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古田史学とMe

古代史を古田氏の方法論を援用して解き明かす(かもしれない…)

「天体写真」2

2019年02月19日 | 宇宙・天体

月や惑星は都会の明るい夜空でも撮れますので20cmクラスの望遠鏡でかなりの高画質の写真が撮れます。

木星の四大衛星(ガリレオ衛星)は動きが速いのでそれを見てるだけで面白いです。
下の写真は時間をおいて再度撮影したものを重ねたものです。時間差はせいぜい30分程度ですが、僅かに移動しているのがわかると思います。

 木星本体の模様はなかなか明瞭に捉えられません。

土星は肉眼では環の構造もそこそこ見えますが写真となると、なかなかシャープな映像になりません。

「修行」?がまだまだ不足のようです。

「肥沼様」も狙ってみませんか?


天体写真

2019年02月18日 | 宇宙・天体

肥沼様のブログでこのところ月の写真がアップされています。

私も以前月の写真を撮るのが好きで、よく車に天体望遠鏡を乗せて光害の少ないところへ行って夜な夜な写真を撮っていたものです。近所の公園でも撮影したことありますが、物珍しげに近づいてくる人が多く、説明に忙しかったもので、近郊へ移動して撮影していました。
久しぶりに自分の撮った写真を見て懐かしく思っていました。(ちなみに今でも車には天体望遠鏡や双眼鏡やバッテリー電源などのセットが積んだままになっています)
その頃撮った写真の一枚が下のものです。(これは写真というより動画を撮ってそこから静止画として切り出したものを複数枚コンポジットしたものです。)
ちなみに撮影機材はセレストロン社製の20cmシュミットカセグレン望遠鏡にビクターのデジタルムービーを接続したものです。


今は公私とも忙しく図書館にもなかなか行けない現状であり、このように星や月を見る時間も取れなくなっていますが、そのうちまた行きたいですね。


太陽系外から飛来する小惑星(あるいは彗星)について

2019年01月05日 | 宇宙・天体

 かなり以前にも記事として書きましたが(http://blog.goo.ne.jp/james_mac/e/ad1b3e623e590d937a24d52d3c36f3ba)、6500万年前に大絶滅をもたらしたとされる小惑星との衝突という破滅的イベントは「木星」と「火星」の間にある小惑星帯にあった小惑星同士の衝突によって発生した多数の破片がその飛来源として推測されています。この場合はその多くが現在も黄道平面の近くに収まっており、その意味で観測には都合がよいと思われますが、他方黄道からかなり離れた平面を軌道とするものも存在しており、この場合観測がかなり困難となります。それは即座にその軌道予測も困難となることとなり、対策が後手に回ることとなります。
 現在はそこも観測対象として全地球的に観測網が整備されつつありますが、中には太陽系内にその起源を持たないようなものも含まれる可能性もあり、このような場合は速度が高くしかも太陽めがけて加速しまたスイングバイされるため、遠ざかる際の速度は飛来時を上回ることとなります。
 既に一昨年となりましたが、まさにそのようなものとして「オウムアムア」(Oumuamua)と呼称されるようになった天体の接近が観測されました。これはその形状が極端に球形からはずれた形状をしていたため(ほぼ棒状であった)ことから「葉巻型のUFO」などと噂もされましたが、結果的には太陽系の外部から飛来した「彗星」と判定されています。この「オウムアムア」は「こと座」のα星「ベガ」の方向からやってきて、発見時は秒速30Km弱であったようですが、その後太陽の至近で方向を変えた後加速し秒速40km程度となったことが観測されています。その後どんどんと太陽から離れていっており、現時点では土星軌道の距離程度まで離れていったようです。
 このようなものが地球など惑星の至近を通過することも考えられるため、実際には地球近傍を通過する可能性のある天体は私たちが思う以上に多いと言わざるを得ません。今回は「たまたま」地球軌道からかなり離れた軌道となりましたが、地球とニアミスあるいは衝突する場合かなりサイズの小さなものであっても被害が大きなものとなる可能性があります。

