醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  251号   聖海(白井一道)

2016-03-31 15:09:43 | 随筆・小説

 野党統一の実現(1)

侘助 今年、夏の参議院選挙が新聞やテレビであまり報道されることはないような気がするんだけれどもね。
呑助 そうですかね。私自身もあまり今年夏の参議院選挙には関心がありませんよ。
侘助 そうでしょ。そのような選挙に無関心な人が増えてくれることを政権を持つ自公政権は望んでいるんじゃないのかな。
呑助 そうなんですかね。
侘助 そうなんだよ。シールズの女性学生が言っていたよ。電車の中で中年の酒に酔った男たちが話していた。シールズのような学生たちがいくら戦争法反対、選挙に行こうよ、野党は共闘と叫んでみても社会は終わっているよ。社会が変わることはないとね。私はこの中年男たちの話を聞いて反論はしない。しかし私は言いたい。先の長い私たちは言いたい。私たちのこれからの生活が今より良くなるように主張したいとね。私たちは集会に参加し、デモをすることによって社会が変わっていっていることを実感している。デモをしたことのない私がデモができるようになった。デモをする仲間がいることを実感した。民主主義とはなんだ。これが民主主義だと。今の現実社会に絶望している中年の酒に酔った男たちに言いたい。戦争法反対。野党は共闘。選挙に行けば社会が変わる。
呑助 シールズとは何なんです。
侘助 戦争法に反対する学生団体のようだよ。
呑助 70年安保の時のような報道がほとんどありませんね。
侘助 メディアが言うようなニュース性がないと判断したのかもしれないな。
呑助 ニュース性とは何ですか。
侘助 、70年安保の時にはゲバルト棒を持った学生たちが大規模な殴り合いをするとか、警官隊と衝突するとかの派手な事件があったが、今回のシールズの学生たちは自分たちの言葉で考えを表明している。ここが大きな違いかな。70年安保の学生たちは自分の言葉で自分の考えを表明していなかった。紋切り型の言葉しか、無かったからね。
呑助 あー、そうなんですか。
侘助 70年安保の学生たちと比べると今の学生たちの方が力があると思うけれどね。
呑助 シールズの学生たちが主張する野党共闘の状況はどうなんですか。
侘助 シールズが主張した野党共闘が少しづつ実現に向っているようだよ。
呑助 野党共闘を阻む者は何なんですか。
侘助 民主党を支援する連合に結集する労働組合が共産党との共闘を嫌っているからだと思うよ。しかし、その民主党右派勢力を説得し、岡田民主党党首が五野党会談に臨んだんだ。その結果、四項目について確認し合った。
 (一)安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。
 (二)安倍政権の打倒を目指す。
 (三)国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。
 (四)国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う。
呑助 衆議院京都三区補欠選挙では共産党との共闘が実現しなかったようですね。
侘助 そうなんだ。今まで京都の共産党と民主党とは闘ってきたからね。そうやすやすとは共闘できないんだろうがね。そうは言っても歴史を振り返って見ると今まで武器を持って戦ってきたものが共闘した経験があるんだ。
呑助 へぇー、そんなことがあったんですか。
侘助 日本での経験ではないんだ。中国の国民党軍と共産党軍が抗日という点で戦いを棚上げして共闘した。これを国共合作と云っているんだ。1931年、柳条湖で日本軍が満州鉄道を爆破し、中国軍の犯行だと決めつけ日本は中国への侵略を始めた。抗日のため36年の西安事件を機に国民党軍と共産党軍は共闘する道を選んだ。これが国共合作だった。蒋介石率いる国民党軍は共産党軍との共闘に腰が重かったが、西安に赴いた蒋介石は西安の軍閥張学良によって共産党軍と戦っている場合ではない。今一番の敵は日本だ。日本と戦うためには国民党軍と共産党軍は協力しなければならないと暴力をもって張学良は蒋介石に迫った。やむなく蒋介石は部下の張学良の提案を受け入れ、国共合作が成立したんだ。張学良が国共合作を上司蒋介石に国共合作を提案したように、現在の日本では学生団体シールズやママの会、総がかり実行委員会などの市民団体が安倍独裁政権を倒すためには民主党と共産党とは戦っている場合ではない。安倍自公政権を倒すためには民主党と共産党は手を組み、協力しなければならないと共闘を促している。この市民団体が張学良の果たした同じような役割をしているんだ。

醸楽庵だより  250号   聖海(白井一道)

2016-03-30 10:55:23 | 随筆・小説
  
   中東問題(5)

