歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

“ピーター=フランクルになりそびれた男”の母国での評判(4)

2010-01-11 06:59:45 | トルコ関係
→(3)からの続き

セルカン氏の“凱旋準備報道”の中にはこんな↓凄まじいものもありました。2008年8月22日付けのミリエット(Milliyet)紙の記事です。

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 「日本で働くトルコの若き知識人、セルカン=アヌルルが企画した“セルカンの国を知ろう”プロジェクトの一環で、日本人の団体がイスタンブルを観光」
原題:Japonya’da çalışan genç Türk bilim adamı Serkan Anılır’ın yürüttüğü “Serkan’ın ülkesini tanıyalım” projesi kapsamında Japon kafileleri İstanbul’u geziyor
http://www.milliyet.com.tr/default.aspx?aType=HaberDetay&ArticleID=981279

ミリエット紙  2008年8月22日

日本で9年間暮らしている若きトルコの知識人セルカン=アヌルルが、“セルカンの国を知ろう”と題したプロジェクトを企画。一度に3468人もの日本人をイスタンブルへと連れてきた。

セルカン=アヌルル(35歳)はトルコではさほど知られていないが、近年では日本で最も人気のあるトルコ人である…。9年間東京で生活しており、東京大学では准教授の職にある。

※実際には“助教”

また同時に、日本宇宙航空開発機構(JAXA)の技術開発部長も務めている。

※実際には任期付き研究員で、2005年に任期満了。

8つの言語を話し、これまでに訪れた国の数は101ヶ国。短い睡眠時間で人一倍思考し、常人なら考えも及ばないような発想を現実のものとする科学者なのだ。現在では、インフラ・フリー建築や、環境によって自ら思考する“ロボット住宅”のプロジェクトについて研究を続けている。

また、日本の国営テレビ局NHKにてラジオ番組を制作。日本においては科学や芸術、文化的な活動においてその名を知られている。

37%の視聴率を叩き出したとされるセルカン氏プロデュースの怪物教育番組(但し、その存在は未確認)のことか?しかし、実際にそういうラジオ番組が存在するのか、あるいは全てセルカン氏の住むパラレル・ワールドでの出来事なのか、はたまた例の如くトルコの新聞記者の適当な脳内変換なのかは、アッラーのみぞ知る。

そのアヌルルが最近関わった大きな仕事が、2007年の6月に日本航空(JAL)の雑誌でトルコについて説明した15ページの記事の編集と、JALが企画した“セルカンの国を知ろう”プロジェクトだ。JALは、そのトルコのページに人々が感じる興味・関心とアヌルルの人気を組み合わせたわけだが、インターネットを通じて募集をかけた所、1年半の間にほぼ3500人の日本人が“セルカンの国を知り”たがっていることが判明したのだった。

アヌルルの言によれば、“プロジェクトは1年半前に始まりました。<セルカンの国へ行こう!>の名でこのプロジェクトを公表したところ、3568人の応募があったのです。今は、皆イスタンブルを団体で観光していますね。私たちは毎日講演活動を行っており、その主任講師が私なのですよ。 この旅行における我々の目的は、トルコと日本の間の関係を強化することにあります。講演では、私の日本における研究について説明しました。私は、二国間の友好を完璧なものにしようと努めているのです。”とのこと。

 <90%が女性>

アヌルルは、8月10日から22日にかけての“セルカンの国を知ろう”プロジェクトの一環で、団体でイスタンブルにやってきた日本人の90%が女性であると説明。“6つのホテルに滞在中の日本人の団体中、22~50歳のグループでは女性が90%を占めますね”と言う。

イスタンブルに3500もの日本人を連れてくるという、このプロジェクトから何ら実利的な見返りは得ていないと説明するアヌルルは、“我々は一年半の間に何度も集まりました。絨毯を買うためにここに来た人など誰もいない。彼らはトルコの人々を知り、イスタンブルを見るためにやってきたのです。この組織によって2つの国をまた一歩近づけ、東と西のアジアの間に架けられた橋を僅かながらでも補強することができれば、それは我々にとって何よりも嬉しいことなのです。”と語った。
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<セルカンの国へ行こう!>か。2002年のワールドカップの後、日本女性の間でトルコのサッカー選手イルハン=マンススの人気がピークにあった頃、その母国における勇姿を一目見たいというファンを狙って、どこかの旅行会社が“イルハン観戦ツアー”を組んだとか組まなかったとかいう話がありましたが、まさかそれのセルカン版があったとは。“セルカン王子”かよw。それも主催がJALという…...。

