醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1080号   白井一道

2019-05-31 14:34:52 | 随筆・小説



    蕣(あさがお)や昼は錠おろす門の垣    芭蕉 元禄六年



 この句には次のような前詞がある。「元禄癸酉(みづのととく)の秋、人に倦(う)んで閉関す」。
 芭蕉はアサガオに秋の季節を感じていた。アサガオの花を見て、肌をなめていく風に秋を発見していた。一人でいたい。人が訪ねて来ることが疎ましい。人と逢うと疲れてしまう。独りになりたい。一日中、ひとりでいたい。
 アサガオの花に元気をもらい、一日が過ごせる。アサガオの元気だけでいい。朝、元気をもらうと一日過ごすことができる。アサガオは話をしない。私が語るだけだ。私の話を聞いてくれる。それでいい。朝、花を開き、昼には萎んでしまう。それがいい。アサガオの季節はひとりがいい。
 人が訪ねて来ると話をする。それぞれ皆自分の話をして帰っていく。他人の話を聞くことに疲れてしまう。他人とは勝手なものだ。私の話などに耳を傾ける人がいない。あぁー嫌だ。嫌だ。独りがいい。
 人気俳諧師芭蕉はひとりいることに満足していた。それほどに芭蕉の人気は高かった。元禄時代、俳諧は生活に余裕のある人々にとって楽しみになっていた。

