歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

尖閣事件に対するロシア人の反応+“中華愛国烈士”がロシアの掲示板にも降臨している件(1)

2010-09-29 20:52:24 | ロシア関係
日中間で未だ“尖閣問題”が燻り続ける中、9月26日から三日間の予定で、メドヴェーヂェフが中国を訪問しました。

この件に関して、日本のメディアは、中露関係の磐石さを盛んに強調しています。というか、ほとんどロシアが中国の尖閣領有を全力で支持しているかのような勢いですね。

ちなみに、 産経はこんな↓感じで、

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「対日歴史認識で連携強化 中露首脳会談」 
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100927/chn1009270856001-n1.htm

26日から3日間の日程で中国を公式訪問しているロシアのメドベージェフ大統領は27日午前、北京の人民大会堂で胡錦濤国家主席と会談した。同大統領の訪中は2008年5月以来2度目。中露首脳の会談は今年5度目となる。  

26日、遼寧省大連市に到着した同大統領は、その足で旅順にある旧ソ連軍兵士の墓地を訪問。第二次大戦を戦った両国の退役軍人らに面会し、「いかなる歴史の歪曲(わいきょく)も許さない」などと述べた。  

胡国家主席との会談では第二次大戦終戦65周年に関する共同声明に署名する。声明には「第二次大戦の結果見直しは許さない」との趣旨が盛り込まれる見通しだ。 沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張して日本と対立する中国と 対日史観で連携することで、北方領土の実効支配を正当化する狙いがうかがえる。


(以下略)
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朝日はこう↓でした。

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「ロシア大統領が中国訪問 対日本、歴史認識で中ロ協調?」
http://www.asahi.com/international/update/0926/TKY201009260301.html

 (前略)

日本と領有権を争う北方領土の実効支配を「第2次大戦の結果としてソ連に移った」と主張するロシア首脳の訪中は、中国にとって、日本の戦後処理に端を発する尖閣問題をめぐる中国の立場を補強する好機といえる。大戦での日本の道義的責任を強調するためにも、中国は大統領訪中を最大限活用するとみられる。

(中略)

そこには、日本を取り囲む両大国が、それぞれ日本との間で主張する「領土問題」の自らの正統性をアピールしようとする意図もうかがえる。 中ソ関係は国境紛争が起きるほど緊迫した時期もあったが、1989年のゴルバチョフ・トウ小平会談で国交正常化。懸案だった国境画定も2008年に最終決着。国際政治でも緊密な協調姿勢を見せている。
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まあ、以前から決まっていた事とはいえ、この時期に敢えて中国を訪問し、胡錦濤と会って“第二次大戦の結果見直しは許さない”と言ってみたり、わざわざ旅順(ロシア名:ポルト・アルトゥール)のソ連軍戦没者の墓や戦勝記念碑に詣でたりしている以上、そのように看做されても仕方が無いわけで。

個人的には、

>「いかなる歴史の歪曲(わいきょく)も許さない」

というメドヴェーヂェフの発言には大いに賛成ですかね。

やはり、特定のイデオロギーに偏った歴史は良くない。

満洲に侵攻したソ連軍は決して単純な“解放者”ではなく、 軍規の緩いソ連軍による略奪・暴行の鉾先は、日本人に対してのみならず、しばしば現地の漢人や朝鮮人に対しても向けられたことや、

参考:「旅大地域接収初期のソ連軍の占領政策」
www.waseda.jp/gsaps/initiative/2006/work/.../pdf/ZHANG%20Cheng.pdf

本来、中国国民に引き渡されるべきであった工業インフラをはじめとする日本の在満資産をソ連軍が強奪、自国に持ち去った事実などは、きちんと記憶されるべきでしょう。

あと、そうした駐留ソ連軍の負の側面は、国共内戦においてソ連が鹵獲した日本軍兵器の供与などを通じて共産党側の勝利に貢献したことで、何となくチャラになっている、ということも。

それはともかく、ロシアのメディアで報道される現政権の要人の発言を聞いていると、とりあえず、第二次大戦に関わる歴史認識については中国と歩調を揃えているとはいえ、“尖閣問題”についての言及は微妙に避けているような雰囲気ですね。

例えば、最近、中露の間で合意に達した漁業関係のメモランダムについても、

ロシア外相のラヴローフはこんな↓ことを言っています。

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「ラヴローフ外相:漁業に関する露中間のメモランダム、日中間の論争に関係なし」
原題:Лавров: меморандум по рыболовству с Китаем не связан со спором КНР и Японии
http://www.gazeta.ru/news/lenta/2010/09/27/n_1552618.shtml

2010年9月27日  ノーボスチ通信発

セルゲーイ=ラヴローフ外相は、露中間で調印された、海洋生物資源の密漁予防への相互理解に関するメモランダムが、日中間のその方面における論争には一切関係ないことを明らかにした。

