てんぱっていきまっしょい。

国内旅行をこよなく愛する人間の日記です。でも最近は出かけてないよねぇ。(現在コメントは事前承認制にしています。)

准教授・高槻彰良の推察 7話

2021年09月20日 | 准教授・高槻彰良の推察(ドラマ)

千葉県警内の記者クラブ室

壁の時計が16時44分を指している。簡易な応接セットとも呼べない椅子に
畑中健吾(千葉の地元新聞の若手記者で健司の大学剣道部の後輩)-森永悠希
林 文雄(全国紙毎朝新聞千葉支局のエース記者)大水洋介/ラバーガール
村田康介(畑中の先輩ベテラン記者)西村直人
大野忠一(地元テレビ局の記者)大朏岳優
が集まってくる。どうやらこの時間、それぞれに差出人不明のメールが一斉に送られてきているらしい。
畑中が林を心配するが、林は大丈夫気を付けるから と強がりとも思える返事をするだけだ。

20時16分

別室から大きな音が聞こえる。村田は 何の音だ? と畑中に尋ねるが、この部屋からは様子がわからない。
大野が記者クラブ室に駆け込んできて、林がトラブルにあったことを伝える。
急いで廊下へ駆け出す3人。
どうやら資料室の金属製の書棚のラックが倒れてきたらしく、10センチ程度の資料ファイルに埋もれ
身動きがとれない林を、一緒に入室していたらしい警察官が助けている。
どうやら入室制限があるらしく、断りを入れて大野が入室し林を引っ張り出した。
林は右足の靴が片方脱げたまま、大野と警察官に両脇を抱えられ、資料室から出てくる。
畑中は怯えた様子で やっぱり呪いだ とつぶやくのだった。

この騒ぎを少し離れた所から見ていた 遠山宏孝(千葉県警広報官)-今井朋彦 が声を掛ける。
呪い?と無表情に尋ねる遠山へ、畑中は いいえ と否定するのが精いっぱいだった。

民俗学Ⅱ 第15回 学校の怪談 講義

講義終了直前、高槻は試験について、課題レポートとその題材について説明してる。
しかし、前回のエンディング直前。研究室の階段の踊り場で、高槻の両目が青く光るのを見てしまった尚哉(青和大学文学部の新入生)神宮寺 勇太 は、課題のことが頭に入ってこない。

回想

尚哉:先生、その眼の色・・・。
高槻:見られてしまったね。これを説明するには、いろいろ話さなきゃならないことがある。あまり楽しい話じゃないから、できれば今はしたくない。構わない?

涙を堪え、震える声で悲しそうに話す高槻に、尚哉は頷くことしかできない。

高槻:やっぱり深町君は優しいね。
尚哉:戻りましょう、皆が待ってます。

頷いた高槻は、研究室へと戻っていった。

****************************

講義が終わり、退室しようとした尚哉を高槻が呼び止める。
今回は高槻が管理するサイト「隣のハナシ」への相談ではなく、違う方面からだという。

オープニング

研究室には、大仏柄のカップを手にした健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠がいた。 
いつもは尚哉に上から目線の態度をとる健司が、大仏柄のカップに注いだコーヒーを尚哉に「飲め」とすすめてくる。
どうやら違う方面という依頼は、健司からのようで、一応頼む側だから気を使って見せているらしい。
高槻:今回は健ちゃんが深町君に頼みごとがあるんだってよ。
尚哉:僕ですか?
健司:今回はお前の力を借りたい。嫌なら断ってもいい(圧)
尚哉:俺の力って、嘘を見抜くことですか?何をすれば・・・。

具体的に話を進めようとしたところで、生方(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 が限定品のプリンを携えて飛び込んでくる。生方には、まだ尚哉の能力について話していないため、話がとん挫していると
気配を察した生方は、改めますと研究室を出ていく。