醸楽庵だより   1079号   白井一道

2019-05-30 12:11:37 | 随筆・小説



  接待の裏で安倍政権ひた隠す「密約」   AERA dot. - 2019年5月29日より



 令和初の国賓として来日したトランプ米大統領への「接待攻勢」に、議論が巻き起こっている。安倍晋三首相がゴルフに大相撲観戦、炉端焼き店などでトランプ氏を“おもてなし”したことに、米ニューヨーク・タイムズ紙は「おべっかの積み上げ(Piles on the Flattery)」と題した記事を掲載した。国内では立憲民主党の辻元清美国対委員長が「(トランプ氏は)観光旅行で日本に来るのか。首相はツアーガイドか」と批判するなど、野党が反発を強めている。
 もちろん、一国の首相としての誇りをかなぐり捨て、大国の権力者とお近づきになって得られたものがあるなら、それも一つの外交戦術だろう。では、成果があったのかというと、どうにも心もとない。
 今回の日米首脳会談では、事前に共同声明の発表見送りが決まっていた。最大の理由は、トランプ氏が農産物の関税引き下げを求めたことで、日米の貿易交渉が進んでいないからだ。
 ところが27日、トランプ氏はツイッターで<日本との貿易交渉で素晴らしい進展があった。農業と牛肉で特に大きい。日本の7月の選挙後に大きな数字を期待している!>と投稿。同日の日米首脳会談後の記者会見でも「おそらく8月に両国にとって素晴らしいことが発表されると思う」と発言。参院選後に貿易交渉が妥結されるとの見通しを示した。
 日本は、日米の貿易交渉でTPP以上の関税引き下げに応じないことを基本方針としている。一方のトランプ氏は、会見で「TPPなんか関係ない」と言い放った。いったい、どちらがウソをついているのか。東京大学の鈴木宣弘教授(農業経済学)は言う。
「日本でTPPやEUとのEPA(経済連携協定)が発効したことで、米国は日本への農産物輸出で出遅れています。しかも、日本はEUとの貿易交渉で、チーズなどの分野でTPP以上の譲歩をしている。そういった状況で、トランプ氏がTPP以下の水準で『進展』と考えるとは思えません。安倍首相としては選挙が終わるまで秘密にしておくつもりが、トランプ氏が勝手に公表してしまったので『密約』にならなかったのでしょう」
 実は、過去の米国大統領訪日でも“密約”があった。鈴木教授は続ける。
「2014年4月に来日したオバマ氏(当時は米大統領)は、安倍首相と一緒に銀座の高級すし店で夕食をともにしました。その時にTPP交渉で議論されていた農産物の関税引き下げについて、オバマ氏と秘密合意をしたと一部で報道されました。安倍政権はその事実を認めませんでしたが、同年12月に安倍首相は解散総選挙を実施して、再び圧勝。その後、オバマ氏との密約の内容がTPP交渉で次々と実現していきました」
 当時の報道によると、すしを食べながら“密約”を交わしたのは、牛肉や豚肉の関税についてだった。牛肉を38.5%から9%に、豚肉は安い部位で1キログラムあたり482円の関税を50円に引き下げることで実質合意した。TPP反対は、12年に自民と公明が政権に返り咲いたときの公約だ。テレビではオバマ氏がすしを食べる様子がさかんに報道されていた裏では、安倍首相が公約破りの大幅譲歩していたのだ。
 そういった経緯があるからだろう。国民民主党の玉木雄一郎代表は27日、「(トランプ氏と)密約的に約束を交わして、国民に明らかにするのは選挙の後というのは、我が国の国民や国会をだます結果としてなってしまう」と警告した。一方、河野太郎外相は「交渉は(TPP以上の関税引き下げはないと定めた)共同声明の枠組みで行われる」(28日参院外交委員会)と説明したものの、5年前と同じで参院選後になれば前回と同じように国民との約束をひっくり返す可能性は十分にある。
■接待外交の裏で国会では重大法案が審議中
 隠したいのは日米の貿易交渉の中身だけではない。国内では、国民の生活に深く関わる法案がまもなく成立しようとしている。
 参院では現在、国民の共有財産である国有林で、最長50年にわたって大規模に木材を伐採・販売する権利を民間業者に与える国有林野管理経営法の改正案が審議されている。
 12年に第2次安倍政権が発足してから、政府は農業や漁業の第一次産業や空港や水道など公共インフラを「民間開放」する政策を進めてきた。今回の法改正も、その一連の流れに位置づけられて最長50年の伐採期間は世界的にも例がないことから、法案に反対する林業関係者からは「国土切り売りだ」との批判が起きている。
 国会の審議も、異例の展開をたどった。
 衆院農水委員会の参考人質疑では、東京農工大の土屋俊幸教授が野党推薦の参考人として国会で答弁した。土屋教授は林野庁の政策を外部有識者で審議する林政審議会の会長で、政治的中立性が求められる立場だ。にもかかわらず、野党推薦の参考人として国会で話すことは「異例なこと」(林野庁関係者)だった。
 土屋教授は、参考人質疑でこのように話した。
「少し批判的な言い方になるのをご承知おかれたいのですが、(国有林法改正案の立案過程は)少し唐突であったように私は感じています」
