醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  303号  白井一道

2017-01-25 11:14:10 | 随筆・小説

 博打の自由はあるのかーカジノ解禁について

侘輔 いよいよカジノが解禁されることになったね。
呑助 どこにカジノができるんですかね。方々で誘致しようとしている自治体があるそうじゃないですか。
侘助 地方都市は難しいんじゃないのかな。
呑助 それはどうしてですか。
侘助 東アジア近辺の大金持ちは飛行機でやって来るんじゃないの。
呑助 あっ、そうですね。交通の便の良い所じゃないとダメなんですね。
侘助 だから、大阪とか、和歌山、横浜が候補に挙がっているらしい。
呑助 大阪ね。大阪維新、橋下のお膝元ですね。横浜、菅官房長官の選挙区ですよ。和歌山は二階自民党幹事長の選挙区ですね。そうか。
侘助 権力を食い物にしていると言っていた人がいたよ。
呑助 土地、建物、その他いろいろカジノを作るには大きなお金が動くことが予想できますね。
侘助 問題はそれよりさらに大きな問題があるようにも思うんだ。カジノというのは、賭博だからね。共産党の清水忠史衆院議員は、「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)を審議した衆院内閣委員会で「とばく禁止は持統天皇以来、689年のすごろく禁止令に始まる。近代法にも受け継がれている」と指摘して自民党を批判していた。
呑助 奈良時代の天皇が賭博を禁止していたんですか。
侘助 そうらしい。ここで考えなければならないことは、金があるなら博打をしたっていいじゃないかという主張がある。
呑助 そうですね。若い女の子が体を売ったえぇいいじゃないか、自分の体なんだからという話がありますね。
侘助 同じような主張だな。
呑助 博打する自由、売春の自由という問題ですね。
侘助 自分の金で博打して遊ぶ。自分の体を売って金を得る。私は人を殺してみたかったと言って殺人をした人がいたな。ここに自由について考える大きな問題があるように思うんだ。
呑助 とても難しい問題があるように思いますね。
侘助 殺人の自由を認めたら社会は成り立たなくなってしまう。人は人に対して狼である。このような社会では社会が存続していくことが難しいよね。他者の存在を認めることによって自己の存在が認められる。これが社会でしょ。
呑助 そうなんでしようね。
侘助 だから、殺人の自由は存在しようがない。殺人の自由はない。それと同じように賭博の自由は存在しないんだ。
呑助 ちょっと違うなという感じがしますよ。
侘助 考えてほしいんだ。賭博という行為は他人の所有物を奪う行為なんだ。だから奈良時代以来禁止されてきたんだ。
呑助 賭博は殺人と同じような行為だから賭博の自由はないということですか。
侘助 うん。だから売春も同じだと思うんだけれどね。
呑助 売春は自殺行為だということですか。
侘助 自殺は殺人だからね。だから自殺の自由はないと思うんだ。
呑助 意思の自由というものも制約されているんですね。
侘助 いや、制約ではなく、制約そのものが自由なんだ。