私は残念な事に、30才で音楽が嫌いになり、50代で絵が嫌いになった。
その為、最近美術館へ行かなくなっていた。
20才の頃の絵仲間が(自分は、繁二郎が1番好きだし、1番凄いと思っている)という言葉を急に思い出し。
(繁二郎のどこが、気に入ったのか)を知りたくなり、夫と出掛けた。
練馬美術館は、駅より徒歩3分、会場は3しかないので、疲れないのである。
と思って出掛けたら、2〜3階が会場なのだが、まず2階迄をエレベーターを使った。
チケットを買うと(順路は3階からです、希望者は、言って頂けると、3階迄エレベーターで行けます)と言われ。
己が他者からどう見られているのか、分からない私はエレベーターに乗った。
私は繁二郎の、馬・牛・能面の絵に興味が無かった。
3階の最初の部屋で、立ち止まった。
色調は暗い小作なのだが、着物を着た女性が座し新聞を読んでいる。
その右隣の中作に、驚いた。
題名はたしか、(板張り)。
構図が決まっており、彼が使わないうつくしい赤い色彩が、中心から外へと輝いている。
着物を着た女性が、着物をといて洗い張りをしていて、上からの視線の為、布と板を両手でしっかり抑えているのが。
(さあ、やるぞ!)という力強さが伝わってくる。
疲れたので、ソファーに腰掛けていると(説明が面白いよ)と夫が言うが2メートル歩く気がしなかったので。
(簡単に説明して)と頼むと妙な事を言うので、結局2メートル歩いて、解説を読んだ。
「これは繁二郎の新妻で、同じポーズを、数週間とらせたので、染料が滲んでしまい、赤色が流れた」
という事が書いてあった。新聞を読んでいる女性も、妻だという。
うーん。
やはり、このような力強くうつくしい絵を、繁二郎にかかせたのは(新妻)であったか。
(さあ、やるぞ!)は、これ以後の作品に続く熱情であろう。
(老妻)では、この絵は、かけなかったろうな、と思った。
私にも、まだ、好きな絵はある!
嬉しかった。