 土屋教授の指摘通り、法案は林野庁ではなく官邸主導で作られた。昨年5月、政府の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)で、民間議員の竹中平蔵東洋大教授が、国有林事業の運営権を民間業者に委託する「コンセッション方式」の導入を提案。日本商工会議所の三村明夫会頭も「林業政策を産業政策の方向に大きく転換する必要がある」と後押しした。竹中氏は、バイオマス発電事業を手がけるオリックスの社外取締役で、人材派遣大手のパソナ会長も務めている。
 その頃、土屋教授が林政審議会で話したことは、もっと直接的だった。「私はクビを切られても全く問題ない」と前置きしたうえで、こう話している。
「未来投資会議というのが官邸にあって、その委員の竹中平蔵氏が、何回にもわたって国有林の改革について主張されてきたというのは、ホームページ等を見ればわかることです。(中略)ですが、こと、森林や林業や山村については、(竹中氏は)やはりいわゆる専門の方ではないと私は思います」
 竹中氏をはじめ、官邸の意向を受けて作られたこの法案は、林業の専門家から激しく批判されている。
 今月15日には、研究者や林業関係者らが「国有林野管理経営法改正案を考える会」を設立、法案に反対する声明を発表した。同会事務局の上垣喜寛氏は言う。
「林業は『伐る・植える・育てる』の循環によって経営が成り立つのですが、今回の法案は『伐る』ことだけに重点が置かれています。国有林にある木をすべて伐ってしまう『皆伐』が広がるのは確実です。しかも、木を伐った後の再造林(木を植えること)は伐採業者に義務づけられておらず、再造林費用はすべて国民の負担。これでは、伐採業者に国民の共有財産である国有林が売り渡されるだけです」
 吉川貴盛農相は、国有林の入札の際に再造林を同時に行うことを申し入れることで「確実に再造林される」と説明するが、野党は「『申し入れ』ではなく『義務』にすべきだ」と反発している。
 日本では戦後に植林された木が成長して、伐採量を増やす政策が進められている。一方で、皆伐や過度な間伐で木を伐りすぎたために山が荒れ、再造林に失敗した山も多い。林野庁の森林・林業白書によると、伐採された山の面積の約6~7割が、再造林されないままとなっている。
 一方で、林野庁に同情する声も聞こえてくる。別の林野庁関係者は、こう話す。
「林野庁にとって国有林事業は庁内のエリートコースで絶対に手放したくない。官邸からトップダウンで指令が来たが、基本の伐採期間を10年にしたり、5年後に法案の見直し条項を入れたりしたことで、法案に一定の制約を入れることができた。今後は、林野庁がどのように国有林を管理・運営していくかが問われる」
 日本の国土面積の7割は森林で、そのうち3割の758万ヘクタールを国有林が占める。国有林のなかで人工林だけを抽出しても、222万ヘクタールだ。今回の改正案は伐採可能な人工林が対象となるが、林野庁は、当面は「1カ所あたり数百ヘクタール規模で、全国10カ所程度」と限定した。一気に国有林が伐採されることを防ぐためだ。
 官邸の圧力と、それに必至の抵抗をする官僚たち。森友・加計問題など、安倍政権下で繰り返されてきた霞が関の暗闘がここにもある。しかし、法案に一定の歯止めがかけられたからといって、楽観はできない。前出の上垣氏は言う。
「日本ではいま、再造林を担う人材が不足しています。皆伐した後に木を植えてもシカなどに食べられてしまう。国有林では、どれほど再造林されているのかも把握できていません。そもそも、林野庁は国有林事業の失敗で1兆円以上の負債を抱えていて、50年後も今のままの組織として存在しているかはわかりません」
 衆院農林水産委員会の審議では、共産党の田村貴昭議員が山林1ヘクタールあたりの平均販売価格が130万円であるのに対して、再造林と木の保育にかかる費用は220万円だと指摘した。1ヘクタールあたり90万円の赤字で、伐れば伐るほど国民負担は増える。また、国有林の山は急峻な山など林業をするには条件が不利な場所にあることも多く、「実際の販売価格はもっと安いはずだ」(林業関係者)という。前出の上垣氏は、さらに国民負担が増す可能性も指摘する。
「大規模な皆伐が増えれば土砂災害を誘発します。そして、その災害復旧費用も国民の税金で負担しなければなりません。経済的にも環境的にも国民生活に大きな影響を与える法案であるにもかかわらず、国民にほとんど説明がなされていません。それが最大の問題です」
 林野庁は指摘に対し、こう説明する。
「伐採と再造林のコストについては、林野庁としても重要視しています。皆伐だけではなく、多様な伐採方法も認めて、国民負担を下げるようにしていきたい」(林野庁経営企画課)
 法案は、30日の参院農林水産委員会で採決が行われる。前出の鈴木氏は言う。
「貿易交渉の密約も国有林法の改正も、トランプ接待外交ばかりが報道されるうちに、国民の知らないところで物事が進んでいる。日本人は、その事実を知らなければなりません」
(AERA dot.編集部・西岡千史)

