--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

ミッドウィンター祭 2日目

2006-06-27 | 南極だより・生活
この非常に長い論文のような?南極だよりは、思いがけず好評なようです。
描写が細かくて、文字から頭の中で映像にするまでに時間がかかるものの、ぼんやりとではなくはっきりとその様子が分かるのです。
とにかく、余韻がさめないうちにアップしなくては。
それではミッドウィンター祭の2日目です。
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2006年6月21日(水)晴 ミッドウィンター祭 2日目

2日目のブランチは1居2階による焼きそばだ。
なんとポテトサラダもついていた。

さて今日のスポーツ大会は綱引きである。
足場はすべるほうが面白いだろうということで、午前中に行った設営作業で気象棟前の広場を選んだ。
前半と後半で場所を入れ替えて戦うので、場所的な優劣は公平になっているはず。
綱は牽引用のロープである。
30秒勝負で中央線から2m自陣側に引き込んだら勝ち、または30秒後の時点でより自陣に近いほうに引き込んだ方の勝ちとなる。
目印の境目はザイルの切れ端をハーケンで雪面に打ち込んだ。
ザイルの両側には旗竿を立てて遠くからでもわかるようにする。
人数は6人対6人。
体重制限なしである。

ところが試合は意外な運びとなる。
どうも地の利があるようで、気象棟に向かって右側の陣地の方が有利なのだ。
場所を入れ替わっても右側の陣地のチームが勝ってしまう。
左側が雪面が締まって足場を確保しにくいのに対し、右側は比較的やわらかく適度に確保できるようなのだ。
こうなるとどこも1勝1敗で勝負はつかない。
さてどうしようかと思ったものの、5試合目(総当り戦なので計6試合ある)で動きがあった。
1居1階チームが連勝したのだ!
6試合目はセオリーどおり引き分け。
これで1位と4位は決まった。
2位と3位は同率なので順位決定戦を行う。
じゃんけんで場所を選んで1回のみの勝負。
勝った1居2階は当然右側陣地を選ぶ。
結果は不利と思われた左側陣地の2居1階の勝利。
一時は雌雄を決するのが難しいのではないかと思われたが、結果的に勝負になってほっとする。
意外に体力を使うようで、わずか30秒の試合時間なのに終了後は皆息絶え絶えだ。

1時間ほどで終わったので1500から始まる娯楽大会の前に、翌日のスポーツ大会「キックベース」の会場設営に海氷上に出かける。
作業工作棟の前はクラックが多くてどうしようかとも思ったが、少々見晴らし方面に移動すると適度に平らな面が取れるような氷が広がっていた。
ここに2面のキックベース場を設営した。

帰りに露天風呂を覗いていく。
昨日は思いのほか湯温が上がらず中止となってしまったが、今日は営業している模様。

昨日は新発から湯を循環させようとしたが全然温まらなかったようだ。
そこで、まず雪上車のプレウォーマーを利用して一気に湯温を上げ、その後投げ込みヒーターで温度を維持するという方式になったらしい。
雪上車が風呂場の横に駐車しているのはこのような経緯があるためだ。
浴槽の蓋にスタイロフォームを用いたのもかなり効果があった模様。
あれこれ工夫して最終的に可能にしてしまう設営班には恐れ入る。

ついでなので陽(といっても沈んでいるけれど、まぁ明るい)が、あるうちにも露天風呂に入っておくことにする。
浴槽は3人が入れるほどの大きさであろうか?
雪面を若干掘り下げて、浴槽の縁が雪面と面一になるようになっている。
保温用の投げ込みヒーターにはしっかりとガードがついていてやけどすることもない。
湯温が高すぎるときはそこいら辺の雪の塊を浴槽に投げ込むことになる。