これから研究室に呼ぶのは、健司の母校の剣道部の後輩:畑中で、今は千葉県警の記者クラブ室に所属している
彼はその記者クラブでおかしな体験をしているらしい、簡単に言うと怪異ではないかと。
それなら高槻の出番ではないかという尚哉に、畑中は自分を信頼して相談を寄せてきた。
刑事の勘ではあるが、今回畑中は嘘をついている気がするというのだ。
そこで尚哉にその話に噓がないかを確かめて欲しいらしい。

研究室を後にした生方、足取りが重い。
通りすがりに見かけた難波(尚哉の同級生) - 須賀健太 と谷村(尚哉の同級生) - 吉田あかり のカップルに、持ってきたプリンを渡す。
いいねぇ、学部生たちは。院生に未来はあるのかねぇ・・・。
そんなことを呟いて、無邪気な難波たちを眩しそうに見るのだった。

高槻の研究室

飲み物を渡す高槻、そばにいる尚哉に気後れする畑中。健司に話すように促され、畑中が重い口を開いた。

畑中:始まりは雑談だったんです。丁度みんな大きな事件を片付けてリラックスしていて。たまたま小学生のときの話になりました。(村田は怖い話が大好きだったという。)
畑中:4時44分に何かが起こるっていう、怪談が流行ったって。
高槻:学校の怪談で語られる怪異ですね。4という漢字をシと読むと、生死に関わるの 死 に繋がることに加え、4は四次元を連想させることから沢山の怪異が語られています。ある少年が4時44分44秒に、理科室で光っている鏡に触ったところ半年後に床下から下半身が白骨化した状態で見つかった・・・。とかね。
健司:
(ビクビク)

話を聞いていた林は全然聞いたことがないといい、村田がもうすぐ4時44分になるので自分が聞いた呪いを試してみようと言い出す。その場にあったホワイトボードに黒いペンで輪を書き、4時44分丁度に4人で輪の中に手を入れると、四次元の扉が開いて、中に引きずり込まれるというものだった。
大野は、俺の小学校のときでは、呪いにかかるって話でしたよ。と、はしゃぐ。
村田に促されて、4時44分に4人は輪の中に手を置いた。もちろん、その日は何事もなかったが翌日、4時44分に4人へ一斉にフリーメールから、奇妙なメールが届いたという。メールの本文には「4444」と書かれていた。だが、村田ひとりだけ「444」というメール内容が届いた。その日の帰り道、村田はマンションの脇を通り抜けたとき落ちてきたレンガが足に当たり、ケガをしたというのだ。
健司は尚哉に目配せをするが、畑中の声が歪んでいる様子はない。
数日後の4時44分、村田以外の3人にメールが届く。林にだけ「44」という内容で、林が資料室に行ったとき、資料室の棚が倒れてきたというのだ。

素晴らし・・と声をあげ立ち上がる高槻の両肩を、健司が慌てて抑える。
林は、ギリギリ無事で大した怪我はおっていないという。メールのアドレスはフリーアドレスで、心当たりはなく誰にでも作れる。開示請求をすれば、情報は得られるが騒ぐのは体裁が悪いと言う村田に、畑中は従っているようだ。
健司が、先にケガを負った村田と林について畑中に尋ねると「村田先輩はいつもいいネタを持ってくる凄い人で、林さんは去年少年犯罪のスクープを取った記者クラブのエースなんです。」と答えた。
二人が誰かに襲われる理由があるかという健司の問いに、

畑中:考えられません。

と答える畑中。苦痛に顔をしかめる尚哉を、高槻と健司は見ていたのだった。

大学前で(歩きながら)

畑中の最後の言葉だけが、嘘であっことを二人に報告する尚哉。つまり、畑中には襲われる心当たりがあるということだと高槻。解決したがっているのに、なぜ畑中は自分たちにうそをつくのか。そんなこと言っても判るわけないな。助かった、あとはこっちで探ってみる と健司。
そんな健司を高槻は呼び止めた。怪異として調査を続けるつもりだという。

