今日はチェルノブイリ原発事故から20年目です。
当時この事故は遠い国で起こった大事故という感覚でいたけれど、その後何年かのあいだに自分の中での世界が広がり、ぐっと自分に引きつけて考えられるようになりました。
今、もっと遠い南極を見ながら、地球上のあらゆる物や生き物のことを考えています。
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年4月25日(火) 快晴 雪上車運転講習
午後から雪上車運転講習が行われた。
教習の機材はSM30S。
浮上型雪上車だ。
そして、先生は森山さん@機械担当。
雪上車に関してはプロ中のプロである。
運転講習と言っても始動前確認から始まって、エンジン始動、慣らし運転、運転方法、機材のダウンまで運転するための全てを行う。
始動前確認は3つの動作からなる。
1)エンジンオイルのレベル確認。
2)クーラントの確認。
3)ファンベルトへの雪の詰まりチェック。障害物があるとベルトが外れたり切れたりするのだ。
エンジン始動もやっかいだ。
日本にいるならキーをまわすだけであっさりかかるが南極では簡単ではない。
1)バッテリースイッチを入れ電源ON。
2)クランキングでエンジンを数回空回ししエンジンオイルを行き渡らせる。
クランキングは1回10秒程度、バッテリーの消耗を抑えるために20秒程度間隔をあける。
3)予熱を行う。
4)エンジンをかける。
5)アイドリングを10分程度行いエンジンオイルを十分に行き渡らせる。
慣らし運転も時間がかかる。
1)アイドリング状態で数10mの前進、後進を数回繰り返す。駆動系の油をなじませるためである。
2)アクセルでエンジン回転数を上げ、さらに前進・後進を繰り返す。
3)操向を半分ほど切って交互に斜めに前進・後進。
4)操向を一杯切って再び斜めに前進・後進。
ここまででおよそ30分くらいか。
運転は左側にある前後進切り替えレバーをニュートラルから前進に入れ、パーキングブレーキスイッチを切ることで走り始める。
エンジンの回転数は右足で操作するので車と同じだ。
走る向きは股の間にある左右の操向レバーを操作する。
通常の状態は一番前側にあり、手前に引くとブレーキがかかるようになっている。
左に曲がるときは左の操向レバーを手前に引き、右に曲がる時は右のレバーだ。
停止する時はアクセルペダルを戻すとたいてい止まるが、それでも止まらなければ操向レバーを両方いっぺんに引き、前後進切換えレバーをニュートラルに入れてパーキングブレーキスイッチを引っ張ればOKだ。
#雪上車は急ハンドル!?#
運転訓練の時は滑らかに進むように曲がる時は操向レバーをゆっくりと操作したが、この方法は実は良くないらしい。
渡されている「雪上車運転マニュアル」によると、推奨されている方法は円を描くようにクルクル回るのではなく、多角形を作るようにカクカク曲がる方法。
そうするためにはハンドル操作もラフに動かさなければならない。
揺れも大きくなり乗り心地は悪くなるのだがこれが正解なのだ。
理由は一つ。
履帯(キャタ)が斜めに力がかかるとタイヤから外れやすくなってしまうためだ。
確かにキャタは真っ直ぐ力がかかる方向には強くできているが、横方向はほとんどキャタの内側についた爪だけで支えられているので弱い。
なんだか常識が覆された感じだ。
#キャタの内側の爪
-----本日の作業など-----
・書類提出
・インレット雪落とし
・論文
・海氷状況定点観測
・雪上車運転講習
・酸素窒素比分析用大気サンプリング
・温室効果気体濃度分析用大気サンプリング
・二酸化炭素精製
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
<日の出日の入>
日の出
日の入
<気象情報4月25日>
平均気温℃
最高気温-10.4℃(0259) 最低気温-14.9℃(2336)
平均風速7.3m/s
最大平均風速10.9m/s風向ENE(0300) 最大瞬間風速13.6m/s風向ENE(0257)
日照時間 6.9時間
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きっと心待ちにしていたと思われる「雪上車」の運転。
私も映像で何度か見たことがあるものの、たいてい内陸旅行の映像なのでゴトゴトと真っ直ぐに進んでいる様子だけです。
始動や右折左折は見たことがないと思います。
まず始動ですが、30分もかかるのですか。
寒い地方ではもう少し違うのかもしれませんが、東京の冬ならエンジンをかけてしばらくアイドリングをして出発するというのが普通。
南極ではこんなにやることがあるのですね。
始動のことは考えたことがなかったので、ちょっと驚きでした。
私は自転車のしくみくらいしか分からないので、雪上車内部のイメージがわかないですが、渡井さんならバイクも自分で作り替えてしまうくらいだからオイルが行きわたっている様子までイメージができるのだろうなぁと思いました。
さて、気を取り直して運転のことを考えてみます。
運転のほうが少しは分かるかも。
と思ったものの、ハンドルといってもレバーであって円いハンドルではないのですね。
アクセルは普通の車と同じだけれど、ブレーキは手でかける(両手で?)。
曲がり方をみると右に曲がるときは右だけブレーキをかけて曲がるということ?
