さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

仏教の多様化(1)~唐王朝

2023-05-22 | 浮生は夢

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玄奘(602~664)

親分、仏教がインドで生まれ、やがて中国、朝鮮を経由して日本に伝わって来たことは解ったんですが、聖徳太子や聖武天皇が広めた仏教は今の仏教と違いはあるのでしょうか?

基本的なところでは違いはないだろうが、仏教というのは、お釈迦様いらい次々と新しい解釈が加わって、1000年以上に渡って成長してきたというか、少しづつ変わって来たんだよな。

それで色んな宗派があって、解り難いんですよ。なんか良く解る手掛かりはないんでしょうか?

俺は解らないままで差支えはないと思うんだが、どんな風に発展したかを順を追って知ってみるのも一つの手がかりになるんじゃないか。

そうですね、じゃあ、この辺でどんな宗派に別れたかを整理してくれませんか?

中国では南北朝時代から隋の時代に一気に仏教が流行ったことは、前に話したよね。

はい、聖徳太子が隋を見習うために小野妹子を派遣したりしました。

そうだ。でも隋という国はわずか30年位で滅びてしまうんだ。次に統一したのが唐なんだよ。これが一大王朝を作って300年位続くんだよ。この唐の時代に仏教も研究が進み、色んな宗派も出来ているんだな。それを見て見ようか。先ず、唐の時代に最も仏教研究に貢献した僧と言えば、玄奘(602~664)だろうな。

玄奘と言えば鳩摩羅什と並んで2大訳聖と呼ばれた僧ですね。玄奘三蔵とも呼ばれて孫悟空のモデルになったんですよね。

そうなんだ。27歳から43歳までインドを旅し、経典657部や仏像を持ち帰り、生涯にわたって翻訳をしたんだ。その旅の記録が「大唐西域記」なんだ。それが後に17世紀頃「西遊記」になったんだな。法相宗の開祖でもあるんだよ。

次から次へと凄い僧が生れてくるもんですね。

俺が凄いと思うのは、経典657部というところなんだ。この膨大な経典を運ぶのに、5、6頭の馬に載せて来たというんだよ。今で言うならトラック一杯分という感じだな。そしてそれを翻訳するのに残りの人生20年を毎日翻訳三昧に明け暮れているんだよ。それでも翻訳出来たのは全体の3分の1なんだ。俺が驚くのは仏教の経典とはそれ程膨大な量があるんだということだよ。玄奘の最大の翻訳は「大般若経」で16部600巻あり、漢字にして約480万字もあるんだ。俺達が読んでいる「般若心経」も玄奘の翻訳とされているんだ。

それは確かに凄い量ですね。でも、いったいどうしてそんなに膨大な量になってしまうんでしょうか?キリスト教だってイスラム教だってそんなに膨大な経典にはならないでしょう。もっと簡潔なものにはならないんでしょうか?

そこが仏教の特徴なんだ。はっきり言えばそれでも、本当のことは解っていないんじゃないかな。仏の世界は仏でなきゃ解らないんだ。人間では解らないのが仏の世界なんだよ。「色即是空」と言ったって、その「空」は誰も説明しきれないのさ。だからその解釈を巡って、次々と宗派が出来たんじゃないかな。

成程ね。誰も本当のことは解らないまま、念仏したり、手を合わせたりしているんですね。

そういうことだよ。でも、勉強したり、修行したりすると、ある程度解ってくるのが仏教でもあるんだ。だから古来から本気で仏教に取り組む人は出家したんだ。

出家しなければ、解らないんですね。

在家でも勉強は出来るだろうが、やはり本格的に知ろうと思ったら、それ程の覚悟が要るんだろう。命がけでやる位の真剣さが必要なんだろうな。

でも命がけでやる僧が結構沢山いるもんですね。

唐王朝にはそんな僧が沢山いて、王朝も保護したもんだから、都の長安には色んな宗派が成立していたんだ。おまけに仏教以外にも、ゾロアスター教、マニ教、キリスト教、イスラム教までが入ってきて、百花繚乱という感じの多様な文化圏になったようだな。

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