醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  285号  白井一道

2017-01-07 15:38:04 | 随筆・小説

 新春大歌舞伎(市川右近改め三代目市川右團次襲名披露)を見る

 「新年と襲名を寿ぐ豪華顔あわせの初芝居」というチラシを受け取り一月五日新橋演舞場に友人と二人入場した。前から九列目の席だった。開演の午前11時にはまだ時間があった。歌舞伎を見るのは四回目である。内容が分かりやすいといいなぁーという思いでチラシを見ると演目「雙生隅田川(ふたごすみだがわ)」の粗筋を説明している。ざっと目を通してみても内容がぼーっとしていて今一分からない。いやはや困ったなぁーと、思っていると友人が言った。今日の演目は一大スペクタルらしいよ。
 見終わっての感想を一言で言うと近松門左衛門作の物語をショウ仕立てにした歌舞伎だった。親子三人が舞台から宙に吊られて劇場の天井を移動していく。本物の水が天井からざぁーざぁーと流れ落ちてくる。溜まった水の中で刀を持った武士たちが大立ち回りをする。太鼓が鳴る。拍子木が打ち鳴らされる。義太夫が声を張り上げて物語る。何を言っているのかさっぱり分からないが、三味線の音に調子を合わせ、迫力がある。
 花道で役者が見栄を切ると天井から「オモダカヤッ!」と声が降って来る。スーパー歌舞伎とは見世物なんだと納得した。