醸楽庵だより   1078号   白井一道

2019-05-29 13:40:28 | 随筆・小説



    しら露もこぼさぬ萩のうねり哉    芭蕉 元禄六年


 この句には「白露をこぼさぬ萩のうねりかな」という異型の句が伝えられている。「しら露も」と「白露を」の違いである。私は「しら露も」の方が断然良いと思う。「白露を」ではなく「しら露も」とすることによってたわんだ萩の枝の形が表現されている。
 「も」と「を」、助詞の使い分けに芭蕉は神経を使っていた。「しら露も」とすることによって萩の花は読者にいろいろなことを想像させる。萩の花は万葉集で一番多く詠まれた花である。
 奈良、唐招提寺を萩の寺といった歌人がいる。秋の観光シーズン到来ともなると豊かにたわんだ萩の花を愛でる観光客がどっと来る。
 「をとめらに行き逢ひの早稲を刈る時になりにけらしも萩の花咲く」『万葉集巻10詠み人知らず』。萩の紅い花びらに万葉の歌人たちは女性を思い浮かべていた。
 芭蕉は『おくのほそ道』市振で「一家に遊女もねたり萩と月」と詠んでいる。芭蕉にとって萩のイメージは女性であった。万葉以来のイメージを芭蕉は継承し、萩を詠んでいる。

醸楽庵だより   1077号   白井一道

2019-05-28 14:51:26 | 随筆・小説



 夕顔や酔うて顔出す窓の穴  芭蕉 元禄六年



 芭蕉はお酒が好きだった。酔いの楽しみを詠っている。夏の夕暮れ芭蕉は一人、酒を楽しんでいた。手酌の酒にうっとりしていると小便をもよおした。ゆっくり立ち上がり厠に行った。厠に設けられた小窓から顔を出してみると夕顔に出会った。
 小便をした後の清涼感のせいか、夕顔の花が綺麗だった。源氏物語に出てくる夕顔を思い出していた。光源氏が愛した夕顔の君はどんな女だったのか、想像力が膨らんでいった。夕方の顔の印影が光源氏の心に突き刺さったのだと芭蕉は思った。夕方になるにしたがって会いたいと思う気持ちが大きくなる成熟した女性のイメージが芭蕉の心を満たしていくのを感じていた。
 「白菊の目に立て見る塵もなし」と詠んだ女性、園女(そのめ)の姿を芭蕉は思い描いていた。園女は夕顔だ。夕闇が迫ると精彩を放つ。淑やかな清潔感に吸い寄せられていく。一緒にいるだけで気持ちが安らぐ。
 酔いの楽しみは想像力にある。酔いが想像力を喚起する。厠の小さな窓から覗いた夕顔の花から刺激された芭蕉の想像力はいつ果てるのかわからない。うっとりしていたのは数分だったのかもしれない。

醸楽庵だより  1076号   白井一道

2019-05-27 13:36:48 | 随筆・小説



 漁師ら、オスプレイ配備に怒りの声  共同通信社 - 共同通信 - 2019年5月26日



「陸上自衛隊が導入する輸送機オスプレイの佐賀空港(佐賀市)配備計画に反対する決起集会が26日、空港周辺で開かれた。地元の漁師らが参加し「国防のためなら県民の命や財産はどうでもいいのか」と怒りの声を上げた。
 地元漁師らでつくる住民団体が主催し、県内外から約600人(主催者発表)が集まった。団体代表の古賀初次さん(70)は、環境悪化を懸念し「海を汚すと生き物は殺され、漁民が生活できなくなるのは目に見えている」と強調した。