呑助 IS、イスラム国は突然、報道されるようになりましたね。
侘助 そんな印象があるよね。突然出現したテロ組織という印象が確かにあるね。
呑助 そうですよ。
侘助 アメリカがサダム・フセインを倒し、新しい傀儡政権を作った時にサダム・フセイン政府にいた役人たち全員を首にしたそうなんだ。それらの役人たちは自分たちが生きるためにアメリカの傀儡政権とは別に自分たちの生活基盤を作ったものがイスラム国になったようなんだ。サダム・フセインを倒した多国籍軍がイスラム国を作ったと云っていいのかもしれないなぁー。
呑助 イラクの油田地帯キルクークを中心にした地域を占領し、そこをイスラム国と名のったんですね。
侘助 自分たちの生活を支える油田地帯を占領したわけなんだ。しかし、どうやって石油を掘り出すのか、掘り出した原油をどのように売りさばくのか、難しい問題があったはずなんだ。
呑助 掘り出した原油をどうやって売っているんでしようね。武器をどのように買っているのか、そのあたりの報道はほとんどありませんね。
侘助 イランの日本語ラジオ放送によるとアメリカがISに武器を供給しているという放送があったね。また食糧などもね。
呑助 アメリカはイスラム国に爆弾を落としているんじゃないですか。
侘助 不思議なんだ。またアメリカの中古トラック自動車がイスラム国に渡り、そのトラックの後ろに機関銃が据えられている映像が流れたことがあるそうだ。トラックの脇に書かれた文字によってそのトラックがアメリカの中古自動車だという事が分かったようだ。
呑助 へぇー、そんなことがあったんですか。
侘助 、その他にもイスラム国の指導者、バクダディが怪我をしたとき、イスラエルの病院で治療したというイランの日本語ラジオ放送があったよ。イスラム国は不思議なことにイスラエルを攻撃しないようなんだ。イスラム国が欧米諸国の敵となることによって、イスラエルの平和、安全が増したということはありそうなんだ。
呑助 アメリカの中東政策はダブルスタンダードなんですかね。
侘助 そうなのかもしれない。中東諸国にあってイスラエルの敵は同時にアメリカの敵でもあるからなぁー。イスラエルもまたイスラム国を攻撃することはないみたいだからね。アラブ諸国にあってアラブ諸国に敵対するイスラエルとイスラム国をアメリカは作ったのかもしれないなぁー。
呑助 アメリカという国は恐ろしい国ですね。まさに陰謀を張り巡らす国なのかもしれませんね。
侘助 先日、ロシアのプーチンとアメリカのケリー国務長官が会談し、イスラム国掃討について話し合ったという報道があった。本気になってアメリカはイスラム国に爆撃をしているという報道が日本ではあるがどこまでアメリカは本気になっているのか疑問に感じるな。
呑助 アメリカはシリアのアサド政権を倒そうとしているんですよね。
侘助 そのようだよ。シリ
アはイスラエルに対して敵対しているからね。アラブの春が来たとき、反アサドのデモ隊をアメリカは焚きつけ、シリア反政府武装組織、自由シリア軍を支援している。
呑助 アラブの春はなんとなく「アラブの冬」のような印象がありますね。シリア難民が徒歩でヨーロッパに逃げ出している映像がテレビで放映されていますからね。
侘助 ロシアはアサド政権を支持する明確な態度を示しているが、アメリカやEUはアサドが敵なのか、イスラム国が敵なのか、態度を鮮明にすることが今、世界から求められているように思うね。本当にイスラム国は欧米諸国にとって敵なのか、特にアメリカはイスラム国が敵なのか、それともシリアのアサドなのか。

醸楽庵だより  249号   聖海(白井一道)

2016-03-29 16:38:16 | 随筆・小説

  横綱が泣いた


 横綱が泣いた。大相撲三月場所千秋楽結びの一番、横綱白鵬の相撲にブーイングが渦巻いた。優勝旗の授与を待たずに席を立つ観客が続いた。怒号の中のNHKアナウンサーによる優勝インタヴューの中で横綱白鵬は泪をながした。この涙は本人にとっても悔し涙のようだった。なぜこんな相撲を取ってしまったのかという悔し泪だった。しかし、男の泪に観客は白けてしまった。女の泪には許しがあるが男の泪には許しがない。
 相撲は男の文化だ。男の文化に生きる世界が相撲のようだ。男の文化の厳しさが強い男、白鵬の心を打った。この痛みに耐えかねて横綱は泪を流した。同情を求める涙ははねつけられる。これが男の文化なのだ。
 観客は強い男を見に来ている。強い男はがっちり相手を受け止める。これが相撲なのだ。受け止めて寄り切る。これが相撲だ。じっくり仕切り、満を持してぶつかる。これが相撲だ。肩すかす。これは相撲ではない。相撲は勝負ではないのだ。相撲の結果が勝負なのだ。相撲に勝って勝負に負けることがある。それがいいのだ。結果として勝負にも勝ち、相撲でも勝つ。これが横綱なのだ。
 相撲は観客のものなのだ。力士のものではない。観客あっての力士なのだ。勝負は力士のもの。力士にとっては勝負が相撲なのだ。勝つことによって力士の生活は成り立っている。勝負に勝つことが力士の生活を豊かにする。いい相撲を取っても力士の生活は豊かにはならない。勝負に徹するといつもいい相撲が取れるわけではない。いい相撲が要求される力士が幕内力士なのだろう。
 相撲と勝負、相反する可能性がある土俵に生きるのが力士なのであろう。相撲と勝負、このせめぎ合いの中で白鵬は相撲に負けて勝負に勝った。観客は勝負に勝った横綱にブーイングし、席を立った。相撲に負けた横綱白鵬は涙を流し、優勝した。ほろ苦き「優勝」だった。
 プロスポーツとは全て観客あって初めて成り立つものである以上、勝負に徹したスポーツは観客から見放されてしまうだろう。観客が見て満足する勝負をしなければプロスポーツはなりたたないだろう。フェアなプレイでなければ、スポーツではない。フェアなものだから観客は喜ぶ。八百長や博打はスポーツを堕落させる。スポーツをスポーツでないものにする。スポーツは楽しむもの。楽しむものだからこそスポーツなのだ。
 相撲は国技というが、プロスポーツになっているのだ。なぜなら楽しむものだから。楽しむものだから相撲はスポーツなのだ。大相撲春場所千秋楽結びの一番、白鵬対日馬富士、集中してぶつかった日馬富士に対して白鵬が変化した。勝負に徹した白鵬に日馬富士は土俵をわった。白鵬の変化に観客は楽しむことができなかった。楽しみを求めて大阪府立体育館に高い入場料を支払って来たのに、楽しむことができなかった。白鵬にフェアなプレイを見ることができなかったからだ。
 大相撲春場所千秋楽結びの一番、白鵬対日馬富士戦はプロスポーツとしての相撲ではなかった。観客は相撲を見に来たのに相撲を見ることができなかったからだ。
 スポーツは体育とは違う。スポーツは楽しむものだが、体育は楽しむものではない。学校教育にあって体育は当然正当な教育科目である。スポーツは楽しむもの、遊ぶものなのだ。だから部活動としての野球はまず第一に遊びであり、生徒たちが楽しむものでなければならないのに教育活動の一環として部活動が行われていることは実に不幸なことである。特に甲子園野球が高等学校の教育活動の一環として部活動の一部としてあるにもかかわらず、プロスポーツ化しているのは不幸なことである。
 今、春の全国高等学校野球大会が開かれている。相撲と高校生の野球をテレビ観戦しながら感じたことである。

醸楽庵だより  248号   聖海(白井一道)

2016-03-28 16:04:12 | 随筆・小説

  中東問題(4)

侘助 湾岸戦争に日本は135億ドルを拠出した。それでもアメリカは喜ばなかった。こういう話を新聞やテレビで話す政治家や国際政治学者と名乗る人々がよく言った。アメリカはとは言わずに、「国際社会」は、と述べていた。このお金を用意する上で活躍したのは小沢一郎さんだったらしい。そのような話を孫崎享さんが話していた。
呑助 小沢一郎という政治家は凄い政治家なんですね。
侘助 そうなんじゃないのかな。小沢さん自身もアメリカには尽したと思っているんじゃないかと孫崎さんは話していた。
呑助 日本の保守政治家はアメリカに片思いをしているんですかね。
侘助 そんな感じがするね。ちっともアメリカは日本のことなんか考えていないのに一方的にアメリカを想っている。アメリカから高く評価してもらうためだったら、日本の若者を殺してもいいというような気持ちなんじゃないかな。
呑助 自民党の政治家というのはそんなもんですかね。
侘助 アメリカ軍と一緒になって一緒に戦えというのは、日本の若者を殺せということなんじゃないのかな。
呑助 湾岸戦争では、イラクのサダム・フセイン大統領は敗戦を受け入れたんですよね。
侘助 そうなんだ。イラク軍がクエートに侵攻し、全土を制圧するとアメリカは国連軍の編制を目指すが無理であることが判明すると、「有志を募る」という形での多国籍軍による攻撃を決め、イギリスやフランスなどもこれに続いた。エジプト、サウジアラビアをはじめとするアラブ各国もアラブ合同軍を結成してこれに参加した。多国籍軍は1991年2月27日にはクウェート市を解放、敗走するイラク軍を追撃した。同日中にアメリカのブッシュ大統領が停戦を発表し、フセイン大統領は敗戦を認めた。3月3日には暫定停戦協定が結ばれ戦争が終結した。停戦協定成立後、核開発防止のための国際原子力機関(IAEA)査察をイラクは拒否したため、イラク戦争の要因となっていく。
呑助 中東アラブ地域というのは第二次世界大戦後、平穏であった時期というのはほとんどない地域なんですね。
侘助 ほんとにそうだね。
呑助 イラク戦争は2003年に始まるんですよね。
侘助、、湾岸戦争停戦に際して、イラクは停戦条件として国際連合安全保障理事会によって大量破壊兵器の破棄を義務付けられていたからね。いわゆるイラク武装解除問題だよね。武装解除の対象とされたのは、生物兵器、化学兵器、核兵器、射程150km以上のミサイル、およびそれらの武器を製造するための設備や資材であり、武装解除を目的とした経済制裁も行われたんだよ。
呑助 厳しいもんですね。
侘助 イラクは敗戦国だからね。
呑助 イランのホメイニのような政治をする宗教指導者がイラクにはいなかったんでしようかね。
侘助 第三次世界とも言えるような冷戦が終わり、ソ連帝国が崩壊する時期だったからね。超大国アメリカが世界に君臨し始める頃だったからね。
呑助 いよいよイラクはまた攻撃されてしまうんですね。
侘助 、そうなんだ。イラク武装解除問題の進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に、イラクへ米軍は侵攻した。正規軍同士の戦闘は2003年中に終了し、同年5月にジョージ・W・ブッシュにより「大規模戦闘終結宣言」が出たが、後にイラク国内での治安の悪化が問題となりイラク国内での戦闘は続行した。2011年8月31日にバラク・オバマ大統領により改めて「戦闘終結宣言」と『イラクの自由作戦』の終了が宣言され、翌日から米軍撤退後のイラク単独での治安維持に向けた『新しい夜明け作戦』が始まった。そして2011年12月14日、米軍の完全撤収によってバラク・オバマがイラク戦争の終結を正式に宣言した。実質的なイラク戦争は2011年まで続いていた。いや現在ではイラクという国が解体し、イスラム国とか、クルド人の自治国とかと共存する国になっているようだ。

醸楽庵だより  247号   聖海(白井一道)

2016-03-27 16:14:39 | 随筆・小説

  中東問題 (3)

侘助 アメリカの支援を得てイラン革命は成功した。アメリカには誤算があった。イラン革命政府はアメリカのいう事を聞くものとばかり考えていたが、イスラム教シーア派最高指導者ホメイニはアメリカに牙を剥いた。
呑助 ホメイニはブレジンスキーを出し抜いた。役者が一枚上だったわけですか。
侘助 イランにはアケメネス朝ペルシア帝国以来、三千年の歴史を持つ文化があるからね。アッバース朝イスラム帝国を支えたペルシア人の知恵が今に至るまで継承されているからね。
呑助 イラン人とはペルシア人のことなんですか。
侘助 そうなんだ。イラン人と隣のイラク人とは民族が違うんだ。ペルシア語はインド・ヨーロッパ語族といわれる言語に分類されている言葉だが、イラク人が話している言葉はアラビア語なんだ。アラビア語はセム語族といわれている言葉なんだ。日常使われている言葉が民族を形成する上で決定的に大きな役割をしているらしいから。言葉というのは人の性格をも決定すると云われているみたいだよ。
呑助 そうなんですか。
侘助 英語で暗殺を意味する「アサッシンassassin」という英語の語源はペルシアで活躍した「アサッシン教団」にあると云われている。暗殺者はハシシュ麻薬を飲んで暗殺に向った。ヨーロッパから武装した巡礼団が十字軍として肥沃な三日月地帯といわれたメソポタミアに侵入してくるとアサッシン教団が活躍した。
呑助 イランやイラクの人々は二千年に渡って侵略者と闘ってきた歴史があるんですね。
侘助 そうなんだ。だからイスラム教シーア派の最高指導者ホメイニには侵略者の裏をかく伝統的な知恵が継承されているんじゃないのかな。
呑助 ペレジンスキーというのは学者あがりの外交官なんでしよう。そんな外交官の裏をかくことなど容易いことだったんでしようね。
侘助 そうかもしれないな。
呑助 アメリカは頭にきたでしようね。
侘助、そこでイラクのサダム・フセインを焚きつけてイラク軍にイランを攻撃させた。イラン・イラク戦争の始まりだ。
呑助 サダム・フセインというのはアメリカの傀儡政権だったんですか。
侘助 そのような政権だったんじゃないのかな。
呑助 じぁー、どうしてイラク戦争はどうして起きたんでしようかね。
侘助 そう急がないでほしいんだ。1979年にイラン革命があると1980年にイラク軍がイランにミサイルを撃ち込んだ。当初はイラク軍がイランに侵入したが1982年になると逆にイラン軍がイラクに侵入するようになった。イラン革命がイラクに波及するのではないかと危惧したアメリカはイラクを支援。結局、88年夏までに国連安保理の停戦決議を両国が受諾して、戦争が終結した。アメリカはイラン革命で失敗し、イラク軍を使ったイラン侵略戦争も失敗した。アメリカは連戦連敗を喫した。やはり自然の法理に反した外交政策は失敗するほかはない。
呑助 サダムはアメリカの力の限界を見て、アメリカを見くびり始めたんですかね。
侘助 それでアメリカは舐められてたまるかとサダム・フセインを叩く機会を狙っていたんじゃないのかな。1988年にイラン・イラク戦争が終結するとサダム・フセインは1990年8月クウェートに侵攻し、これを占領した。国連安保理はイラクに対して期限までに撤退するよう求めるが、フセイン大統領はそれに応じなかったため1991年1月、アメリカを主力とする多国籍軍がイラクを空爆し始めた。湾岸戦争の始まりだ。この時、アメリカの広告代理店が「クエート少女の証言」というビデオを作製した。ナイラなる15歳の女性が1990年10月10日に非政府組織トム・ラントス人権委員会にて行った証言なんだ。イラクによるクウェート侵攻後、イラク軍兵士がクウェートの病院から、保育器に入った新生児を取り出し放置し、死に至らしめた経緯を涙ながらに語った。この少女の証言に世界中の人々が騙された。

醸楽庵だより  246号   聖海(白井一道)

2016-03-26 14:59:16 | 随筆・小説

  中東問題(2)

侘助 アメリカ政府の対外外交政策は成功しない。なぜなら根本が間違っている。なぜなら絶えず悪いことをしようとしているから成功しない。意図が自然の法理に沿っていないからなんじゃないかな。
呑助 ワビちゃん、難しいことを言うね。
侘助 そうかな。人に良いことをしようと言うのが人間の自然なあり方なんじゃないかと思うんだ。今の中東情勢を考えるに当たって東アジアの歴史を考えて見るとアメリカのもっとも優れた政治家たちがベトナム戦争をした。ドミノ理論を掲げてベトナムを共産化させてはならない。ベトナムが共産化するとドミノ倒しのように東南アジア一帯が共産化してしまう。それを阻止するにはベトナムを何としても共産化させないためにアメリカは軍隊を派遣した。がしかし、世界最強の軍隊を持つアメリカが世界最貧国ベトナムに敗北した。これは歴史の奇跡なんだけれども、考えてみれば、当然のことだったんだ。他人の国の事に外国が干渉することは自然の法理に反しているからアメリカの敗北は当たり前のことだった。
呑助 どんなに強い国だって自然の法理に反することを行えば間違えるということでしようかね。
侘助 そうだと思うよ。現在の中東情勢を考えるにはイラン革命がなぜ起こったのかを振り返ってみる必要がある。
呑助 ホメイニさんが出てくる革命ですね。
侘助 アメリカの対イラン政策とはどのようなものだったかというと基本はイランの共産化阻止をどのように実現するということだった。イランの資源というとそれは?
呑助 石油ですかね。
侘助 そうなんだ。だから第二次世界大戦後、1951年、パフレヴィー朝のイランの首相、モサデグは、石油国有化を断行した。イランの石油はイラン人のものだとモサデグ首相はアングロ=イラニアン石油会社(AIOC)の資産の接収、戒厳令をしいてその操業を停止させた。こうしてイギリス国際石油資本に立ち向かった。がアメリカ軍の干渉によってモサデグは排除されてしまう。その後、パフレヴィー朝のパフレヴィー二世はアメリカの支援を得て白色革命を行った。
呑助 白色革命とは何ですか。
侘助 社会主義革命が赤色革命だとしたら資本主義的経済発展を進めたのが白色革命なんだ。
呑助 そうしてイランは豊かな国になったんですか。
侘助、豊かになった一部の人たちがいた。と同時に資本主義的経済の発展はイスラム教の世俗化を促進した。
呑助 経済の発展は女性のおしゃれやアメリカのポプュラー音楽などの流行でしようね。
侘助 アメリカではベトナム戦争敗戦後、民主党のジミー・カーター政権が誕生する。カーター政権発足後に国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任したのがブレジンスキーだった。彼はポーランド系ユダヤ人である。彼は徹底的な反共主義者だった。彼の狙いはソ連を崩壊させることだった。彼の戦略はソ連支配下にある中央アジアのイスラム諸国の民族主義を煽り、ソ連を揺さぶることだった。それには、まずイランのイスラム教が世俗化していくことに不満を持つイラン人イスラム教徒たちを支援し、その民族主義の心をくすぐることだった。こうしてイスラム教の世俗化に不満を持つ民衆の反パフレヴィー運動に火を付けた。ブレジンスキー国家安全保障問題担当大統領補佐官はパリでホメイニ、イスラム教シーア派最高指導者と度々合い、パフレヴィー朝打倒について話し合った。アメリカの支持を得たホメイニはパフレヴィー二世打倒をイラン民衆に訴えた。パフレヴィー二世は亡命し、パフレヴィー二世を守っていたイラン人たちはアメリカに亡命し、金持ちだった彼らはロスアンジェルスの高級住宅地ビバリーヒルズの住人になった。
呑助 へぇー、イラン人がビバリーヒルズの住人になっているんですか。
侘助 ビバリーヒルズ住人の三分の一はイラン人らしいですよ。孫崎享さんが岩上さんのインタヴューに応えて話していたよ。



醸楽庵だより  245号   聖海(白井一道)

2016-03-25 12:40:43 | 随筆・小説

  中東問題 (1)

侘助 今、中東情勢は混迷を極めているように見えるよね。だが、もつれた糸を直すのは大変だけれども、もつれた理由は簡単なことのようだ。
呑助 私の所のお客さんの中にはいろいろ話す方がおりますけれどもね。私には何が何だか分かりませんね。
侘助 一番のポイントはイスラエルという国の安全保障のようなんだ。
呑助 パレスチナ難民問題ということですか。
侘助 そういうことであるとも言えるが違ってもいるようなんだ。イスラエルは周りをアラブの国々に囲まれているからね。それらの国々と仲良く生存していければいいのだが、仲良くできない。その一番の理由がパレスチナ難民問題があるからなんだ。
呑助 なるほどね。
侘助 イスラエルという国の成り立ちをノミちゃん知っている。
呑助 イスラエルはユダヤ人の国なんでしよう。
侘助 そうなんだ。ユダヤ人入植者がパレスチナに住むアラブ人を追い立て建国した国なんだ。アメリカという国の成り立ちと共通するものがあるんだ。ネイティブ・アメリカンと云われる人々が住む土地にヨーロッパで迫害を受けた新教徒や貧しい人々が新生活を求めて植民し、先住民を追い立てた人々によって建国された国がアメリカだから、イスラエルもアメリカも同じような成り立ちを持つ国なんだ。
呑助 先住民にとってはどちらの国も許せないと、いうことですね。
侘助 アメリカもイスラエルも植民の歴史しかない国なんだ。古い伝統のない国だから、古い慣習や文化に阻まれることがないから自分たち自身の考え一つでいくらでも発展できる環境に恵まれた国なんだ。
呑助 古い文化を尊ぶ人が少ない国なんですね。
侘助、そうなんだ。「マニフェスト・ディスティニイ」というスローガンを掲げて西部開拓をしたんだ。
呑助 「マニフェスト・ディスティニイ」とは何を言っているんですか。
侘助 「明白なる天命」などと訳されている言葉なんだ。西部開拓、植民は神から植民者に下された明白な命令、運命なんだと、言う意味だ。先住民のことを何も考えない勝手な考えなんだ。自分たちは文明の伝道者なんだと自ら唱え、野蛮な先住民を殺して文明化したと言っている。これこそまさに野蛮人の振る舞いをした「文明人」、アメリカ人だったんだ。同じようにイスラエルのユダヤ人たちも自分たちは神に選ばれた民、神が約束した土地に植民し、建国した。これをシオニズム運動と言ったんだ。アメリカとイスラエルとの決定的な違いはアメリカの先住民たちと比べてパレスチナの先住民たちは高度な文化を持つアラブ人たちだった。
呑助 アメリカには広大な原野が広がっていたでしょうが、パレスチナにはアメリカと比べれば人口密集地にユダヤ人たちは入植したんでしようからね。
侘助 そうなんだ。だから膨大なパレスチナ難民が誕生した。自分たちの土地を奪われた難民たちが自分たちの土地を奪い返す運動を始めたのは当然なことだった。他人の土地を勝手に奪うことは犯罪だよ。このアラブ人、パレスチナに住む人々の土地を奪った人々は犯罪人だよ。
呑助 アメリカはイスラエルを支援しているんですよね。
侘助 アメリカ人たちも先住民の土地を奪った犯罪人たちだったからね。同じ植民者としてのシンパシーみたいなものがあるのかもしれないな。
呑助 そうかもしれませんよ。
侘助 アメリカは世界最大にして最強の軍事力を持つ国だからね。アラブ族同士を仲たがいさせ、争わすことによってイスラエルの安全を確保しようとしてきた。仲たがいさせるためにイスラム教の宗派間対立を煽ることによってイスラエルの平和を維持してきた。このアメリカの中東政策を調べることによって中東のもつれて紐を解くことができるようだ。

醸楽庵だより  244号   聖海(白井一道)

2016-03-24 15:37:26 | 随筆・小説
   
  ノーベル経済学賞受賞者スティグリッツ氏はtppに反対

侘助 三月十六日(水)、総理官邸でノーベル経済学賞を受賞したコロンビア大学教授のスティグリッツ氏がtppには反対だと安倍総理に面と向かって話したそうだよ。
呑助 アメリカの大学の先生がtppに反対だと安倍総理に話したんですか。
侘助 新聞をよく読んでいるノミちゃんが知らないのは大手新聞もテレビも全然報道しなかったらしいからね。今、大手メディアは安倍政権の政策に反するような報道は一切しないようだよ。
呑助 消費税の増税より格差を是正し、需要を喚起した方がいいというようなことを言ったという報道はあったように思いますよ。
侘助 それが現在の新聞の限界なのかもしれないなぁー。
呑助 そんなに今、言論の規制が厳しくなっているんですか。
侘助 自主規制じゃないかと思っているんだけれどね。
呑助 スティグリッツさんという方はアメリカの大学で日本人の先生について勉強された方なんですか。
侘助 そうらしいよ。宇沢弘文という経済学者に付いて勉強したようだ。
呑助 日本人経済学者がアメリカ人学生に経済学を教え、その教え子がノーベル経済学賞を受賞するなんて、日本人としてもちょっと誇らしく思いますね。
侘助 でも、今、ノーベル経済学賞というのは、どれほどの権威があるのか、疑問に思う。先日、京都大学名誉教授の本山美彦さんが言っていたよ。今、経済学というのは金儲けの手法を学ぶようなものになってしまっているとね。
呑助 経済学というのは金儲けの手法ですか。
侘助、故宇沢弘文は公正、環境、平和の3つを重視した経済学者だったそうだ。シカゴ大学で教鞭をとっていたとき、同僚に新自由主義を唱えたフリードマンがいた。フリードマンはある会社の株が値上がりする情報を得て、買いに行ったら売ってくれなかった。そのことをフリードマンが怒っていた。そのフリードマンの姿を見て、シカゴ学派との縁を切ったと宇沢東大教授が何かに書いていたのを覚えているよ。
呑助 宇沢さんという経済学者は禁欲的な倫理観をもっていた方なんですね。
侘助 本山美彦先生という方も厳しい倫理観を持った方のようだったよ。人間は欲望を制御する力を持たねばならないと古代ギリシアの哲学者、アリストテレスの言葉を引いて話していたからね。私も昔、聞いたことがある。人間は苦しみには耐えられるものだが快楽には耐えられないとね。これは同じアリストテレスの言葉のようなんだ。
呑助 分かりますね。美味しい料理を目の前にして空腹に耐えることはできないでしようね。
侘助 アメリカの議会はtppを批准しないとステグリッツ教授ははっきり言ったというから本当なんじゃないかな。
呑助 tppを推し進めている安倍政権とは何なんでしようね。アメリカから言われてしているのじゃないのですか。
侘助 オバマ米大統領は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)合意に関する声明で、「世界経済のルールを中国のような国に書かせるわけにはいかない」発言していたがね。これはアメリカの一部の意見であって多数の意見ではないのかもしれないな。
呑助 ほんとに一部の意見なんでしようかね。
侘助 アメリカのグローバルな多国籍企業経営者や株主たちの意見なんじゃないかな。
呑助 日本の場合もそれじゃ、日本のグローバルな多国籍企業の経営者やその株主たちが主張している条約がtppなんでしようかね。
侘助 そうなんじゃないかな。安倍政権というのはグローバルな多国籍企業の代理人というか、それらの企業に仕える政治家なんじゃないかと思う。日本国民のことなど少しも考えない政治家だよ。

醸楽庵だより  243号   聖海(白井一道)

2016-03-23 13:20:47 | 随筆・小説

  世界の富豪85人の資産が世界の半分の富を持つ

侘助 ノミちゃん、オックスハムという国際NGO団体を知っているかい。
呑助 何をしている団体なんですか。
侘助 1942年、ナチス軍の攻撃で窮地に陥ったギリシア市民に、オックスフォード市民5人が、食糧や古着を送ったことが、オックスファムの始まりのようだ。その後、世界の人々が貧困から抜け出し、自らの力で豊かになるため、世界の様々なところで活動をしている団体のようだ。この国際NGOが2014年に衝撃的な事実の発表をした。
呑助 どんなことを発表したんですか。
侘助 その前にダボス会議という全世界の有力な政治家や学者、グローバル企業経営者が集まって話し合う世界経済フォーラムがあるんだ。毎年、スイスのリゾート地、ダボスで寒い冬の一月に開催される。
呑助 へぇー、そのダボス会議では何が話し合われるんですか。
侘助 そこで話し合われ、コンセンサスが得られたことが世界経済に大きな影響を与えているようなんだ。
呑助 どんなことが話し合われているんですか。
侘助 新自由主義的な経済政策を世界的にどのように進めていくかという事のようなんだ。経済学者の植草一秀氏は「強欲巨大資本の年次集会」と揶揄している。日本の強欲資本の代弁者竹中平蔵氏はダボス会議に出席する代表的な「学者」の一人らしい。
呑助 その強欲巨大資本の年次集会、ダボス会議の直前にNGOオックスハムはどんなことを発表したんですか。
侘助 世界の富裕層の上位1%である85人の総資産が、全世界約71億人の半分の資産を占めるという事実をダボス会議に先立ち発表したんだ。調査報告書によると、富裕層の上位85人の資産総額は110兆ドルで、日本円にして1京円を超える計算になる。つまり、約36億人分に匹敵するということだった。、
呑助 もの凄い格差が世界的に広がっているんですね。
侘助、格差というものが国境を越えて広がっているということなんだ。格差拡大が最も豊かな国だと云われているアメリカで貧困層が増大している。EUにあっても、日本でも貧困層が増えている。
呑助 確かに身近にもいますね。東京のM大を卒業し、中堅会社に入社し、その後二度ほど転職した知り合いがいるんですよ。その方は定年退職後、一人でアパート住まいをしていましてね、聞くところによるとお正月もご飯一膳と鰯の缶詰で元日を迎えたと言っていましたよ。
侘助 そうですか。私も聞きましたよ。外見では一戸建ての家に住み、何不自由なく過ごしているように見えても一日三百円ぐらいで生活している人がけっこういますよという話を近所の人から聞きましたね。
呑助 まぁー、私らの時代はいいとして、私らの子どもたちはどうなるんですかね。年金はもらえないと思っているようですからね。
侘助 そうなんだよね。年金の基本は仕送り方式だから、少子高齢化だと仕送りする子どもたちが少なくなっていくので、私らの子供たちは直観的に今のままでは年金は無くなると思うんでしよう。
呑助 少子高齢化なんだから、年金が無くなってもしょうがないでしょと言われると困りますね。
侘助 世界一の大金持ち、ビルゲイツ氏は税金の支払いが嫌いのようです。好きなのは慈善事業だと言っています。貧しい人々に恵むのが好きらしい。税金は払わないが施しはする。
呑助 ビルゲイツを写真で見ると優しそうな顔をしていますね。
侘助 自民党の大金持ち、総理経験者のA氏などと比べるとそうですね。
呑助 日本人の金持ちは税金の支払いも嫌いだし、施しもしないのかもしれませんよ。
侘助 嫌々ながら税金を払い、貧乏人を見下げている。

醸楽庵だより  242号   聖海(白井一道)

2016-03-22 15:51:20 | 随筆・小説

 トランプ旋風をどう見るか

242号 ブログ原稿 3/22
侘助 アメリカ大統領選挙ではトランプ氏が共和党では独走している感があるね。
呑助 党員集会に反トランプの人が紛れ込み、殴り合いが起きたようですね。
侘助 ワシントンポストが反トランプの社説を掲げたようだよ。
呑助 共和党としてもあまりに過激な人種差別は困るということなんじゃないですかね。
侘助 アメリカでは手の小さな人は下半身のものが小さいという諺があるらしい。共和党の対立候補からトランプ候補は手が小さいと揶揄されるとトランプ候補は私の下半身のものは大きいと言い返したそうだよ。
呑助 トランプさんは下品な人でもあるんですかね。
侘助 そうなんじゃないかな。しかし思い切った差別発言は日本の在特会を思わせるなぁー。
呑助 トランプさんがアメリカ大統領になるとアメリカの品位が落ちるでしようね。
侘助 共和党主流を支持する人々が反トランプ運動をしかけているんじゃないのかな。
呑助 共和党主流派とはどのような人々なんですか。
侘助 金融関係の巨大企業経営者たちなんじゃないかな。グローバル企業の株主たちや新自由主義経済を推し進めようとしている人たちなんじゃないかなと思っているんだけどね。
呑助 新自由主義とはどのような考えなんですかね。
侘助、企業の自由な競争を放任することが経済を活性化させるという主張のようだよ。。
呑助 自由な競争を放任すると強者にはいいけれども弱者には厳しいですね。
侘助 弱者を切り捨てていくことが経済を活性化させるということらしい。
呑助 だから福祉を削っていくことが経済を活性化するということですか。
侘助 福祉の充実をはかると財政が逼迫してくる。だから小さな政府、福祉を切り捨てる。これが経済を成長させるという主張かな。
呑助 日本もアメリカも一緒ですか。
侘助 資本主義国はどこでも同じようだよ。先進資本主義国の財政が逼迫する理由はグローバルな巨大企業が税金を支払わないということも理由の一つのようだよ。
呑助 グローバルな巨大企業は税金を払わないんですか。
侘助 タックスヘイブンと言ってね。カリブ海にあるケイマン諸島では法人税が無いに等しい。だからこれらの諸島に本社を移し、そこに企業の収益を集中するようにするとアメリカ合衆国に税金を納めなくとも済む。岩波新書の『タックスヘイブン』を読むと全世界の富の四分の一は税金逃れをしていると書いてあったよ。これじゃ、先進資本主義国の財政が逼迫するのも当然だよ。
呑助 合法的な脱税ですね。
侘助 中国なんかでは厳しくタックスヘイブンを取り締まっているようだがね。不正蓄財し、外国に逃げた者は捕まえ、厳しく罰しているね。
呑助 アメリカの貧しい人々の怒りをトランプさんはメキシコ人やイスラム系の人々に向けているんですかね。
侘助 それで人気があるんじゃないかと思うけどね。
呑助 でもトランプさんじゃ不安だというのがアメリカの共和党支持者の多数派だということなんですかね。
侘助 これからネガティブキャンペーンが始まるようだ。これに莫大なお金をかけて、トランプ追い落としがはじまるかも知れないらしい。
呑助 そのお金は誰が出すんですか。
侘助 トランプを追い落とす勝手連がアメリカにはあるらしい。それをスーパーパックというらしいんだ。日本のメディアではほとんど報道されることはないようだが、このアメリカ版勝手連が中心になって反トランプ運動が始まりだしているという話を本山美彦京都大学名誉教授の方が話していた。どんな結末になるのか、アメリカ大統領選挙は目が離せない状況のようだよ。