--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

クレバス講習会

2006-10-11 | 南極だより・講習訓練
八幡平に行きました。
晴れていたはずなのに、風が強くどこからともなくガスがあっという間にかかって真っ白になってしまいました。
路線バスに揺られながら見た紅葉はとても美しかったです。
盛岡では、思いがけず「南極」をきっかけに知り合った方とお会いすることができ、機関銃のごとくしゃべりまくりました。
隊員さん以外で観測隊の話題で数時間も話ができる人には出会ったことがなかったので、それはそれは楽しかったです。
私が爽快になった理由は、実はここにもあったのではないかと思っているのです。
それでは、渡井さんからの南極だよりです。
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2006年10月10日(火)曇り クレバス講習会

今週後半には5回目のS17へのオペレーションが行われる。
ドラム缶や橇の掘り起こしは終了したので作業量自体はだいぶ楽だ。
(※そうなんです、まだアップしていないのですが、前回のオペレーションでドラム缶も橇も全部掘り起こしたそうなのです)
ということもあって千田さん@地学とのジョイントオペレーションとなった。
人員不足のこの時期、別々にパーティを組むとさらに人員不足になってしまうので、一緒のパーティにしましょうということになのだ。

千田さんのオペレーションにはS16とS15地点の間で行うGPS測量がある。
S16からそれほど下る訳ではないのだがなにしろ大陸の縁辺部。
クレバスの危険性も否定できない。
大丈夫と思うけれど、念のためクレバス講習会を開きましょうということになった。
もちろん先生は森章さん@FAだ。

講習会は基地前の雪上車置き場で行われた。
まず第一に支点の取り方。
今回はスノーバーとデッドマンを使ってみた。
アイススクリューを使うこともあるようだが、実際には雪上車に支点を取ることが多いであろう。
支点は2点、または3点取る。
その後、全ての支点に一本のシュリンゲをかけまとめるだが、一つの支点が抜けても大丈夫なように、シュリンゲを一回ひねる必要がある。
カラビナのゲートは上を向くように配置する。
なにかにぶつかった拍子にゲートが開いてしまわないようにするためだ。
またカラビナの前後方向は特に決まっていないとのこと。

さて次は自分にザイルをまきつける方法。
もやい結びで普通に腰に結わえた後、先に伸びているザイルを3重に肩掛けにする。
その後、腰に巻いたザイルの下から通して縛る。
ハーネスがあるときは肩掛けにする必要はないが、ザイルだけの時はこの方が加重が分散されて怪我しないのだそうだ。

3番目にはクレバス帯を歩く方法。
これは懸垂下降と同じようにザイルをカラビナにかけ一方を緩めながら進む。
他にも人がいるはずなので、確保は雪上車の近くにいる人が行うのだ。
これだと例え人がクレバスに突然落ちても僅かな力で止められる。

最後はクレバスからの脱出方法だ。
人が落ちてザイルを止めたら、シュリンゲを使って、とりあえず支点に固定する。
その後、アセンダーをザイルの先に付け動滑車の役目をさせザイルを手元に引っ張る。

とすると落ちた人は引っ張りあげられ、それに伴いシュリンゲが緩むのでまた新たに固定する。
その後はアセンダーを先に送って再び引っ張りあげるの繰り返し。
この方法で上げていくのだ。

これらの方法は机上では出発前の全員集合や安全講習会や何回か習った。
しかし実際にやってみないとわからないものだ。
大変勉強になる講習会であった。


#スノーバーやデッドマンでアンカーを取り支点にする

#もやい結びで体にザイルを結ぶ。
そのザイルを肩に3重に掛け腰のザイルの下から通して縛る


#クレバス帯を歩くときは確保をする

#アセンダを使って落ちた人を引き上げる

-----10月10日本日の作業など-----
・HVS Air濃度計算
・インレット雪落とし
・DAvis風速計 風杯交換
・クレバス講習会
・昭和基地NOW!!執筆
・HVS Airシステムコンタミ試験
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック

<日の出日の入>
日の出  4:49
日の入  19:31
<気象情報>
平均気温-14.6℃
最高気温-13.2℃(1259) 最低気温-20.2℃(2320)
平均風速2.4m/s
最大平均風速4.6m/s風向SW(0850) 最大瞬間風速5.8m/s風向SW(0845)
日照時間 0.0時間