喫茶店

ヒヤリングのため、村田と林を呼び出した高槻と尚哉。
テンションが上がりかけた高槻に、尚哉がブレーキをかける。
最初にケガをした村田に(足の様子を見せてもらう)次に棚が倒れてきたという林からヒヤリングを始めようとしたとき
両名に声をかける人物がいた。
遠山広報官だ。すぐに記者クラブ室に戻った方がいいと告げて去っていく。彼について林が高槻たちに説明する。急に態度が変わるし、すぐに戻れと言われてしまったので経緯は後ほどメールで説明すると立ち上がる。前任者は演歌が好きなおじさんだったが、遠山が担当になってから広報の雰囲気が変わったという村田。
遠山が、自分たちが誰かを聞いてきたのに、結局誰かを確認しなかったことを不審に思う高槻。

佐々倉古書店の二階

健司の話では、「村田は一杯飲んで帰る途中であるマンションにさしかかり、そこからレンガが落ちてきて足にケガを負った。」と高槻たちに説明する。高槻にあてられた村田のメールにも、同じことが書かれていたそうだ。マンションの管理人がすぐに調べたが住人は何も知らないと。嘘をついている住人がいるとも考えられる(尚哉)同意する健司。

健司:畑中が、二人が襲われる理由があると思ってる以上。俺は誰かが故意にレンガを落としたと思う。
高槻:でも棚が倒れた方は、林さんを襲おうって人がいても、警察署の中は選ばないでしょ。他にもっと襲いやすい場所があるんだから。
健司:怪異だと思うのか、じゃなぜ畑中は嘘をついてる。
高槻:・・・、わからない。でも怪異の方がいいよ。誰かが誰かを襲うってことは、そこに悪意があるんだから。それは悲しいよ。

健司は高槻の抱える想いに気づいたようで、自分の言葉をのみ込むのだった。
重苦しい雰囲気に尚哉は話を切り替えようと、今日出会った遠山にの印象について話し出す。
千葉県警の合同捜査で一緒になったことのある健司は、現在は広報官であるという遠山の名前を聞いて驚く。
取り調べでは何人もの犯人を自白に追い込んだというスゴ腕の刑事だったが、なぜか現場を退いている遠山。態度にはいろいろと問題があるらしく、急に上司にくってかかったり部下を怒鳴ったりすることがあるという噂だ。急に態度が急変すると「クロ遠山がとり憑いた」という陰口をいう者もいるらしい。

村田がケガを負ったというマンションの前

生方が出てくるのを待つ高槻。管理人に聞いたところによると、村田の件以外で事故や事件が起きたということはないという。
高槻たちの様子を窺う遠山。気づいているが、振り向かずに歩き続けるよう生方に伝える。彼のことについて調べるよう依頼され、生方はそのまま歩き去る。振り返り高槻が遠山を見つめると、遠山は反対方向へ去っていった。

千葉県警の記者クラブ室

畑中が高槻を記者クラブ室に案内し、4時44分の儀式に使用したホワイトボードについて説明している。書棚が倒れた部屋を見たいと言うと、ドアの前までならと答える畑中。記者たちは、廊下は自由に歩くことはできるがそれ以外の部屋に入ることはできない。棚が倒れたのは広報課別室で、資料室のような使われ方をして記者たちはここに入ることはできない。
棚が倒れたとき、林がここに居たのは何故なのかを高槻が尋ねると、たまたま煙草を吸いに廊下へ出たところを資料を抱えた警察官に出くわした林と大野が、運ぶのを手伝ったかららしい。
畑中は基本的にこの部屋に入ったことはないが、林を助けたときに右足の靴が脱げてしまい、その靴を探すのにまず棚を戻そうということになって、皆で入室したのだという。
高槻が、倒れた棚だけでも見たいと頼むので畑中が困っていると、後ろから遠山がどうしたのかと声をかけてきた。