 漁師や地方議員からも「一度変化した海は元に戻せない」「国は信用できない」といった不安の声が相次いだ。」
 このようなニュース記事に注目したい。日本国中の地域住民は自分の住む街にオスプレイが配備されると聞いたら反対するだろう。国民は軍備増強に反対している。国民は戦争になることを願っていない。これは世界どこの国の国民も同じ気持ちであるに違いない。このどこの国民も同じ気持ちであるのなら、平和・友好を実現することは可能であろう。
日本国憲法には大きな三つの原則があると中学校で教わった。一つが国民主権であるということ。主権とは、国の意思を決定する権利のこと。 この主権が国民にあるということは、国の意思を国民が決定するということ。それにもかかわらず国が地域住民の意思に反することを強制してくる。本来このようなことがあってはならないにもかかわらずこのような事態が生ずる。今、日本国はどこの国から日本を防衛するためにオスプレイを佐賀空港に配備しようとしているのか、分からない。 日本は中国や北朝鮮を仮想敵国としているのかもしれない。オスプレイを佐賀に配備することによって日本の安全が強化されるのだろうか。このことに私は疑問を持っている。  「【ワシントン=黒瀬悦成】米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)は、北朝鮮北西部の新五里(シノリ)に、中距離弾道ミサイル「ノドン1号」が配備されている未公表のミサイル基地が存在すると指摘した報告書を発表した。
CSISの21日の発表によれば、基地には戦略ロケット軍ノドン旅団の司令部が置かれ、朝鮮半島全域と日本の大半に位置する標的に対して核弾頭または通常弾頭による先制攻撃を行う任務を与えられていると推定される。」
このような報道がある。北朝鮮の中距離弾道ミサイルを佐賀空港にオスプレイを配備することによって阻止することができるのだろうか。軍事力によって軍事力を阻止することは不可能な時代になっている。平和を実現するのは軍事力ではなく、友好関係を実現することではないか。
中国との間に日本は平和友好条約を結んでいる。なぜ中国との平和友好条約を尊重し、中国との友好関係を深めることが日本の平和を維持すると考えないのか、その理由が分からない。
日本国憲法の二つ目の原則が基本的人権の尊重である。人は生まれながらにして持っている権利が基本的人権だと中学校で教わった。生存する権利や自由を求める権利、これらの権利は侵すことのできない永久の権利として日本国憲法に規定されている。佐賀の漁民は生存権を主張している。オスプレイの配備は漁民の生存を脅かすと佐賀の漁民たちは主張している。
日本国憲法三つ目の原則が平和主義である。第2次世界対戦、太平洋戦争を通じて戦争の悲惨さを痛感した日本は、「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」を憲法に定めている。戦力の不保持とは、軍隊その他の戦力を持たないことだから、オスプレイのような兵隊や武器の輸送に用いるものは憲法違反のものといえよう。オスプレイのようなものを佐賀空港に配備することは憲法違反の疑いがあるようにも思う。
日本政府に憲法を守ることを願う。