さてこの浴槽、なんと総檜造りである。
井熊さん@建築の作品なのだ。
湯船など作ったことはないとのことだが、つなぎ目はコーキング剤で埋め造りは万全だ。

この露天風呂がなんとも良い。
眼前に広がる北の浦と岩島の向こうに南極大陸を望む。
絶好の景色だ。
そして檜の香り。
湯温は40℃、外気温は-20℃を下回っているので、その温度差60℃!
寒いことはまったくなくいくらでも長湯できる。
若干熱めになっているので、のぼせた後は浴槽の縁に座り込んで、ほてった体を冷ますのが心地よい。
ただし縁の場所を選ばないと、お尻が浴槽の縁に氷付けにされてしまうので要注意だ。
脇には紅茶の入ったポットも用意されている。
が、これも要注意。
塗れた手でポットを掴むと、このステンレス製のポットはたちまち手にくっついて離れなくなってしまうのだ。
それだけではない。
そもそも蓋が本体に凍り付いているので開けることが不可能なのだ。
正解はこう。
ポットにぱしゃぱしゃと湯を掛けて軽く溶かす。
その後ポットを浴槽に入れて手でつかめるようにする。
もっとも長い時間入れてはいけない。
ポットの蓋は完全に密封されている訳ではないので、浴槽の湯が入り込んできてしまうのだ。
そこで入り込む前に時間を見計らって取り出す。
これを何回か繰り返して、1,2分後にようやく飲めるようになるのだ。

風呂あがりも要注意だ。
1mほど離れた脱衣場との間にはウレタンマットが敷いてあるのだが、すでに何人か入った後のため、表面が凍りついている。
うっかり長時間マットの上に足を置こうものなら足の裏がマットに凍り付けにされてしまう。
正解はマットの横の雪面を歩いて脱衣場に向かう、である。
マットの意味はないけれど、とにかくそうするのが正解。
マットの上で氷付けにされてしまうなど、そう予想できるものではない。

さらにさらに注意することがもう一つ。
実は風呂の湯気が髪につき、それが凍り付いていて、入浴中は髪がワックスをかけたようにがっちりと固まっている。
これが風呂上りに室内に入ると一気に溶け出してくるのだ。
風呂で使ったタオルも凍っていたのが溶け出してびしょびしょになっているので、もう一つタオルが必要なのである。

この絶景露天風呂。
唯一の難点は新発の横にあるため、常に重低音が響いていることか。
当初は新発から湯を引く予定だったのでしょうがないが残念ではある。

娯楽大会では剣玉認定試験と剣玉相撲大会が開かれた。
1位は岩崎さん@地学、
2位は森(章)さん@FA、
3位は井熊さん@建築
となったようだ。
残念ながら露天風呂から戻った時にはすでに終わっていた。

腕相撲大会は白熱した。
トーナメントで3人に絞った後は総当たり戦。
1位は室田さん@機械
2位は森(章)さん@FA
3位は角さん@調理
となった。
なんでも室田さんの強さは桁違いらしい。

同時に防Aでは機械隊による駄菓子屋が開かれていた。
300円分のお菓子を購入することができるのだ。
サービスでヨーヨー掬いや射的もすることができる。
なんと型抜きもあるのだ!
ほら、覚えているでしょう?
ピンクの小さな厚さ1mmほどの板に書いてある絵をピンで削って掘り出すのを。
途中で折れてしまったらお仕舞い。

若い世代の人には初めてのことかもしれないが、僕が小学校の頃は学校の裏門の前の神社の裏にあった駄菓子屋でよく遊んだものだ。
付けられた値段は当時と変わらないのではないか?
しかし300円分は結構ある。
がんばって買わないとなかなかその値段に達しないのだ。
小学校の頃は確か100円しか貰えなかったような…
懐かしい見覚えのあるお菓子をどうしても優先的にとってしまうのだが、そんなお菓子はたいてい10円か20円なのだ。
射的では狙ったおもちゃを2つとも打ち落とすことができご満悦。
型抜きは2枚とも失敗したけれども…