高槻:ご挨拶し損ねてばかりですね。青和大の高槻と申します。

畑中が、高槻が青和大学の先生で先日倒れた棚を見たいと頼まれていることを説明する。

遠山:ただの普通の棚ですが。
高槻:僕は大学の研究で、不思議なことを研究しているものですから、興味があるんですよ。突然倒れたのは、妖怪や幽霊の仕業かもしれませんからね。
遠山:大学の先生はおかしなことに興味をお持ちですね。いいでしょう、少しだけお目にかけます。

遠山がドアのロックを解除し、電気をつけて倒れた棚のある方向を指す。中に入ろうとした高槻を、当然とばかりに遠山が遮る。資料室はガラス張りにブラインドが設えてあり廊下から見えるようになっているため、高槻は廊下側から畑中に当日の警察官と林の位置状況の説明を求める。資料を運んでいた警察官は奥で資料をしまっていて、林は棚の手前に立っていたらしいという。

もういいでしょう、遠山は電気を消しドアを閉める。

高槻の研究室

生方から、遠山の調査報告を受ける。交番勤務時代はとても評判がよく、異動のときには子供から年寄りまでお別れにかけつけた。その後少年課に配属され、たくさんの子供たちの更生の手助けをしたという。今の遠山とは印象が違い凄くいい警察官に聞こえるけどという高槻。

生方:今日はワンコ君は、いないんですか。試験準備とか?
高槻:ワンコ君?
(生方が、新しく用意したマグカップを見せて)あ~ぁ、大仏君からワンコ君になったんだね。
生方:試験のあとは夏休み、いいなぁ、学部生はお気楽で。

うなだれている生方をみて、思い出したように高槻は手作りのプリンを持ってくる。
この前、せっかく生協の限定プリンを生方が持ってきてくれたのに、食べ損ねたからお詫びに作ったのだという。

本当はあの時自分が相談したいことがあったと、高槻が気づいてくれていたことに喜ぶ。
今、生方は自分の研究に行き詰まりを感じていて、自分よりも優秀な研究者がすでに書籍を沢山出版しており、自分にできることがあるのだろうかと、悩んでいたのだ。
高槻は、あせらずにじっとその対象と向き合っていると、いつか底が抜けたみたいに見えてくることがあるから と、悩む生方を励ますのだった。

健司行きつけの定食屋で

健司と畑中は、一緒に食事をとっている。うつむいたまま、畑中はスマホの画面を健司に見せる。
4という数字のメールが、とうとう畑中あてに届いたようだ。
襲われる原因を気づいていながら隠している畑中に、俺に言いたいことがあるんじゃないのか?そう問いかける健司。
やっと畑中は、そのことについて話し始める。
畑中は、遠山が着任早々、畑中以外の記者クラブの三人が何か不正をしていると思い込んでいる様で、三人が自分の前任者と何か特別な関係だったのかな?と聞かれたというのだ。分からないと畑中が答えると、三人のことを調べるて教えるように言われたという。しかし、スパイのようなまねは嫌だったので・・・。と健司に話す。

健司:遠山広報官は、いう事を聞かなかったお前や、疑っている村田たちを罰しようとしてる。
畑中:身内の恥なんで、お話せずすみません。
健司:この話、彰良にしていいな。
畑中:はい。

千葉県警の前で

県警から出てくる遠山を、高槻と尚哉が呼び止める。

高槻:4時44分の呪いに、あなたは関わっているんですか?
遠山:いませんよ。記者クラブでそんな遊びをやっているなんて、今知りました。
高槻:先日、僕たちが事件の関係者じゃないか気にしておられましたよね。あれは何故ですか?
遠山:理由なんかありません。

尚哉は苦しくて顔を背ける。その気配に、前を歩く遠山は尚哉たちの方を振り向く。

高槻:村田さん、林さん、大野さんの不正を疑っているんですか?
遠山:そんなわけないじゃないですか。

明確な嘘が、更に尚哉を苦しめる。

遠山:そこまでお聞きになりたいのなら、ご説明しましょう。私は村田記者を清廉潔白な人物だと信じています。
林記者が独自に事件関係者を見つけてくる手腕は見事です。大野記者はずるいことを一切しない真面目な性格だ。
私の前任者ともいい関係だったと聞いています。

嘘のコンボに耐え切れず、耳を押えて尚哉がよろめく。支える高槻。
そこへ駆け寄った遠山は、尚哉の腕をつかんでこう問いかけた。

君は嘘がわかるのか・・・と。
嘘を聞くと、声が歪むんじゃないのか?
そして、先生もそのことをご存じだ。
隠すことはない、青い提灯の祭りに行ってしまったんじゃないのか?