普通の車だと駆動輪の方向を変えて曲がっていくけれど、雪上車の場合はブレーキをかけた方のキャタピラを支点にクルッと向きを変える感覚でしょうか?
何とも単純なような無理矢理なような・・。
渡井さんが車両系建設機械(整地運搬積込掘削)の資格を取りに行ったときの話を聞いたときは足回りではなく、ブレードやアームなどの手回り(?)にばかり気をとられていましたが、同じような操作なのですよね?
#雪上車は急ハンドル!?#にもあるように、ハンドリングはずいぶん乱暴に思えるようなもののようです。
写真を見ると確かに爪のようなものがあるだけ。
曲がるときに内側になるキャタピラが動いているとよくないということですね?
「履帯(キャタ)が斜めに力がかかるとタイヤから外れやすくなってしまうため」と書いてあります。
外れ方としては、履帯からタイヤが飛び出してしまうような外れ方をするのでは思うのですがどうでしょう?
次は実際にお仕事で運転したら南極だよりで知らせてもらいたいですね。
運転の仕方ではありませんが、少しだけ今回の教習車「SM30S」のことを調べてみました。
この機種は南極だよりにも書いてあるように浮上型雪上車で、海氷上で使用するために作られた小型の雪上車だそうです。
海氷上での移動には常にタイドクラックやパドル付近の氷盤を踏み抜いて海に転落してしまう危険と隣り合わせです。
そのため、車体の軽量化を図り海に落ちても車内に入ってくる海水をポンプで排出できるようにして、脱出する時間を確保するように作られています。
沿岸調査などには欠かせない雪上車ですね。
「SM30S」はこのページの一番下をクリックすると詳しいことが分かります。
また、雪上車を作っている大原鉄工所サイトも合わせてご覧ください。
雪上車の歴史と内陸旅行に使用される大型雪上車「SM100S」の走行の様子も映像で見ることができます。
さらに、先日新潟日報に十日町で南極氷上車性能試験という記事出ていましたが、その新型車の全貌も見ることができます。
大原鉄工所は雪上車だけでなくマンパワーも南極に送り出しています。
47次にも活躍されている隊員さんがいらっしゃいます。
それが今回の教習の先生、森山さんなのですね!!
雪上車のことはもっと知りたいことがたくさんあります。
おいおい渡井さんを通して聞いてみようと思います。
当時この事故は遠い国で起こった大事故という感覚でいたけれど、その後何年かのあいだに自分の中での世界が広がり、ぐっと自分に引きつけて考えられるようになりました。
今、もっと遠い南極を見ながら、地球上のあらゆる物や生き物のことを考えています。
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年4月25日(火) 快晴 雪上車運転講習
午後から雪上車運転講習が行われた。
教習の機材はSM30S。
浮上型雪上車だ。
そして、先生は森山さん@機械担当。
雪上車に関してはプロ中のプロである。
運転講習と言っても始動前確認から始まって、エンジン始動、慣らし運転、運転方法、機材のダウンまで運転するための全てを行う。
始動前確認は3つの動作からなる。
1)エンジンオイルのレベル確認。
2)クーラントの確認。
3)ファンベルトへの雪の詰まりチェック。障害物があるとベルトが外れたり切れたりするのだ。
エンジン始動もやっかいだ。
日本にいるならキーをまわすだけであっさりかかるが南極では簡単ではない。
1)バッテリースイッチを入れ電源ON。
2)クランキングでエンジンを数回空回ししエンジンオイルを行き渡らせる。
クランキングは1回10秒程度、バッテリーの消耗を抑えるために20秒程度間隔をあける。
3)予熱を行う。
4)エンジンをかける。
5)アイドリングを10分程度行いエンジンオイルを十分に行き渡らせる。
慣らし運転も時間がかかる。
1)アイドリング状態で数10mの前進、後進を数回繰り返す。駆動系の油をなじませるためである。
2)アクセルでエンジン回転数を上げ、さらに前進・後進を繰り返す。
3)操向を半分ほど切って交互に斜めに前進・後進。
4)操向を一杯切って再び斜めに前進・後進。
ここまででおよそ30分くらいか。
運転は左側にある前後進切り替えレバーをニュートラルから前進に入れ、パーキングブレーキスイッチを切ることで走り始める。
エンジンの回転数は右足で操作するので車と同じだ。
走る向きは股の間にある左右の操向レバーを操作する。
通常の状態は一番前側にあり、手前に引くとブレーキがかかるようになっている。
左に曲がるときは左の操向レバーを手前に引き、右に曲がる時は右のレバーだ。
停止する時はアクセルペダルを戻すとたいてい止まるが、それでも止まらなければ操向レバーを両方いっぺんに引き、前後進切換えレバーをニュートラルに入れてパーキングブレーキスイッチを引っ張ればOKだ。
#雪上車は急ハンドル!?#
運転訓練の時は滑らかに進むように曲がる時は操向レバーをゆっくりと操作したが、この方法は実は良くないらしい。