醸楽庵だより   1075号   白井一道

2019-05-26 12:23:37 | 随筆・小説



    すずしさを絵にうつしけり嵯峨の竹     芭蕉 元禄七年


 黒田家の浪人、野明氏から俳諧の誘いがあった。京都嵯峨野の野明亭を芭蕉は元禄七年六月十五日に訪ねた。竹藪におおわれた奥に野明亭はあった。竹藪の中の涼しさに芭蕉はほっとした。
「野明さん、竹藪を通ってくる風の涼しさに驚きましたよ」
「嵯峨野は竹藪が多いのです。有難いことに、この竹藪が嵯峨野の夏に涼しさを与えてくれているんですよ」
「嵯峨野の竹は丈が高いですね」
「そうなんです。冬、風が吹くと音を聞いただけで寒くなるような感じがしますよ」
「まるで絵に写したように涼しさが嵯峨の竹にはありますね」
「芭蕉さん、発句を詠んでくれたんですね」
「すずしさを絵にうつしけり嵯峨の竹、ですか」
芭蕉は野明さんとの話をしているうちに発句が湧き出てきた。嵯峨の竹はまるで涼しさを絵に写したような涼しさだった。

醸楽庵だより   1074号   白井一道

2019-05-25 13:14:22 | 随筆・小説



   アメリカ政府はイランとの戦端を開く出来事を創り出すのだろうか



[ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米大統領は、イランとの緊張で国家非常事態にあるとして、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダンへの80億ドル規模の武器売却を承認した。
議会はサウジなどへの武器売却を阻止してきたが、武器輸出管理法には、国家非常事態の場合は議会で審議しなくても大統領が武器売却を承認できると規定されている。
ポンペオ国務長官は声明で、武器売却が「同盟国を支援し、中東地域の安定性を強化するほか、イランから自国を守る一助となる」と強調。さらに、議会を回避したことについては「1回限りの決定」と説明した。
トランプ政権は同日、3カ国に対する22件の武器売却を進めることを議会に通知。ロイターが入手した通知文書には、3カ国に提供される製品やサービスが広範囲にわたって記されており、レイセオンの精密誘導弾(PGM)やボーイングのF15戦闘機へのサポート、レイセオンとロッキード・マーチンが製造した対戦車ミサイル「ジャベリン」などが含まれている。
議会筋によれば、通知文書には議会が阻止してきたあらゆる防衛装備が記されているという。
上院外交委員会のボブ・メネンデス議員
上院外交委員会のボブ・メネンデス議員(民主党)は「トランプ政権は再び国家安全保障上の長期的な利益の確保や人権保護を優先せず、代わりにサウジアラビアのような独裁国家に便宜を与えようとしている。驚きではないが、失望する」と語った。
外交委のリッシュ委員長(共和党)は、「複数の武器売却」を進める意向が記された正式な通知を政権から受け取ったと明らかにし、法的な正当性について精査していると述べた。
ホワイトハウスと国務省は現時点でコメント要請に応じていない。
このようなニュースに目が釘付けになった。イラン戦争をアメリカ政府は目論んでいるのだろうか。アメリカ国民の目はトランプ大統領に集中しているようだ。なんとかアメリカ国民の目を海外に向けたい意向がトランプ大統領にはあるようだ。トランプ政権維持のために中東で戦争を起こす。このようなことが起きるのだろうか。イランは中東の大国だ。1978年に起きたイラン革命によって親米政権であったパーレビー朝は倒れている。
パーレビー朝はイランの西欧化政策を進めたがイラン国民の支持を得ることができなかった。このことは「白色革命」と言われている。アメリカ政府が考える諸制度をイランに強制しても、根付かないことにアメリカ政府は気づいていない。アメリカ政府はイラン人のための政治体制を考えていなかった。アメリカ政府に都合がいいような政治体制を作ろうとしたので失敗した。アメリカ政府の意図がイラン国民に見抜かれてしまったからだ。
イラン革命は民族自決主義の実現だった。以来40年、イラン国民は貧困に苦しめられてきた。政治的にも経済的にも厳しい状況にあるイランを攻め倒そうというのがトランプ大統領の狙いなのだろう。しかし成功する確率はないだろう。最貧国のベトナムは世界最大の軍事大国アメリカと戦い、勝利している。どんなに貧しく弱々しい国であっても民族独立のためには最強の軍隊が出現するようだ。
 アメリカ政府がイランに戦争を仕掛ける意図がトランプ政権維持のためであるなら、その意図はイラン政府に見抜かれているだろう。全世界民衆の目がアメリカ政府を見ている。アメリカ政府の対イラン政策が全世界民衆に支持されるはずがない。
イラン政府はイラン革命以来40年間永らえてきている。この間、西側諸国からの経済制裁を受け、苦境を乗り越えてきている。
国際社会もまた、アメリカ政府がイラン政府打倒のための戦争を許さないであろう。トランプ大統領はイラン戦争を仕掛けることができないのではないかと考えている。

