--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

コンロ講習

2006-05-05 | 南極だより・講習訓練
今日は子どもの日でした。
あちこちで鯉のぼりが見えます。
昭和基地でも鯉のぼりをあげたのだそうです。
お子さんのいる隊員さんは、お子さんの顔を思い浮かべているのでしょうね。
では、渡井さんからの南極だよりです。
(後半追記しています5/8)
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2006年5月4日(木) 晴れ コンロ講習

宿泊を伴う野外活動では調理の必要がある。
テントを使うことはまずなく、ほとんど雪上車の中なのだが、雪上車の中にキッチンが備えられている訳でもなく、携帯用のコンロを使用する必要があるのだ。
今日はその講習が行われた。
昭和基地で使用するのは灯油コンロだ。
この手のストーブ(日本ではこのような野外調理用のコンロは、コンロというよりストーブと言った方が通りがよい)の日本での主流はEPIやPRIMUSなどのガスカートリッジ式で、長期の山行やキャンプなどでもホワイトガソリンを使用するコールマンなどのガソリンストーブが多く使われる。
もっとも最近は様々な燃料を使用できるマルチフュエルタイプのストーブもあるようだ。
灯油ストーブは以前は良く使われてきたようだが、最近ではあまり使われない。
灯油ストーブの代名詞でもあったOPTIMUSも生産中止になってしまった。
現在、マナスルとパープルくらいしかないようだ。
灯油ストーブの利点はその安全性だろう。
灯油はガソリンに比べて発火点が高いので危険性はだいぶ減る。
昭和ではさらに灯油の方が調達しやすいということもある。
指定燃料はJet A-1だが、JP5でもいけるはずだ。
昭和で使われているのはシングルバーナーと、2バーナー(ダブルとはいわないらしい)の2種類。
最初にシングルバーナーの使い方を教えて貰う。
講師はもちろん森さん@FAだ。
1) まずは燃料補給。タンクの端についている給油口から灯油を入れる。
2) 入れた後は給油口のキャップを閉め、その横の調節弁を開けておく。
3) タンクのヘッドのキャップをはずしてポンプハンドルにつける。
4) ヘッドをスパナでタンクにつける。
5) メタを燃やしてヘッドをプレヒートする。燃料の気化が目的。
6) メタが消える寸前調節弁を閉め、ポンピングを行うとプレヒートの熱で着火する。

火力の調節はタンクの内圧を変えて灯油を押し出す力を調節する仕組み。
調節弁(減圧)とポンピング(加圧)で行うのは、慣れない人には難しいかもしれない。

僕もメタこそガソリンストーブのホエーブスで使ってはいたもののポンピングの必要な機材は初めてだ。
2バーナーも使ってみた。
これは見た目は一般家庭にあるガスレンジと変わらない箱型だ。
大きく設計に自由度があるためか操作方法は比較的簡単。
1) やはり燃料補給。
2) 給油口のキャップを閉める。調整弁はついていない。替わりに?圧力計がついている。
3) メタでプレヒートを行う。
4) メタが十分燃えてヘッドが暖まったらポンピングを行ってタンクの内圧を0.2MPaにする。
5) 火力調節ハンドルを開いて火をつける。火力調節もこれで行う。
これは灯油の出方を調整するために燃料噴射口内部をニードルが上下する構造になっているからだ。

#2バーナーコンロ
さて、ためしにご飯を炊いてみた。
使う容器はなんと圧力釜。
重量があって嵩張るのだが、内陸(=気圧が低い)へ行った時などは圧力釜でないと上手く炊けないからなのであろうか。
米は無洗米で、水はその1割増し。
シュウシュウいうようになったら火力を弱めてその状態を保つようにし4分半、さらにその後12分蒸らすのだ。
これでできあがり。
昼食に食べてみたが、若干おこげがあるもののまぁ合格点ではないだろうか。
野外では美味しく食べられるに違いない。


-----本日の作業など-----
・コンロ講習
・論文
・CH4計微調整
・HVS充填
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・くるくるバー