いや、セルカン氏の言うことだからといって、何でもかんでも嘘だと決めてかかるのはよくないですねw。現在の“私塾”の方の盛況ぶりを見る限り、本当にそういうこともあったのかもしれない。

とりあえず、ネット上で検索してみたところ、記事の中にあった“2007年の6月に日本航空(JAL)の雑誌でトルコについて説明した15ページの記事”というのは、どうやら実在するらしきことが分かりました。

この↓サイトで概要が紹介されています。

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2007年12月10日アニリール・セルカン トルコ 400年前の手紙
JALの機内誌より。トルコ人初の宇宙飛行士候補にして、小説『タイムマシン』等の著作もある東京大学助教アニリール・セルカンによるオスマン帝国の建築家シナンの物語。
http://blog.livedoor.jp/chokusuna0210/archives/51223184.html
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オスマン帝国の最盛期に活躍した天才建築家シナンが、自らが手がけたイスタンブルのあるモスクが何百年後かに改築されることを見越して、その土台の部分に設計図や改築要領を予め隠していたという話らしい。

原文を読んでないので何とも言えませんが、以前のエントリで紹介した“オスマン帝国で発明された世界初のロボット”と非常によく似た匂いがするのは気のせいか。

しかし、このコラムとセルカン氏の人気wのみで三千数百人(9割が女性)も動員できるのか?日本語のネット上だとそのJALの記事の方はともかく、ツアーの痕跡がまったく見当たらないのです。

ではトルコ語の方はどうかというと、上記のミリエット紙の記事から一ヶ月ほど後の2008年9月23日、技術系ポータルサイト“テクサトゥル(Teksatır)”にセルカン氏への長いインタビュー記事が掲載されていました。

その中に、こんな↓一節が。

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 「アタの名を天空に大書しよう!」 テクサトゥル 2008年9月23日
原文:Ata'nın adını gökyüzüne yazacağız!
http://www.teksatir.com.tr/soylesi/1046/1/04-12-2009/atanin-adini-gokyuzune-yazacagiz.aspx

※ このインタビューでは、セルカン氏が進めているとされる“ATA(アタ)・宇宙エレベーター”計画の話題が詳しく語られているため、このような題名になっている。なお、“アタ”はトルコ共和国建国の父アタテュルクから取っているが、その“アタ”とはテュルク系固有の語彙で“父親”の意(現代トルコ語だと父親はアタではなくアラビア語起源の“ババ”)。

(前略)

テクサトゥル:現在は、トルコと日本の間の架け橋を強化する目的で企画されたプロジェクトのために、イスタンブルにおられるんですよね。このプロジェクトの内訳について、またそこでの貴方の役割について、お話いただけますか?

セルカン=アヌルル:日本のミキ社が、その社員研修プログラムの一環として、3000人もの団体によるイスタンブル旅行を企画しました。この旅行の目的の一つが、トルコのことを知ってもらうことだったのです。やってきた彼らのために、私も一週間もの間毎朝、講演を行いました。我々の研究について話す一方、日土関係の発展に貢献できるよう努めたのです。

彼らは我が国について多くの知識を得て、とても満足して帰っていきましたよ。あちらでも、周囲に対しトルコのことをずっと好意的に伝えているということです。

(後略)
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その一ヶ月前に、ミリエット紙で語っていた内容とはまったく違いますね。どちらもセルカン氏の口から出ている言葉ではありますが、現実の氏の日本における知名度や人気を考えると、こちらの方がより事実に近そうです。

つまり、実際には、日本のある企業がイスタンブルへの研修旅行を行った際に、セルカン氏が現地で講演を依頼されたというだけの話なのでしょう。

セルカン氏は社会への影響力の強い全国紙・ミリエット紙の取材ということで、自らの日本における存在感の大きさをアピールしたかったのか?その講演の件に、かつてJALの機内誌に寄稿したコラムを絡めて話を膨らませている内に、いつの間にかJAL主催の<“セルカンの国を知ろう”ツアー>などという、9割以上がウソみたいな話が出来上がっていたのではないかと思われます。

それにしても、3500人で一斉に海外に社員旅行。しかも9割が女性なんて、“ミキ”とは一体いかなる会社なのか?これまた全てセルカン氏の脳内設定ではないかとも思ったのですが、一応、“セルカン トルコ ミキ 2008年 研修 旅行”みたいなキーワードで検索したら、 こういう↓のが出てきました。