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今度は何をやるの?
掘り出しが終わったというので、そう聞いたら「ジョイントオペなんだ」という返事。
南極だよりが届いてそういうことだったのかと分かりました。
体力勝負の掘り出しとはちょっと違ったオペレーションになりそうで、楽しみです。

南極大陸は、お椀を伏せたような形をしていて、雪が積もるとそれが氷床となり外側へ少しずつ移動していって大陸の端までいくと棚氷(たなごおり)になって海に張り出しているのですが、そのうち海に氷山となって流れ出します。
つまり、大陸の辺縁部は海に流れ出すために氷床がひび割れているところが多いとのことです。
その割れ目がクレバスです。
小さい割れ目はクラックと呼んでいるようですが、クレバスは人や雪上車がすっぽりと落ちてしまうくらい大きいものもあるようです。
辺縁部での作業は、そのような危険が考えられるので、クレバス講習会が行われたのですね。

まず、スノーバーとデッドマンって何?というところから始まったのですが、どうやらこれは雪に突き刺して支点を取るアンカーのようです。
調べてみるといくつかの形があるようでしたが、スノーマンはペグのように細長く、デッドマンは幅広いように見えました。
絵にするとこんな感じでしょうか?
(間違っているかもしれませんが)


シュリンゲというのはザイルをつないで輪にしてあるもの(もともと輪になっているものも売っている)。

写真は私の持っている(渡井さんからもらった)シュリンゲです。
次に紹介するカラビナとともに物を固定するのに使うことがありますが、あまり切実な役割をしたことはありません。
ダブルフィッシャーマン(テグス結びが二重になっている)という結び方をしてあり、引っ張れば引っ張るほど強く締まるようになっています。

カラビナはこういうもの。

最近はアクセサリーとしても売っていますが、本物はどれくらいの負荷に耐えられるのかが書いてあります。
現在はN(ニュートン)という単位で示されているようですが、私のは20年近く前のものなので、KGで示されています。
このカラビナは縦方向に650KGの負荷に耐えられるようです。
これも渡井さんにもらったものですが、やはり本来の役目をすることなくお守りとなっています。
これを整理してみるとこのようになります(たぶん)。

雪上車を支点に使えないときには、このように雪にアンカーを取って確保をするのですね。

昔、キャンプでもやい結びは最も大事な結び方だと教えられました。
簡単に結べるし輪の大きさが変わらないので、体に結ぶには最適です。
今回のもそうですが、救助活動の時には頻繁に使われる結び方のようです。
私はダブルフィッシャーマンの次にもやい結びを覚えました。
ハーネスがないときは、腰だけに結ぶのではなく、肩に三重に掛けるといいというのは覚えておくといざというときに役に立ちそうです。

アセンダというのは、登高器です。
一端を固定し、垂直につるしたロープを登るための器具で、ロープが上方向にしか移動しない構造になっているそうです。
私は使ったことがないので、未知の道具です。
でも、クレバスからの脱出では自分で登るというよりは引っ張り上げるという使い方なのでしょうか?
ということは、アセンダの向きは逆に取り付けるということなのかな?
いや、そういうわけではなくて、自分で引っ張らないだけなのか?
やってみないことにはよく分からないです。

今日の南極だよりは私にとって机上の講習になりました。
「実際にやってみないとわからないものだ」と渡井さんが書いているとおり、やってみることが大事なのでしょう。
私がクレバスに落ちるようなことはないと思いますが、山で何かあったときにとても役立ちそうなので、渡井さんが帰ってきたら実際の講習会をしてもらうことにします。

おことわり:
山のことは勉強中なのですが、大変未熟者のため今日の記事も間違いがあるかもしれません。
間違いを発見された方は、ご教授くださいませ。

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2 コメント

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ぜひぜひ。 (うみ)
2006-10-15 02:01:00
楽しいひとときをありがとうございました!

ぜひ,また,盛岡にいらしてくださいね。



…それにしても

この記事は特典満載デスネ。

(意味不明でゴメンナサイ。)
返信する
うみさま (み・くり)
2006-10-16 00:49:03
こちらこそ、ありがとうございました。

ぜひまた南極の話で盛り上がりましょう。



この記事、特典満載でしたか?

それはよかったです(^^)



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