夕食は昨日と替わって河村@調理さんによる会席料理。

今度は2居が先に食事をして、後に1居の番。
今日も豪華なメニューが並ぶ。
前菜
牡蠣ポン酢ゼリー掛け
瓢玉子
辛子蓮根
穴子八幡巻き
唐墨大根
合鴨有馬焼き

吸い物
鱧鎌倉仕立て

銀杏
きくらげ
人参
天山葵

造り
中トロ
平目翁和え

妻一式

家喜物
伊勢海老かに味噌素焼き
はじかみ

炊き合わせ
穴子大原女
あわび軟煮
小芋含ませ
青蕗
生麩
香り柚子

揚げ物
胡麻豆腐湯葉包み揚げ
おくら衣揚げ
美味だし汁

蒸し鉢
茶碗蒸し

松茸

食事
紅白おにぎり
ふかひれ餡茶漬け

水菓子
白玉アイス

日本酒も今日は一流どころが並ぶ。
八海山、久保田の紅寿と万寿、菊水無冠帝、銀盤

今晩も豪華なディナーに皆ご満悦だったようで、予定されていた娯楽大会のビリヤードとUNO大会は
今日もキャンセルとなってしまった。

夕食後にはバーで利き酒大会が催されていた。
5種類の中から銘柄を当てるのである。
銘柄は夕食にも出された日本酒5種。
この日の最高は3銘柄を当てた2人。
2銘柄を当てたのは2-3人だったようだ。
僕は八海山と銀盤の2銘柄を当てることができた。
しかし日本酒好きとしてはちょっと納得のいかない結果である。

この後は昨日行けなかった旧バーと幌橇バー(幌橇カブース)に行く。
旧バーとは1次隊で食堂棟として使われていた建物である。
現在は倉庫として使われているのだが、これを一部片付けてバーとして営業したのだ。
一部だけの片付けなので手前のカウンターだけでの営業だ。
オーナーは原ドク@医療。
カウンターにおでん鍋は設えられ演歌がかかる。
椅子は一升びんケースを2段重ねしたものだ。
低い天井と無骨な内装とあいまって、北海道の場末の飲み屋のような雰囲気だ。

幌橇バーは陸に上げられ半ば放置されていたものを先日みんなで引き上げ、内装を井熊さん@建築が改装したものだ。
片側には調理台を設え、入り口の反対側は客席スペースになっている。
センターにテーブル、両脇には椅子だ。
このテーブルは下の台を1段取りはずすことができ、そうすると椅子と面一になって夜にはベッドになる。
沿岸旅行にも使えるようになっているのだ。

この後、再び露天風呂に向かう。
夜空に流れる天の川と星たちを眺めながら入る風呂も格別だ。
淡いもののオーロラも湯につかりながらみることができた。
言う事なしである。

さて、本日の結果
綱引き
1居1階 1位
1居2階 3位
2居1階 2位
2居2階 4位

剣玉
1居1階 4位
1居2階 2位
2居1階 3位
2居2階 1位

腕相撲
1居1階 4位
1居2階 2位
2居1階 1位
2居2階 3位

利き酒
1居1階 2位
1居2階 4位
2居1階 1位
2居2階 2位

ここまでの総合得点
1居1階 400点
1居2階 470点
2居1階 560点
2居2階 520点


-----本日の作業など-----
・スポーツ大会会場設営
・居住等対抗ブランチ(焼きそば)
・スポーツ大会(綱引き)
・露天風呂(湯が暖まらず設営に相当苦労した模様)
・娯楽大会(剣玉相撲、腕相撲大会、駄菓子屋)
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・ディナー(会席料理 by 河村さん@調理)
・旧バー&幌橇バー

<日の出日の入>
日の出  なし
日の入  なし
<気象情報6月21日>
平均気温-24.1℃
最高気温-23.0℃(0021) 最低気温-25.6℃(0402)
平均風速1.2m/s
最大平均風速2.5m/s風向SSW(2230) 最大瞬間風速3.0m/s風向ESE(1731)
日照時間 0.0時間

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二日目も盛りだくさんなようです。
でも、何といっても露天風呂が興味深かったよう。
外気との気温差が60℃もある露天風呂はなかなか体験できるものではないのです。
それも手作り。
私も一度は本沢温泉(八ヶ岳)に行って見たいと常々思っていたけれど、さすがにオーロラは出ないですからね。

昨日は書き損ねたのですが、ディナーと懐石は私も食べたいです。
焼きそばは食べたくなって2度も作ったけれど、さすがにフルコースと懐石は作れないし、作ったところで、誰が給仕してくれるの?と思い、メニューと送られてきた写真を見ながら指をくわえています。

お酒はめっぽう弱い私。
でも、お酒の味と風味は大好きなので、誰かが頼むと必ず一口もらいます。
利き酒はちょっと参加してみたかったなぁ。

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