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 <イスタンブール研修旅行 >アニリール・セルカンさんの講演. スライドを使って様々な話がありました。ロボットと人間はどのように共存してゆくのか、宇宙 ... 鰯のように飛び跳 >ねる、鰯踊り. 満月の夜空に、盛大に花火が上がりました。 最後の花火は >MIKIの花火. ホテルのロビーで ...

http://mikiprune.com/4.htm

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既にリンクが切れていて、続きは読めないのですが、どうやら“ミキ”とはあの“ミキプルーン”で有名な“三基商事”のことらしい。

上述のキーワードに“ミキプルーン”と“三基商事”を加えてさらに検索にかけると、 今度は、こういうもの↓が出てきたのでした。2ch内での三基商事絡みのスレッドを保存したものらしい。以下、件のトルコ旅行に関わる書込みを抜粋。

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ミキプルーンはどうなの? 三基商事②
http://park.geocities.jp/antiprune/2ch2.html

827 名前: 名無しさん 投稿日:2008/08/06 22:17
海外キャンペーンのトルコ旅行、外務省から危険情報が継続中なのに、旅行は中止にならないらしい。こんな危ない状況でも、中止に出来ない理由って何なのでしょうか?

(後略)


829 名前: 名無しさん 投稿日:2008/08/06 22:55
>827
キャンペーン旅行は、参加負担金として、通常のツアー代金並みの金額を支払っています。今回のトルコ旅行は、480セットコースで11万円、540セットで16万円です。キャンペーン期間中、下に営業所を一人作れば1万円引きになりますが、いずれにしろ、一人10万円以上の金額を取っています。参加者は、4000人とも5000人とも言われていますので、金額にして5億円以上の金額です。これだけの人数なら原価などたかが知れていますので、利益は莫大です。旅行を中止すればこの金額を返金しなければなりません。旅行会社は、三基商事の子会社でこのキャンペーン専門です。何よりも金集めが優先のミキが、中止などするわけがありません。


971 名前: 名無しさん 投稿日:2008/08/22 00:02
通常のツアーのような観光をするか、セミナーのようなことが多いかは、その年によります。

(中略)

必ず共通しているのは、最後に全員集合して、大集会になることです。ベルサイユ宮殿を借りて晩餐会とか、国連の会議室に集まって、何とかさんの演説を聞くとかその年によって違います。

今回のトルコ旅行6日間は、

1日目 出発
2日目 イスタンブール観光
3日目 イスタンブール観光
4日目 ミキオリジナルセミナー&パーティー
5日目 空路で帰国の途へ
6日目 日本着

です。 2、3日目の観光は、トプカプ宮殿とか、ボスポラスクルーズとかの普通のトルコツアーの定番の内容です。宿泊は、5つ星ホテルのツインルームですが、日本人がトルコを旅行する場合は特に珍しくありません。

(後略)

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書き込みの日付はみな2008年8月となっていますから、その時期に三基商事がイスタンブルへの研修旅行を行ったのは事実なのでしょう。また、参加者が3500人以上というのも、その中でセルカン氏が講演に呼ばれたのも本当のようです。 ただし、セルカン氏が講演を行ったのは恐らく、

>4日目 ミキオリジナルセミナー&パーティー


の際のみで、本人が言っていたように“毎朝やってた”というのは多分嘘であると思われます。

あと、上述のミリエット紙の記事にあった、“イスタンブルに3500もの日本人を連れてくるという、このプロジェクトから何ら実利的な見返りは得ていない”というのも疑わしい。

そもそも、旅行の参加者を当人らの預かり知らない所で勝手に自分のファンに仕立て上げた挙句、散々売名に使っている癖に何を言ってるんだお前は、おい?といったツッコミはさて置き、三基商事の側からそれ相応の講演料が支払われていたと考えるのが妥当でしょう。

それはそうと、スレッド内の書き込みは三基商事とこの旅行に対し妙に批判的というか、辛辣ですね。どうやら普通の社員旅行という雰囲気ではなさそうです。文中に盛んに登場する、“キャンペーン旅行”、“~セット”、“代理店”、“営業所”とは一体なんなのか?