醸楽庵だより  1073号   白井一道

2019-05-24 17:00:12 | 随筆・小説



   アメリカの後進国化が始まった



 米政府、ファーウェイ製品締め出しの大統領令に署名。
「2019年5月15日、ドナルド・トランプ米大統領がかねて検討していた「情報通信技術とサービスのサプライチェーンの保護に係る大統領令」に署名しました。この大統領令では「敵対的な国が管理監督する企業が製造した情報技術を米国内で無制限に使用することは、機密を脆弱にするとともに敵対国の力を増大させ、容認できないリスクをもたらす」と謳っています。
文書内では"敵対的な国"を明記していないものの、言ってしまえば、中国政府に関係の深いファーウェイやZTEといった中国企業のネットワーク機器を米国内から排除するとともに、許可なくファーウェイが米国の重要技術を購入することを禁止するということです。
米国政府はこれまでも情報通信企業に対してファーウェイやZTEと協力することを禁じており、ファーウェイは中国政府から直接に資金を得ていると述べてきました。これまでにファーウェイが何らかのスパイ活動を行っているという証拠は出ていないものの、米国は英国やカナダ、ニュージーランドなど同盟諸国に対してファーウェイ製品採用を取りやめるよう圧力をかけています。
とはいえ、それで米国内でファーウェイ製品が姿を消したかと言えば、そうでもありません。通信キャリアなどはたしかにネットワークの世代更新時にファーウェイ製品を除外しているものの、店頭に並ぶ消費者向けのスマートフォンのラインナップにまでそれが徹底されることはほとんどありません。
Reutersは、ファーウェイは部品の多くを米国のサプライヤーから調達しており、この大統領令によって多くの製品の製造販売が継続できなくなる可能性があると指摘されます。一方、"米国のサプライヤー"側の企業であるクアルコムやブロードコムなどにも、この大統領令は業績面での影響を与えることになるかもしれません。
ファーウェイはこの件に関して「当社の米国における事業を制限すれば、米国企業は安全が強化されるどころか、より高価で質の低い製品を使わされることになり、5G通信規格の整備でも他国に後れをとることになるだろう」「非合理的な規制はファーウェイの権利を侵害しており、深刻な法的問題を提起することになる」と声明を発表しました。
大統領令の発表に伴い、政府は商務省に対して他の政府機関とも協力し、10月まで(150日以内)に実際の執行計画をとりまとめることになります。商務省はまた使用禁止の対象となる企業、関連する企業が70社にのぼることを明らかにしました。もちろんファーウェイとZTEもリストに記されています。」
エンガジェット日本版より
米中貿易戦争を更に厳しい状況にアメリカ政府は追い込んでいる。中国は米国製品の秘密を盗み、自国の製品として販売している。このようなことをしている中国の企業をアメリカ政府は許せなくなったと森本敏氏はTBSの報道番組で話していた。元防衛大臣の森本敏氏の隣には寺田 稔(自民党衆議院議員)がいた。彼らの発言はとても注意深いものだった。決して中国企業がアメリカ企業の特許を侵害して製品を製造しているとは言わなかった。
ファーウェイはアメリカ企業で働いていた中国人や外国人を採用して製品開発をしたと述べている。アメリカ企業で働いた経験者はアメリカ企業の特許を侵害することなくファーウェイ製品を製造したと言っている。頭脳がアメリカから中国へ流出したのだ。なぜならアメリカ企業の待遇より中国ファーウェイの待遇が良かったからアメリカ企業からファーウェイに転職したのだ。森本氏の発言は安倍晋三氏が言う印象操作のようなものだ。
「国際特許の分野で中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)の突出ぶりが際立っている。世界知的所有権機関(WIPO)が19日発表した2018年の特許の国際出願件数で、同社は2位につけた三菱電機の約2倍となり、他社を大きく引き離した。これで14年から5年連続で中国企業が首位。国別でも中国からの出願件数が全体の2割を占めた。」このように日経新聞、電子版は報じている。
「5G通信規格の整備でも他国に後れをとることになるだろう」とファーウェイが述べているようにアメリカはこれから後進国化していくことは間違いないだろう。日本はアメリカの尻馬に乗るのではなく、アメリカから自立し、中国からも自立した国としてアメリカとも中国とも平和・友好を深める外交をしていくべきではないか。

醸楽庵だより   1072号   白井一道

2019-05-23 14:34:58 | 随筆・小説



   軍事基地は時代後れのものではないのか




 小さな新聞記事に未来を感じた。その記事とは次のようなものである。
「【ニューヨーク共同】国連総会(193カ国)は22日、英国が1965年に当時植民地だったモーリシャスから分離し英領に編入したチャゴス諸島を巡り、英国に「6カ月以内に無条件で諸島の植民地統治を終え、撤退する」よう求める決議案を賛成多数で採択した。
同諸島はインド洋の中心にある戦略的要衝。総会決議に拘束力はないが、欧州連合(EU)離脱後も国際的影響力を維持したい英国には打撃となりそうだ。
同諸島で最大のディエゴガルシア島は英国が66年に米国に貸与し、米軍が全島を基地として使用している。」
インドを植民地支配したイギリスはインド洋に浮かぶ島々をも植民地支配した。植民地支配する経費を考え、イギリスはアメリカに貸与した。アメリカ政府は軍事基地維持経費を考え、アメリカ軍はディエゴガルシア島から撤退するのではないか。
沖縄・辺野古に米軍基地建設を米軍ではなく、日本政府が進めているようだ。米軍は沖縄から撤退しても特に大きな打撃を受けるわけでもないようだ。だからだろうか、日本政府が沖縄に米軍基地の存在を望んでいるのなら、米軍基地維持費を日本政府に持ってもらいたいとトランプアメリカ大統領は言っているようだ。
中国政府も北朝鮮政府も平和を望んでいる。自ら戦争を仕掛けるメリットはないであろう。日本は中国と間に平和友好条約を結んでいる。日本は中国との間に平和友好の関係を築いていくことが大事であって、軍拡をすることは無意味なことだ。なぜなら軍事力によっては平和を実現することができないからだ。
米軍への思いやり予算を組むことではなく、近隣諸国との間に平和友好関係を築いていくことが経済的だ。このようなことを小さな新聞記事を読み、思った。