自分しか知らないはずの怪異を次々言い当てる遠山に、驚いて見つめ返す尚哉。
遠山はこう言った。

私もだ。 

驚きの声をあげる尚哉。

遠山:嘘がわかるから、村田・林・大野が私の前任者を抱き込んで、謝礼と引き換えに捜査情報を手にしていたと気づいたんだよ。
高槻:だから畑中さんに、3人を調べてもらうよう頼んだんですね。
遠山:ともかく、この件に首を突っ込むのはやめて、私に任せてもらえないか。
高槻:そういうわけにはいきません。畑中さんに警告メールが届いています。今の話をきくと
(畑中に)大変なことが起こる。

急いで高槻が健司に連絡を取ると、畑中は急な取材で呼び出された、村田も一緒だから大丈夫だというので行かせたという。高槻の説明に、顔色が変わる健司だった。

工場跡のような場所に呼び出される畑中、心細いので村田を必死に探している。
下を歩いている畑中に、3人は何やら数日間は休むようなケガを負わせることを企んでいるらしい。
歩き回る畑中の行く手を、怖がらせるように鋼材が倒れてくる。
畑中は腰を抜かして、後ろに倒れ込む。
村田と林が上から袋状のものを畑中めがけて落とそうとしたとき、殴られた大野が転がっていた。
驚く村田と林。肩を叩かれて振り向くと、怒りモードの健司がそこに居た。

俺のカワイイ後輩に手ぇ出そうっていうんだから、覚悟はできてるんだろうなぁ。んぁぁあ。(圧)

高槻の研究室に歩きながら戻る 高槻・健司・尚哉・畑中

村田たちは、畑中が遠山に自分たちを監視するように頼まれたことに気づいていた。
そこで彼らは、4時44分の呪いを利用することを思いついた。
という高槻。

畑中:呪いは自作自演っていうことですか。
健司:あぁ。

高槻が現場となった資料室を確認したとき、2つ気づいたことがあったという。
1つは、通常はあの場所に入れないということ。
もう1つは、倒れた棚に入っていたファイルは何だったのか?

高槻が資料室の中を窓ガラス越しに見た際、倒れた棚にあったのは昨年度、つまり遠山の前任者が広報官だったときに取り扱われた事件のファイルだったというのだ。

昨年度の千葉県警と言えば、未成年の殺人による事件で大騒ぎだったと思い出す健司。
畑中が研究室に来た時、林について
去年、少年犯罪のスクープを書いた記者クラブのエースなんです。
そう言っていたと伝える高槻。

研究室のドアをあけると、ソファーには遠山がいた。
倒れた棚のファイルを全て見直してみたところ、高槻の予想通り供述調書が一部なくなっており、なくなっていた調書を畑中に見せる遠山。
それは犯人の隣人の調書だった。直接犯人の逮捕につながったわけでもないこの調書がどうして重要だったのかと、遠山に尋ねる畑中。
日付が去年の6月3日であり、その供述で警察は初めて少年が怪しいと思い始めた。にも拘わらず、林記者は同じ日に少年の関係者に取材をし、記事にしていたのだ。

高槻は、遠山の前任者が情報を林たちに流していたのだろうという。その供述調書の日付が証拠になると。

大野記者のテレビ局は、たまたま同じ日に犯人の少年にインタビューをしている。その映像はスクープとして、その後何度も放映されることとなった。

畑中:それも情報を流してもらっていたんですね。
遠山:村田記者も、昨年はいいねたを沢山つかんで記事にしている。確認したところ村田記者は、君の会社主催の演歌公演のチケットを、ホテルや食事付きで私の前任者に提供していたらしい。