月曜日に外相が語ったところによれば、“一体どれだけ旺盛な想像力をもってすればこれら2つの事柄を結び付けられるのやら、見当もつきませんね。我が国は、海洋空間において接する全ての隣国と利害関係を有します。そして我々は、漁業問題に関して、文明的な方法で合意に達したということです。”とのこと。

また、外相は、ロシアは同様の協定を他の国、特にノルウェイとも結んでいる点を挙げつつ、“我々は、日本との間でも同様な合意を得ようと努力しています。彼らも、その必要は認めている。しかしながら、現時点では日本側による領域侵犯が少なくないのです。”と指摘。

日中間の議論の対象となっているのは、センカク(=尖閣)諸島である。北京と東京の両政府は、この島々の周辺水域にあたる天然資源の豊富な排他的経済領域において、未だ国境線を画定できていないのだ。

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また、“尖閣問題”そのものについての報道も、日中のどちらに肩入れするでもなく、淡々と事実を伝えるような記事が多い。

ロシアの立場については、中立的な立場をとって巻き込まれないようにすべし、という反応がほとんどですね。

メドヴェーヂェフの中国訪問を扱った、大手紙“独立新聞”の2010年9月24日付けの論説でも、“一方的に中国の肩を持ち、日本を刺激するような愚は避けるべきだ”みたいなことが書いてあります。

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「戦略的パートナーシップ+新機軸」
原題:Стратегическое партнерство плюс инновации
http://www.ng.ru/politics/2010-09-24/3_kartblansh.html

ロシア民族友好大学教授  ユーリー=ヴァヂーモヴィチ=タヴローフスキー 

(前略)

....大統領の訪中がまさにその大連から始まるのは、象徴的だ。大連では、9月26日にソ連軍兵士の顕彰碑に花輪を捧げ、ロシア人慈善家らの尽力により模範的に清潔な状態に保たれた、ロシア軍人墓地を訪問する予定となっている。墓地に埋葬されているのは、1904-1905年の日露戦争の戦没者1万4千人と、1945年の満洲と朝鮮における軍事行動の戦死者、2千人以上。

しかし、象徴的なのはこの点に留まらない。中国では、今年“日本の侵略者に対する戦勝65周年”の記念式典が行なわれたが、すぐその後で、日中両国がその領有を主張するジャオユイダオ(センカク=尖閣)諸島近海で中国の漁船が拿捕されたことにより、北京と東京両政府の関係に深刻な危機が生じてしまったのだ。

我らが大統領は、事前に計画されていた“戦勝に関係した土地”への訪問が、反日的なデモンストレーションに見えないよう、最高度の外交技術を発揮する必要がある。

確かに、日本はロシアを含む全ての隣国と領土紛争を抱えている。しかしながら、中国の地図だと、クリル(千島)諸島の南側の連なりは何故か日本の色に塗られているのだ。

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中国の市販の地図では、確かに北方領土は日本領になっていて、各島の名前の横には“(俄占=ロシア占領中)”の表示があります。中ソ対立時代、中国が日本の北方領土回復運動を支持していた頃の名残ですが、その背景には暗に、19世紀の中頃に帝政ロシアが清朝から奪った外満洲(現在のアムール州南部+沿海州)や庫頁島(=樺太)もまた不当に占領された“中国固有の領土”であるとの認識があるらしい。

現に、件の地図の沿海州や樺太の方の地名には、薩哈林(庫頁)島みたいな感じで、清朝時代の地名がわざわざ併記してあったりします。

中国はいかにして150万平方kmの領土を失ったか?

出展 : http://www.peacehall.com/cgi-bin/news/gb_display/print_version.cgi?art=/gb/pubvp/2008/08&link=200808022108.shtml

中国は、尖閣諸島領有の根拠として、“尖閣は明朝時代からこの方、常に中国の領土であった”と“歴史的な要因”を主張しがちですが、こういう主張をロシアが支持してしまうと、要は後々ブーメランとして自分のところに跳ね返ってきかねないわけですよ。

“尖閣同様、沿海州も歴史的に中国固有の領土だ!”

みたいな感じで。

もちろん、中露の領土紛争は2年ほど前に“最終的に解決”してはいますが、そうした法的な取り決めなんて、パワー・ポリティックの変異次第でどうにでもなることは、歴史上、他ならぬロシア国家自身が何度となく証明していたりします。

しかも、この先露中の国力が経済以外の面でも逆転していくのはほぼ間違いない

で、結局のところ、尖閣についてはああいう微妙な反応をせざる得ないのでしょう。

→(2)に続く


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2 コメント

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どこのドイツ (ガーゴイル)
2020-12-17 17:54:00
くりると読む栗留は栗原周辺の地名である。
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Unknown (騎馬戦士)
2010-12-24 13:17:37
これは満州国だよ!!!Ch  INAのじゃねえ!
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