渡されている「雪上車運転マニュアル」によると、推奨されている方法は円を描くようにクルクル回るのではなく、多角形を作るようにカクカク曲がる方法。
そうするためにはハンドル操作もラフに動かさなければならない。
揺れも大きくなり乗り心地は悪くなるのだがこれが正解なのだ。
理由は一つ。
履帯(キャタ)が斜めに力がかかるとタイヤから外れやすくなってしまうためだ。
確かにキャタは真っ直ぐ力がかかる方向には強くできているが、横方向はほとんどキャタの内側についた爪だけで支えられているので弱い。
なんだか常識が覆された感じだ。
#キャタの内側の爪
-----本日の作業など-----
・書類提出
・インレット雪落とし
・論文
・海氷状況定点観測
・雪上車運転講習
・酸素窒素比分析用大気サンプリング
・温室効果気体濃度分析用大気サンプリング
・二酸化炭素精製
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
<日の出日の入>
日の出
日の入
<気象情報4月25日>
平均気温℃
最高気温-10.4℃(0259) 最低気温-14.9℃(2336)
平均風速7.3m/s
最大平均風速10.9m/s風向ENE(0300) 最大瞬間風速13.6m/s風向ENE(0257)
日照時間 6.9時間
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きっと心待ちにしていたと思われる「雪上車」の運転。
私も映像で何度か見たことがあるものの、たいてい内陸旅行の映像なのでゴトゴトと真っ直ぐに進んでいる様子だけです。
始動や右折左折は見たことがないと思います。
まず始動ですが、30分もかかるのですか。
寒い地方ではもう少し違うのかもしれませんが、東京の冬ならエンジンをかけてしばらくアイドリングをして出発するというのが普通。
南極ではこんなにやることがあるのですね。
始動のことは考えたことがなかったので、ちょっと驚きでした。
私は自転車のしくみくらいしか分からないので、雪上車内部のイメージがわかないですが、渡井さんならバイクも自分で作り替えてしまうくらいだからオイルが行きわたっている様子までイメージができるのだろうなぁと思いました。
さて、気を取り直して運転のことを考えてみます。
運転のほうが少しは分かるかも。
と思ったものの、ハンドルといってもレバーであって円いハンドルではないのですね。
アクセルは普通の車と同じだけれど、ブレーキは手でかける(両手で?)。
曲がり方をみると右に曲がるときは右だけブレーキをかけて曲がるということ?
普通の車だと駆動輪の方向を変えて曲がっていくけれど、雪上車の場合はブレーキをかけた方のキャタピラを支点にクルッと向きを変える感覚でしょうか?
何とも単純なような無理矢理なような・・。
渡井さんが車両系建設機械(整地運搬積込掘削)の資格を取りに行ったときの話を聞いたときは足回りではなく、ブレードやアームなどの手回り(?)にばかり気をとられていましたが、同じような操作なのですよね?
#雪上車は急ハンドル!?#にもあるように、ハンドリングはずいぶん乱暴に思えるようなもののようです。
写真を見ると確かに爪のようなものがあるだけ。
曲がるときに内側になるキャタピラが動いているとよくないということですね?
「履帯(キャタ)が斜めに力がかかるとタイヤから外れやすくなってしまうため」と書いてあります。
外れ方としては、履帯からタイヤが飛び出してしまうような外れ方をするのでは思うのですがどうでしょう?
次は実際にお仕事で運転したら南極だよりで知らせてもらいたいですね。
運転の仕方ではありませんが、少しだけ今回の教習車「SM30S」のことを調べてみました。
この機種は南極だよりにも書いてあるように浮上型雪上車で、海氷上で使用するために作られた小型の雪上車だそうです。
海氷上での移動には常にタイドクラックやパドル付近の氷盤を踏み抜いて海に転落してしまう危険と隣り合わせです。
そのため、車体の軽量化を図り海に落ちても車内に入ってくる海水をポンプで排出できるようにして、脱出する時間を確保するように作られています。
沿岸調査などには欠かせない雪上車ですね。
「SM30S」はこのページの一番下をクリックすると詳しいことが分かります。
また、雪上車を作っている大原鉄工所サイトも合わせてご覧ください。
雪上車の歴史と内陸旅行に使用される大型雪上車「SM100S」の走行の様子も映像で見ることができます。
さらに、先日新潟日報に十日町で南極氷上車性能試験という記事出ていましたが、その新型車の全貌も見ることができます。
大原鉄工所は雪上車だけでなくマンパワーも南極に送り出しています。
47次にも活躍されている隊員さんがいらっしゃいます。
それが今回の教習の先生、森山さんなのですね!!
雪上車のことはもっと知りたいことがたくさんあります。
おいおい渡井さんを通して聞いてみようと思います。