高槻:林さんは、その供述調書を処分しようとして、警察官を手伝うフリをしてあの部屋に入った。そして先に靴を片方脱いで警察官の目を盗んで棚を倒したんです。そこへ村田さんと大野さんが駆けつける。
まず、書棚を立て靴を探そうということになった隙を見て、目的の書類を抜き取ったんです。畑中さんを襲おうとしたのは、しばらく休ませるためでしょう。その間に、畑中さんの職場のパソコンを調べ、遠山さんになにか報告をしていないか確認をしたかった。でも、下手に襲えば警察が動くことになります。だから畑中さんに4時44分の呪いを信じ込ませた。
畑中さん、呪いを信じたうえでケガをした事情を聴かれたら、なんて答えてましたか?

畑中:呪いのせいですとは言いづらいですから、自分の不注意ですとか、曖昧な証言をしていたと思います。

高槻:それでは捜査は始まりません。だから自分たちは(畑中を襲っても)安泰だと考えたんです。

先輩たちのことを尊敬していただけに、落胆する畑中。
落ち込む後輩の肩を叩いて、今日は飲もう と声をかけてなぐさめる健司。
遠山に供述調書を返すと、健司と畑中は一緒に研究室を出ていく。

二人が去った後、遠山は尚哉を警察官の仕事についてみないかと誘う。
自分たちの能力は警察の仕事の役に立つし、千葉県警に入れば遠山の目が届くので尚哉に配慮することができるというのだ。自分なら、尚哉の抱えている悲しみや苦しみを理解できるのだからと。
こうなったのは何歳からだ?
と尚哉に尋ねる遠山。
自分もそのくらいの年齢だった。はじめは自分に何がおきたのかもわからず、嘘だけが歪んで聞こえるのだと親に話したら笑われ、ムキになって証明して見せたら今度は嫌な顔をされた。それ以来、親との距離が縮まったことはない。
親でさえそうなんだ、友人は作らないことにした。
(尚哉に恋人がいないことを知ると)その方がいい。本気で好きになった相手が嘘つきだと知って苦しむのは君だ。
全ての人の間に線を引いて、踏み込まないこと。それが一番だよ。
でも私には君がわかる、他の誰よりも。

高槻が話に入って飲み物を勧める。それ以上踏み込んだ話なら、落ち着いた方がいい。年下の人間を動揺させて決断を迫るのは、いただけないですよ。彼は1年生です。就職以前に民俗学を専攻しないかと、誘おうとしたんです。横入りは困ります。深町君の人生は、深町君が決めることです。さぁ、何を飲みます?

今日は失礼しますよそう言って遠山は去っていく。
何事もない様子で、高槻は尚哉に飲み物をすすめる。

尚哉:すいません、俺・・・。

そう言い残して、尚哉は研究室を出て遠山を追いかけていった。
遠山の肩を掴み、どうしたら周りの人間の嘘に堪えられるのかを尋ねた。
遠山:完全に堪えられるようにはならない。自分は今でも嘘をつかれると怒りが面に出てしまうことがある。
そのせいで「クロ遠山がとり憑いた」という人もいる。結局はこの能力と向き合っていくしかないんだ。

