わたしは六百山

サイゴンでの365日を書き直す 

ベトナム便り8

2006年02月05日 | 雑想
こちらk-603.
テトは、2/3にほぼ解消しました。
解消と言うことばは、おかしいでしょうが、私にとってはこれがもっともふさわしい表現です。
いつものように、「なんとか生活できる条件」が整ったということですから。
でも、まだ閉まっている店があります。例の昼飯やと、ときどき利用するブンボー・フエ(フエ流の米ウドン)の店です。
昼飯やはとても変わっていて、この店の中には未来小説が眠っています。一組の夫婦と(経営者で、マスター)8人の従業員がテトの間、どこへも行かず、今、静かに(夜は営業用のカラオケを歌っているときがある)休養しています。
いつも利用するパン屋も、雑貨屋も、開店しました。
でも、店の棚には商品がほとんど何もありませんでした。仕入れてないのです。
とりあえずことしも無事に営業します、と言うことのようです。
(しかも、雑貨屋は次の日には店を閉めてしまいました。きっと、品揃えが間に合わないので休んでしまったのでしょう)

興味のある光景を目にしました。
店頭の軒下に大型の液晶ディスプレーを置いていつもにぎわっている、時代の最先端の快適商品を売る店、家電量販店です。
ここも、2/3が開店日でした。その日の朝、9時ごろ。
店の前に、20人ぐらいの従業員(接客員と警備員)と、スーツを着た店長ら幹部らしき人たちがいます。
店長らしき男が、1人の小柄なごくふつうの小うるさそうなオジサンと、顔をつき合わせて何か言い合っています。従業員たちは、遠巻きにそれを見守っています。
そして、何を言い合っているのかがすぐわかる原因が、言い合っている二人の足元に横たわっています。
獅子です。
赤、黄、薄緑、橙の4頭の獅子が、頭を店に向けて寝そべっているのです。
道路際には、この中に入って血や肉になったり、調子付かせて舞い踊らせたりする黄色いコスチュームの一段が(これで、コスチュームは赤だけではないと言うことが分かりました)太鼓を真ん中にして控えています。
つまり、オジサンはこの龍獅団の団長です。団長は今日の開店の日に、ぜひ獅子踊りをやった方がいい、(施主になってくれ)と言っているのです。
「ことし、一年、この店は大繁盛まちがいありません」
「関係ない、こんな縁起を担ぐようなことをしてもしなくても、利益は上げなくちゃならないんだ」
「でも、一年のけじめってものもございますし、お客様にも、従業員の方にも、一年の福をお呼びします」
「けじめは、決算がする、去年もやらなかった、それでも、何の影響もないじゃないか」
「勝機をつなげるためにも、ぜひ、今日の日に舞わせていただきたいのですが」
「とにかく、いらないんだ。古い考え方ではこれからの商売はやっていけないんだ」
「お客様がきっと、よろこばれます」
「客は、いい商品を安く買ってよろこぶんだ。いいから、この獅子をかたづけてくれ、開店の邪魔だ」
(とかなんとか言っているのでしょう)
店長は、店に入る階段に向かいました。
オジサンは太鼓の方に戻りました。
双方渋い顔をしています。
あいだには、まだ4頭の獅子がのんびり寝そべっています。
そのとき、階段を二段ほど上がった店長らしき男が、従業員の方に向かって何か言いました。
みんなは、ちょっと躊躇しましたが、その中から1人が出て獅子の方に向かい、薄緑の獅子頭を持ち上げ、黄色い一団の近くに運びました。
つづいて別の1人が、赤い獅子頭を運びました。
4頭が運び去られて、警備員以外の従業員たちは店の中に入っていきました。

ぼうぜんとこの状況を見つめ、まだ、そこにまだ立ちつくしている若者たちがいます。
黄色いコスチュームの、一団です。

時代の波がここでぶつかり、逆巻き、流れます。
古きことのよさと、新しきことのかがやき。



<日本語教師と生活のこと>
私の体はいま、調査中です。
熱っぽいのと、咳が続くので、外国人を受け付ける医院(はっきり分かれているということです)をさがし、行ってきました。
呼吸器を心配しましたが、X-RAYでは問題ないようです。

今週から、授業が始まりますが、どんなことをするのか思い出すのにちょっと時間が必要です。

HCMは今、昼も夜も室内気温30℃です。(熱っぽいのはそれが原因かもしれません)
テトが過ぎると、次はベトナム人でも大変だと言う(一日十回シャワーを浴びてもまだ暑い)酷暑の季節が到来するそうです。
テトの2週間を、体力と生活環境を判定する試金石と考えていたのですが、結果はどちらもNo,と出てしまいました。

(写真は家電量販店)



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