仮説」より

『時計仮説とは、時計が時間の遅れの影響を受ける割合は、加速度には依存せず、瞬間的な速度のみに依存するという仮定です。

これは、時計がパスに沿って移動することを示すのと同じです。

(引用注:この部分の数式については原典を参照願います。)
時計仮説は、アインシュタインが 1905 年に作成した特殊相対性理論の最初の定式化に暗示的に (しかし明示的にではなく) 含まれていました。

それ以来、それは標準的な仮定となり、特に粒子加速器での非常に高い加速までの実験的検証に照らして、通常は特殊相対性理論の公理に含まれています。』

この仮説の主張している内容は

「観測者に対して相対速度 V(t) で移動している時計は

sqrt(1-(V(t))^2)

の割合で観測者の時計よりも進み方が遅れる、そうしてそれは時計が加速度運動している場合でもその時々の時計の観測者に対する相対速度 V(t) を使って表す事が出来る」と言うものです。

ちなみにここで t は観測者が持っている時計の時刻表示になります。

そうであれば今観測者の時計が0~2秒経過したという時に、加速度運動している時計の時間の進みは

sqrt(1-(V(t))^2)  t=0から2まで積分

として求める事が出来ます。

それでこの時にたとえば V(t)=0.8C と相対速度が時間 t によらない定数であれば(=等速運動)

sqrt(1-(V(t))^2)=sqrt(1-0.8^2)=0.6

従って

sqrt(1-(V(t))^2)  t=0から2まで積分



0.6 をt=0から2まで積分ーー>0.6*2=1.2秒

となります。



さてそれで、そのような挙動を示す時計というものの実体は「進行する物理現象」となります。

それはたとえば原子時計であれば「原子(分子)の固有共鳴周波数 fo は一定である」という事を使います。(注1)

この原子、それはたとえばセシウム原子だったりするのだが、それが観測者に対して相対速度Vを持つ場合はその対象原子が吸収、あるいは放射する固有の共鳴光(マイクロ波)の周波数が低い方にずれる、という事になる訳です。。

そうして「そのマイクロ波を検出できれば移動している原子の時間が遅れている事の証明になる」と言ったのはアインシュタインでしたね。

それを実際に横ドップラー効果として測定したのがアイヴス・スティルウェル (Ives-Stilwell) 実験でした。(注2)

概念的にこの状況を記述するならば「移動原子から直角方向に出てきたマイクロ波はレッドシフトしていた」という事になります。

そうしてそのマイクロ波の発生起源は電子軌道の遷移であったはずですから、その状況を説明する為に「移動原子の時間の進み方が観測者の時間の進み方よりも遅くなっていた」と解釈するのが特殊相対論です。



さてここで「原子(分子)の固有共鳴周波数 fo は一定である」という事の元をたどりますと原子核の周りを回転している電子の軌道条件に行き着く事になります。

つまりは「電子の円運動」ですね。

こうしてわかる事は「人間が作る時計と言うものはどこまで行っても周期的な運動からは切り離せない」という事であります。

それは「振り子時計」から始まって「テンプ式のぜんまい時計」に至り「水晶振動子の振動」から「原子核の周りを回転する電子」に至るまですべて「周期的に繰り返す運動に依存している」という事になります。



そうしてここでもう少し言うならば「空間がなければ周期的な運動と言うものは起こりえない」という事です。

さてそうなりますと「時間と言うものは空間と物質と言うものの存在を前提にしないと出てこれない」という事になります。

つまり「空間だけの、物質=エネルギーが存在しない宇宙には時間は流れない=時間は存在できない」という事になります。



さて我々が暮らす宇宙には空間があり物質=エネルギーがありますので時間は流れる=時間は存在する=時計が存在できる、のでした。

そうして「時計が存在する」ゆえに「時間の遅れが測定できる」という事になります。(注3)



注1:原子時計:日本大百科全書(ニッポニカ): https://archive.ph/Y1maw :を参照願います。

注2:アイヴス・スティルウェル (Ives-Stilwell) 実験

ういき(英語版)から以下引用。: https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Ives%E2%80%93Stilwell_experiment?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

『Ives-Stilwellの実験では、光のドップラー シフトに対する相対論的時間膨張の寄与がテストされました。[1] [2]

結果は、横ドップラー効果の式と一致し、時間遅延係数の最初の直接的な定量的確認でした。』

注3:ちなみに原子時計を構成するのはフェルミオンであり、その時計から情報(=時刻)を取り出すのがボゾン=光、と言う関係になります。



追伸:物理現象=固有時 という考え方

ミュー粒子の寿命を考えると分かりやすいのですが、ミュー粒子の寿命の固有時は測定可能です。

それはミュー粒子の生成(=最初のイベント)から崩壊(次のイベント)までの間の時間で定義されます。

そうしてその時間をミュー粒子と同じ座標系で計れば(=ミュー粒子を静止させておけば=ミュー粒子の静止寿命)それがミュー粒子の固有時となります。(注4)

そうしてミュー粒子の静止寿命は宇宙のどの場所でも同じである、と考えられますので、「宇宙の時間の流れは一様、等方である」と考える事が出来ます。

くわえて、こうした物理現象を使った時計はその時計の運動および加速度運動が終わって元の基準系(=静止系)にもどれば、運動を始める前に持っていたその時計のテンポ(=時を刻む速度)にまた戻るのが当然である、という事になります。



注4:ミュー粒子: https://archive.ph/R5JLh :より

ミュー粒子 (μ-) 平均寿命は2.2×10-6秒 ( 2.197034(21)×10−6 秒)

生成:反パイ中間子がミュー粒子に崩壊する。

崩壊:ミュー粒子 (μ-) は電子、ミューニュートリノおよび反電子ニュートリノに、その反粒子である反ミュー粒子 (μ+) は陽電子、反ミューニュートリノおよび電子ニュートリノに崩壊する。



追伸の2:時計のメートル原器にあたるものは何か

それは特定の物理現象に必要な時間間隔ですね。

そうしてその特定の物理現象に必要な時間は宇宙のどの場所でもどの時代でも同じであった、という「暗黙の前提」がそこにはあります。



PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/fmoLO

https://archive.md/sGiBS