研究室に戻り、遠山から聞いた話を回想する尚哉

遠山:私は交番勤務時代、とても充実していた。
「大丈夫、学校はとても楽しい」と答える小学生が、実はいじめられていることを見抜いて相談にのったり
少年課にいたときも、素直な気持ちになれない少年たちの気持ちを汲み取ってやれた。
天職だと思った。あるいは運命・・・かな。あのときあの祭りに迷い込んだのは、この人たちを救うためだったんじゃないかって。
尚哉:それなら俺も、この力を使って役に立てる生き方を見つけることができるんじゃないでしょうか。
遠山:先に行っておく、年を重ねればマシになるなんて、期待しないことだ。
尚哉:えっ?
遠山:君はまだ若いから、友人に嘘をつかれて傷ついて・・・。でも社会に出たら、偉くなったら君が向き合う嘘は今までとは比べ物にならないくらい悪質になる。例えば今回の件。記者たちは異動させられるが、私の前任者に処分はない。上はスキャンダルになって世間に叩かれるより、もみ消すことを選ぶ。
(遠山は悔しそうに目の前に出した自分の拳を握りしめる)嘘だと分かっていても、力のある人間の言葉はのみ込まなきゃいけない。真実を見逃さないと生きていけなくなる。生きるために、諦めることを覚えるしかない。

そう言って、遠山は帰って行った。自分の将来もそんな苦しいものになるのかと、打ちのめされる尚哉だった。

研究室に尚哉が戻るのを待っていた高槻。尚哉と遠山は違う人間なのだから、同じ人生が待っているとは限らないという。
先生には俺の気持ちなんか分からないですよ
と言う尚哉。

高槻:そうだね、わからないかもしれない。でも、特別な体験をしてそれを背負って生きる辛さは知っているつもりだよ。
僕はね、12歳のときに誘拐された。自分でも何が起きたか覚えていない。自宅の2階で寝ていたはずが、急にいなくなったらしい。うちは裕福なのに身代金の要求もなかったから、犯人の目的はお金じゃなかった。発見されたのは1か月後、世田谷の家から遠く離れた京都の鞍馬だった。新聞記事には「無事保護」って書いてあるだろ。
(スクラップブックを見せる)でもね、何も変わってないわけじゃなかったんだ。僕は一か月間の間、記憶をなくしていた。そして完全記憶能力を手に入れた。君が見た「目が青くなる症状」それから鳥が苦手になったのも全部、無事保護の後からだよ。(背を向けたままスーツの上着を脱ぎだす)現実的な考え方の父は、誘拐犯が何か薬物を飲ませたことで記憶をなくし目が青くなり、僕が過酷な状況を生き抜こうとしたせいで、完全記憶能力が芽生えたと解釈した。母親の方は、自分の息子が恐ろしい犯罪に巻き込まれたと受け入れられなかった。だから思い込もうとしたんだ、天狗にさらわれたって。

尚哉:天狗?

高槻:発見されたのが鞍馬だったからね。鞍馬には・・・

尚哉:天狗の伝説がある。

高槻:そう、それと(シャツのボタンを外しはじめる)もうひとつ大きな理由がある。

そういって高槻はシャツを脱ぎ、あの背中の大きな二本の傷を尚哉に見せた。

高槻:母はこれを、天狗が僕を人間の世界に戻したときに、翼を切り取った痕だと考えたんだよ。12歳の子供を誘拐して、背中にこれだけの傷をつけて、道に放り出すような人間がこの世にいるのか?この世の中に、それだけの悪意を持った人間がいるのか?それとも・・・天狗の気まぐれなのか。僕は知りたいと思っている。

尚哉はこれまでの高槻の異常とも思える、怪異への興味を持った態度や言葉を思い出していた。
また、怪異の方がいい。誰かが誰かを襲う悪意があるのだから、それは悲しいと言っていたことも。

シャツを直しながら、涙声で尚哉にあの言葉を言う

でもね、残念だけど本物の怪異とはそう簡単に出会えないんだ。

その言葉は、今までと全く違う意味に尚哉には聞こえる。

ただ、深町君に逢えた。君が本物の怪異を体験したのなら、僕がこんな風になった原因も怪異かもしれないだろ?

深町君、もし君が自分に起きたことと向き合いたいなら、僕は付き合うよ、とことんね。

(尚哉)
俺の決意はまだ決まっていなかった。でも、先生と出会ったあの日に感謝していた。たとえこの先、二人で恐ろしい経験をすることになったとしても。

第7話終了。 そして、本日もおよそ2万8千文字のテキスト乙っ!次回はいよいよ、シーズン1の最終回だにょん。


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