Wikiの“三基商事”の説明にはこう↓ありました。

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(前略)

三基商事自体は、「特定利益」「特定負担」がないことを根拠に、自社の販売システムを連鎖販売取引とは認めていない。 しかし、実際には、ポジションの維持条件や、昇格条件などは存在し、それを満たす為に勧誘した人を販売員にしなければならないといった連鎖販売独特のシステムは厳然として存在するので、三基商事としては、社外的にも社内的にも自社が連鎖販売取引の会社であるか否かということについては、微妙に明言を避けている。

(中略)

基の会員は「ミキ会員」と呼ばれ、「営業所」「代理店」の順で格上げされていく。なお、三基の会員は女性が多く、加入のきっかけは、幼稚園のママコミュニティであったり、友人・知人を介して広がることが多いが、他の連鎖販売取引と大きく違う点は、当初の目的が、「健康運動」であり、他社のように、最初からビジネスが目的で会員になる人は極めて珍しい。誰もが大なり小なり抱えている自身や家族の健康不安を三基の商品で解決しようとするのが、殆どの会員の加入動機となっている。

(後略)
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要するに“三基商事=ミキプルーン”というのは、実質的に“アムウェイ”等と同じようなマルチ(連鎖販売取引)商法の会社のようですね。親会社を頂点としたピラミッド上の販売組織があり、その個々の末端が人脈を利用して販路を広げれば広げるほど、組織の上の方にいる連中は中間マージンの発生で潤うというアレです。

“営業所”とか“代理店”とかいうのは部署の名ではなく、その組織の中での個人の位置に応じて与えられる階級名らしい。会員の多くは主婦みたいなので、ミリエット紙の記事にあった“参加者の9割が女性”というのも大方事実なのでしょう。ただ、それがセルカン氏のファンではないというだけでw。

→(5)に続く



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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-01-11 18:48:00
面白いのですが…非常に読みづらいです
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Unknown (koko)
2010-01-11 20:21:38
ミキって本当に誤解されがち;;
今時珍しいくらい人間関係至上主義のシステムだし。
でも、ネット上の情報だけで判断されるのはどうかと思う。
特に2chの書き込みは恐ろしいくらい悪意で塗り固められてる。
ミキがその手のことに全く対策をとってないのも問題だけど;
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Unknown (裸族のひと)
2010-01-12 02:02:16
>JAL主催の<“セルカンの国を知ろう”ツアー>

なんじゃそりゃ?JALも、そんなんやってっから駄目になったんじゃなかろうかww


ミキがシステム販売をしていたとは知りませんでしたが、キャンペーン旅行などをエサに営業員のモチベーションうpに利用していたのでしょうねぇ。
(実は俺も若かりし頃にシステム販売にハマった経験が有るのだー ><)
ところが逆にア塗るる氏にちゃっかりと利用されていたという事ではないでしょうか。やるなぁ~ア塗るるww

しかし、3000人以上の女性ファンだと?なんか世界の”ピ”1円様と同じような匂いがすると感じたのは、俺だけだろうか・・・
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Unknown (Unknown)
2010-01-12 21:02:01
>ミキって本当に誤解されがち;;

ミキの中の人乙。
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Unknown (遠山敦子 & ミリエット記事の英語抄訳)
2010-01-14 02:51:16
(朝日新聞) 元文部科学相で駐トルコ大使も務めた遠山敦子さん(70) は、セルカンさんに「日本のお母さん」と慕われている。
数年前、トルコデーの祝賀会で「有能な技術者がいる」と 紹介され、以来、家族ぐるみの交際を続ける。「普通の顔を持っている非凡な天才」とセルカンさんを評する。
・・・

(朝日新聞) 遠山氏談 === 「8カ国語を自由に操り、スキーを履かせればメダルをとり、 学問の領域でも大型構造物の解析で群を抜く。
いつか宇宙エレベーターで宇宙に行き、地球全体を眺めた上で、 トルコに帰って科学技術大臣になり、大統領に推されるかもしれませんよ」

________________________

トルコの新聞が、セルカン を絶賛してる記事の例:

要旨: JAL宣伝紙でセルカン がトルコ観光を宣伝した結果、3500人以上の日本人がイスタンブールへ旅行した。

その90%は 22~50才の女。

http://www.hurriyetdailynews.com/h.php?news=turkish-press-scanner-2008-08-23

=== Scientist's project attracts Japanese to Turkey-Milliyet ===
................
He also makes a radio program for the Japanese National Television, or NHK.


"robot house" ? 「NHKのラジオ番組を制作している」?
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Unknown (aaa)
2010-01-14 11:51:10
ミキは長期回収型とでも言うのかな
会社が法を犯す短期回収型と違い営業所代理店と呼ばれる個人が法を犯すので大騒ぎにはなり難い。まぁ買い手は違法の判断も出来てないだろうし知人つてで買うので違法と解っても訴えないのが殆ど。
ウチの母に絡んでた営業所代理店という名の友人は全員アウトだった
母親に理解させるのが大変だったなー
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