醸楽庵だより   1071号   白井一道

2019-05-22 14:07:48 | 随筆・小説



  岐阜の酒  御代桜



侘助 御代桜醸造は明治二十六年の創業だから酒造業界にあって、古い歴史を持つ蔵ではない。立地する地域は岐阜美濃賀もである。中山道五十一次の太田宿は、飛騨、木曽両川の合流点直下の木曽川畔に位置し、中山道の三大難所「木曽の桟、太田の渡し、碓氷峠がなくばよい」と馬子唄にもある急流・太田の渡しのあった宿場で、現在も太田宿の面影を色濃く残す一角に、御代桜醸造はある。中山道御料林のいかだ乗りや街道を行き交う数多くの人々に『天の美禄、
百薬の長』として愛され親しまれてきた清酒、御代櫻。「加茂神社の東南の泉田という所に清冽な清水が湧き出ていた」、「大化の改新より前、鴨の里の県主の一族が水取りの伴に選ばれて、大和朝廷に水を奉っていた」という古伝の史実もみられるなど、水の清冽な岐阜美濃加茂は、酒造に絶好な気候風土のようだ。
呑助 御代桜は岐阜の酒ですか。岐阜の酒と言うと何がありましたかね。
侘助 我々に馴染みの岐阜の酒と言うと「三千盛」だろうな。
呑助 軽快な辛口の酒ですね。このお酒も夏向きのお酒ですね。
侘助 岐阜と言うと日本列島のど真ん中に位置している地域だからね。最も日本的な文化が育まれているところの酒だからね。ある意味、最も日本的なお酒なのかもしれないな。
呑助 最も日本酒らしい日本酒の一つとして御代桜の酒があるということですか。
侘助 御代桜の杜氏さんは次のようなことを述べている。「目指すのは小細工の無いど真ん中のお酒です。 日本酒特有のお米の旨味が感じられ、後口はすっと消えていく。飲んだ後には日本酒を飲んだという充実感を余韻として残すような酒。甘辛酸の味わいが極端なお酒は、最終的には飲み疲れます。一口目のインパクトが大げさでは無くても、腰を据えてじっくりと飲めるような、飲み飽きしない調和のとれたお酒を理想としています。五味五感の「調和」、それこそが御代櫻の個性だと考えます。   お酒造りで一番大切なことは、人の和です。どんなに優秀な杜氏でも一人ではお酒を造ることが出来ません。蔵人一人一人のうまい酒を醸したいという情熱の結集こそが「御代櫻」に息吹を吹き込んでいます。」
呑助 バランスのとれた酒造りを目指しているということなんですかね。
侘助 お酒を楽しむ充実感に満ちたお酒と言うだと思うけどね。
呑助 ある意味、平凡な酒だと見なされてしまう危険性があるということなんですかね。
侘助 長年日本酒に親しんできた通が楽しめるお酒なのかな。
呑助 ワイワイガヤガヤ飲むお酒ではなく、静かにじっくり味わって飲んでこそ堪能できるお酒だということなんですかね。
侘助 そうなんじゃないのかな。酔いの楽しみに満足できるお酒なのかもしれない。
呑助 ふっと気分が楽になった愉しみですかね。
侘助 そうだよ。厳しい現代社会に生きる人は皆ストレスに疲れているでしょ。そうした緊張感から解放される喜びが酔いの楽しみなんだと思う。気の置けない仲間と飲み飽きしないお酒を楽しむ。