高校の部活動顧問を務める教職員には土・日・祭日がない
ある公立高校のバスケット部の顧問には年間、休める日は正月・お盆の二日だけである。このような話を聞いたことがある。またある公立高校の野球部顧問をしている日本史担当の教員は採用された時から休んだ日がないという話を聞いた。その彼は地元の高校の野球部出身である。大学は早稲田大学に進学した。もちろん野球部に入部した。しかし四年間、六大学野球部公式戦に出場した経験はない。早慶戦の華やかな舞台を経験することはなかった。四年生になってもグランドでトンボを曳いて、整備することもあった。甲子園野球で名前を得た学生は一年生の時から早慶戦の公式戦に出場する。その光景を見て、四年間野球部に在籍した。グランド整備などすることもなく、華やかな女子の子が合宿所に迎えに来ると車に乗って遊びに行く姿を見て、四年間過ごした。
四年生になると野球部監督から就職はどうすると聞かれた。私は郷里に帰り、地元の公立高校教員になり、野球部の顧問になるつもりですと話すと、お前の郷里には何人もの先輩がいる。早速話しておこうと、いうことになった。自分自身も出身高校の野球部監督であった恩師に連絡をとった。恩師は喜んで採用を引き受けてくれた。恩師もまた早稲田大学の野球部出身の公立高校社会科の教員であった。
県高等学校野球連盟としての推薦を受け、公立高校教員採用試験を受けると見事、合格した。合格するとある高校の校長から連絡があり、県立高校の教員として正式採用となり、四月から社会科日本史の教員となると同時に野球部顧問を命じられた。
大学の監督に報告すると喜んでくれた。優れた選手を育て、是非大学に推薦するよう依頼された。彼が配属された公立高校は野球が盛んな高校ではなかった。野球の監督の成り手のいない高校であった。そのような高校が彼の希望でもあった。自分の力でこの高校の野球部を強くしたい。この高校の野球部から早稲田大学の野球部に進学させられるような生徒を育てたい。これが夢であった。かれは誰よりも早く午前6時には学校に付く。授業の始まる前に朝練習を見守る。午後4時にはグランドに出て、練習を見守る。土曜、日曜も野球の練習をする。夏休み中はお盆の時に一日のみ休暇を取った。冬休み中の正月元旦には野球部員全員に年賀状配布のアルバイト要請が郵便局からあるので、その郵便局に出向き生徒たちに事故のないよう注意を施し、アルバイト代は野球部費にいれるよう促す。野球部はお金がかかる。硬球が高い。練習試合にかかる費用がいる。バスを仕立て、道具を運ぶ。その費用を学校が全部負担してくれるわけではない。父母に負担を強いることもできない。強い野球部を実現するにはお金がかかる。野球部顧問が自らバスを買い求め、運転し、練習試合に行く教員がいるくらいだ。
だから、部活動指導費として割増賃金を求めた句もなるわけである。
部活顧問、割増賃金求め提訴「生徒下宿、私生活なし」 朝日新聞社 デジタル版 2020/09/30
長崎市の私立高校職員の50代女性が高校を運営する学校法人を相手取り、顧問として陸上部の活動の指導をした休日や時間外の割増賃金など計約1600万円の支払いを求める訴訟を長崎地裁に起こした。提訴は10日付。
訴状によると、女性は2014年度に陸上部の外部コーチになり、15年度から高校の事務職員として労働契約を結んだ。各部の顧問には特待生の枠が割り当てられ、女性は休部状態だった陸上部を再建するため離島などから生徒を勧誘。15年度以降、最大で3人を自宅に下宿させたうえで午前5時から食事をつくり、送迎も担当。「私生活の時間もほとんど持つことができない、休日も問わない」と訴えている。
学校法人の職員給与規定では時間外や休日に働いた場合、実労働時間に基づく割増賃金を計算して支払うことになっているが、女性には「超勤手当」として月1万4千円弱が定額で支給されていたと主張。18年度から2年分の未払い割増賃金約905万円と、制裁金として付加金約674万円の支払いを求めている。
学校法人の担当者は取材に対し、「弁護士と協議し、主張すべきところは主張していきたい」と話した。
公立校の教職員は給与特措法により時間外手当や休日手当は支給されず、月給の4%にあたる額が上乗せされている。(榎本瑞希)
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