TRIVIAL JUNK Blog

ダラダラコスプレイヤー”克晴”の、コスと映画とその他諸々。

闇の子供たち

2008-09-15 23:57:08 | 映画
監督「前にドイツの監督が同じテーマで撮ろうとしたんですが、現地のホテルで銃持ったマフィアに踏み込まれて『今すぐ帰れ、さもなくば殺す』と脅されたとか…あ、ごめんそれ言ってなかったね」
妻夫木「そういうことは撮影前に言っといて下さい!」(舞台挨拶でのやりとり)
<公式サイト>

公開当初は7館のみの限定上映だった本作、単館系としては大ヒットを記録したため、全国102館での拡大公開が決まったそうです。
それを記念してということなのか、オイラが観に行った回に偶然舞台挨拶が組まれており、阪本監督と妻夫木聡の話を聞くことが出来ました。いやはやラッキー。大ヒットというだけあって場内はほぼ満席でした。→記事


ストーリーとしては、息子の命のために臓器売買にすがる両親を起点に、現地記者やNGOの視点を経て、タイの人身売買・臓器密売・幼児売春が描かれるという流れ。

幼児売春も人身売買も臓器密売も、それ自体は古くから様々なメディアで扱われてきましたが、本作は実際の子どもに売春シーンを演じさせるなど、とにかく「生々しさ」とゆーものが半端じゃありません。
予告でも流れるゴミ袋で捨てられるエイズの子ども、ひたすら気色悪い欧米人や日本人のお客(デブのケツのどアップとかもうね)、売春宿の劣悪な環境、女性客、マフィア側にもいる「かつての被害者」のフラッシュバック、なんとか逃げ出した少女の悲惨な末路など、様々なショック映像を正面からガチ描写。日本人の平和ボケを吹き飛ばします。
子役たちのメンタル面のフォローには細心の注意を払ったとか。

これらのド直球な映像により、「命の重さとは」という問題が観客の脳にずっしりとのしかかります。
「ブラッド・ダイヤモンド」などと同様、そこにあるのは先進国に犠牲にされる発展途上国という「負の連鎖」の姿。つまり我々日本人は、直接少女を買ったりしてなくてもはっきりと「当事者」。
では我々は何をすべきか?明日からいきなりNGOにでも入っておくか?どっかの団体に寄付でもするか?それで何かが解決出来るか?そもそも最初の一歩は何を…
そんな議論を引き起こすには充分なクオリティでした。


作品としての難点がないわけではなく。
終盤、宮崎あおい演じるNGOの行動が報われたかのような描写が出ますが、アレ実際にはほとんど何も解決してないんですよね。仕組みが残ってるというのもそうですし、あの少女の入院費だってNGO団体が負担出来るか分かりません。出来たとしても助かるかどうか分かりません。
その「解決出来てない」という点をほとんど感じさせない描き方はその部分だけが異様に偽善くさく、それまでの作品の流れと合っていなかったような気がします。彼女にもちゃんと絶望して欲しかった。
単に彼女の言動にバカ丸出しの陶酔が感じられて、好感持てなかったせいもあるでしょうが。

妻夫木演じるカメラマンの心変わりが唐突過ぎるなど、一部キャラの描き方が少々安直だったのも残念。
それと元々こういう情勢に詳しい人には、特に目新しい話はなさそうな気がします。

あ、あと「大企業の課長」に夢見すぎ。


一部フィクションも入っているようですし(確かタイやカンボジアはここ数年でだいぶ改善したはず)、マイケル・ムーア作品ほどではないにしても「これって本当?」と疑う視点も重要。よく出来た作品ほど、鵜呑みは危険です。
が、発展途上国では多かれ少なかれこういった世界が存在するのは間違いないでしょう。
それを我々日本人が「当事者」として「受け止める」ことが大事、とは監督の弁ですが、その通り、まずは観ること、知ることから。
拡大公開も決まったことですし、「まずは」観て欲しい一本です。
ただし一緒に行く相手は選びましょう。


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