<日の出日の入>
日の出  9:16
日の入  15:20
<気象情報5月4日>
平均気温-12.8℃
最高気温-9.8℃(0027) 最低気温-15.8℃(1658)
平均風速5.1m/s
最大平均風速13.1m/s風向ENE(0010) 最大瞬間風速16.5m/s風向ENE(0039)
日照時間 1.2時間

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野外料理はキャンプをやっていたため、小学生のころから経験があるけれど、当時はずっと薪を焚いて作っていました。
仕事で使うようになってからは、専ら使い勝手の良いガスカートリッジのものばかりだったので、ポンピングをするものは友人が使っているものを近くで見たことがあるだけです。
見た感じはけっこう簡単そうにはしていましたが実際にはどんな感じなのでしょう?
南極だよりを読むとポンピングで加圧すると書いてあります。
ポンピングの意味を初めてしり、思わず納得です。
いくつかもう少し詳しく分かりたいこともあるので、この後は後日もう少し書き加えます。

<以下5/8加筆>
だんだん思い出してきました。
かつて、友人と西表島の横断(縦断?)をした時に使っていたのはガソリンか灯油かは分からないけれど、ポンピングをするものでした。
思いがけず大きな火が出て驚いたのを思い出しました。
その時は材料を切る係りで、ストーブをよく見なかったことを今後悔しました!
そういえば、北海道のキャンプ場でもライダーさんがホワイトガソリンのストーブを使っていました。
周りで使っていた人は意外と多かったのかもしれません。
そうか、薪→ガスカートリッジというのは、手間を考えると一足飛びに楽なほうへきてしまった感じだったのですね。

灯油ストーブの利点は渡井さんが書いているように、安全性にあるようです。
引火点が高く気化しにくいので、こぼれても簡単には火がつかないのです。
ガソリンの引火点が-40℃ほどなのに対して灯油は35~50℃と書かれています(知らなかった)。
(メチルアルコール-1~32℃、軽油50~60℃)
ぼんやりしている私は、火がどうやってついているか?なんてことは普段考えることがなく、引火と発火の違いもよく分かっていなかったのですが、そういわれて考えてみると、燃料は気化させて火をつけるんだったなぁと思い出したのです。
灯油のファンヒータも気化器で灯油を気化させて火をつけるのですよね?
ブラックボックス(そう思っているだけ)になっているファンヒータと違って、灯油ストーブというシンプルな道具は気化するという作業を自分で行うものなのだなぁと感心してしまいました。
原理なんて分からなくても使えるのかもしれないけれど、分かって使うとさらに面白い?というか、調子が悪くなった時に自分でメンテナンスができる・・かもしれない(ファンヒータは分解したくないな)。
それは渡井さんが先日CH4計のトラブルを解決したのと一緒ですよね?(ずっと複雑だけど)

さて、扱い方ですが「メタを燃やしてヘッドをプレヒートする」と書いてあり、ヘッドのところを温めるのは分かっていたのですが、メタって何?だったのです。
メタはメタノール(固形?)のようです。
旅館の食事で一人用鍋物などを温める時に使われる薄いピンク色の固形燃料みたいなもの?
そういうもので温めていたとは知りませんでした。
だんだんやってみたくなってきましたよ。
こればっかりはやってみないことには分からないですものね(勢いあまって今すぐ購入しないように気をつけよう)。

A-1とかJP-5とか、どういうものか分からなかったので、燃料のことについてもう少し調べてみました。
A-1はASTM(アメリカ材料試験協会)のJet A-1のことで民間旅客機や小型ジェット機が使用する燃料。
JP-5はMIL規格で、空母艦載機が使用する高引火点(61℃以上)のジェット燃料(引火点がさらに高いのね?)。
昭和基地では一般に使われている日本工業規格JISの白灯油(1号灯油)ではないのですね!
しかも、航空燃料だったとは驚きの連続(航空機が灯油で飛ぶということを知らなかったのでさらにビックリ!)。
ごはんを作る時も空を飛ぶ時も同じ燃料を使うなんて、考えもしませんでした。

圧力釜で炊くご飯はおいしいです。
一人分でもおいしく炊けるので、ときどき無水鍋や圧力釜でご飯を炊きます。

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