暗い水面(みなも)に
女の顔だけが 浮いていた
顔のまわりには 長い髪が広がり
顔をとりまくように浮いていた
女の眼は狂い
虚空をみつめ
みつめるたび 水面(みなも)がゆらいだ
白黒の世界
白黒の花のように ゆれていた
ムンクのカタログを失くしたので
検索しても 出てこなかった
代表作では ないのだろう
題名も不明だ
女は たった一人で 浮かんでいる
顔だけで
とりまく髪も 顔の一部で
この時、
女は
画家は 何を見たかったのだろう
恐らく、
殴り描きながら
孤独以上のものを 見た、のだろう
芸術家の野心から 離れ、
摑みかけている
何かに 触れ祈っていたのだ、
顔と水面(みなも)だけだったのに
あの絵は
あんなにも、広かったのだから
五十年 経っても、
誘われた
わたしが 覚えているのだから、
R3.6.4
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます