醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  289号

2017-01-11 14:42:27 | 随筆・小説

 三重の名酒「酒屋八兵衛」を楽しむ

侘輔 今日のお酒は何回か、楽しんだお酒だ。
呑助 お酒は何ですか。
侘助 三重県のお酒なんだ。
呑助 三重県だけじゃ、思い出すお酒はないなぁー。
侘助 春日部あたりではほとんどなじんだ酒はないよね。坂長さんが探してきたお酒なんだ。
呑助 あっ、思い出しましたよ。「酒屋八兵衛」じゃないですか。
侘助 そうですよ。今日は「酒屋八兵衛」の特別純米・無濾過生原酒の酒を楽しむ予定なんだ。
呑助 伊勢志摩サミットの時にどうだったんですか。
侘助 乾杯の酒は「作(ざく)」だったかな。「酒屋八兵衛」の酒は食中酒に採用されたようだよ。
呑助 へぇー、伊勢志摩サミットで採用されたお酒なんですか。
侘助 伊勢志摩サミットの一日目の晩餐会の食中手酒が「酒屋八兵衛」の純米大吟の酒だったようだよ。まぁー、今日はその同じ造りの酒じゃないけれどね、一切フィルターで濾すこともしていなし、炭で濾過することもしていない醪を絞ったまんまのお酒本来の味が楽しめるお酒のようだよ。
呑助 本物の日本酒ですね。
侘助 生だしね。火入れをしていない。
呑助 火入れとは、なんでしたっけ。
侘助 醪を絞って清酒にするんだけれどね。そのまんまだと雑菌が入ってお酒が腐敗する危険性があるんだ。だから螺旋状の細い管の中に絞ったお酒を通し、七〇度前後のお湯の中に漬けることを火入れというんだ。こうして雑菌を殺す。まだ生きていた酵母菌も死滅する。こうして出荷するんだ。
呑助 だから生酒の場合、少し炭酸を感じることがあるんですね。
侘助 そう、酵母が生きていると炭酸とアルコールを吐き出しているからね。
呑助 原酒とは、水で薄めていないということでしたよ。
侘助 そうだよ。純米酒だから醸造用アルコール、いわゆる甲類の焼酎で薄めていないしね。
呑助 醸造用アルコールというのは、焼酎ですか。
侘助 最近になって焼酎の場合、「本格焼酎」とラベルに書いてあるものが増えてきたが、その焼酎は皆、昔の乙の焼酎だね。
呑助 甲の焼酎というのは何なんですか。
侘助 醸造用アルコールというのが甲類の焼酎ということかな。宝焼酎とか、「純」、「ジンロ」とかあるでしよう。二回蒸留して、アルコールだけになった原酒を水で薄めたものが甲類の焼酎だよ。
呑助 本格焼酎とか、乙類の焼酎というのは何なんですか。
侘助 芋焼酎とか、麦焼酎とか、黒糖焼酎とか、いろいろあるでしょ。あれが乙類の焼酎ですよ。
呑助 泡盛もそうですか。
侘助 泡盛も蒸留酒に違いはないが、焼酎ではない。ウイスキーも蒸留酒に違いはないが、焼酎ではないように泡盛は泡盛かな。
呑助 じぁー、日本酒に宝焼酎を入れて飲んでも全然OKですね。
侘助 速く酔いたいと思った時には、日本酒に焼酎を入れて飲むと美味しいかも。一昔前、野田には醤油樽を造る桶職人がいた。彼らは味醂に焼酎を入れて飲んでいたという話を聞いたことがあるよ。その話を聞いて実際にやってみたことがある。飲んでみて仲間に飲ませたら、日本酒と間違えた。