 また以前にも地球に700万キロメートルまで接近した小惑星があったという報道がされています。その大きさは4.5kmあったとされ、しかも衛星2個を伴っていたという情報までありますが、これはかなり「大きい」といえるサイズであり、さらに「700万キロメートル」というのは宇宙的には「すぐそば」というイメージであり、ちょっと驚愕です。またその「4.5キロメートル」という大きさも瞠目すべきであり、以前ロシアで観測された「隕石」(というより「微小小惑星」というべきでしょうか)の大気圏突入の際にはその衝撃波で多くの被害があったことが報告されていますが、このケースはかなり上空で本体の破壊があったため、被害もまだしも少なかったというべきでしょう。それは本体の大きさが数十メートルというレベルだったからであり、当然これより大きい「キロメートル」というオーダーの場合は(その入射角にもよりますが)、衝撃波によって破壊が進行するにも時間がかかることとなり、その分地表近くまで落ちてきてしまっているという可能性が高く、その場合衝撃波も閃光もより強烈なものが地表に届くこととなりますから、その威力として核爆弾と何ら異ならないものとなるため、甚大な被害が発生する可能性が高いと思われます。まさに「青天の霹靂」というべきものですが、地球における生物の進化にとって最も重要な不安定要因はこのような地球外から飛来する天体による衝突であるという研究もあるようであり、このような天体衝突による「大絶滅」は現在までも地球を何回か襲っていると考えられています。
 ただ問題はその「間隔」なのでしょう。生物の進化には数千万年から数億年という時間オーダーが必要であり、その途中で大絶滅が起きてしまうとその時点で進化がリセットされてしまい、なかなか高等生物の登場に至らないと思われる訳です。その意味で「木星」という巨大な惑星が太陽系の中程に存在しているというのは、地球にとって「露払い」の意味があり(木星がその引力で微少小惑星群が太陽方向に行かないよういわば「引っ張っている」ため)、この存在があったからこそ現在「人間」が生きていられるというわけです。


地球によく似た惑星の件

2015年07月31日 | 宇宙・天体
 最近「地球」に良く似た環境の惑星が発見されたという記事が出ていました。それによれば「地球」よりやや大きい惑星が地球とほぼ同じ周期で主星の周りを回っているとされます。ケプラーの法則から周期が同じならば距離も同じとなるため、主星から受ける熱量もほぼ同じとされているようです。またその主星は太陽よりやや質量があるようですが、表面温度は同じであり、スペクトルもほぼ同じのようです。これによればその「地球に良く似た星」は十億年後の地球環境に良く似ているという説もあるようです。そしてその「地球」に良く似た星には「生命」があるかもしれないとささやかれています。確かに「地球」とよく似た環境の「惑星」に生命の可能性があると考えることは全く正しく、その意味でこの惑星が非常に有力な生命それもかなり高度な生命の存在が想定される天体であるのは正しいと言えますが、しかし、「生命」の存在や進化を考える上で重要なことは、その「惑星系」に「木星」に匹敵する惑星があるかどうかではないでしょうか。なぜなら、「木星」は「太陽」の引力により引き込まれる微惑星や隕石などをその手前で食い止める役割をしているからです。

 現在「火星」と「木星」の間に「小惑星帯」(「メインベルト」と呼ばれる)が存在しています。その数「数百万個」とも言われる非常に大量の小惑星(中には直径1m以下のものも多数あるようです)がここに集まっているわけですが、これらの小惑星は「木星」により軌道が固定化されているのです。
 太陽系の惑星や小惑星はもちろん太陽の引力により太陽の周りを回っているわけですが、太陽系最大の惑星である「木星」の引力が実は絶大な影響を与えているのです。地球の軌道でさえも木星の影響を強く受け(「摂動」と呼ばれる)、その軌道を変化させられています。
小惑星帯の軌道は「太陽」と「木星」の引力が微妙なバランスを取った結果「安定的に取り得る」軌道と考えられ、これ以外の軌道は「木星」により軌道を乱されて「太陽」か「木星」に「吸い込まれて」しまう、と考えられています。

 近年「シューメイカー・レビー彗星」などのように「木星」に衝突する天体が数多く観測されており、太陽系内にはまだかなり軌道が不安定な天体が多いことがわかります。それらは「太陽」や「木星」からも遠い「太陽系外縁」に存在する天体であり、「カイパーベルト」天体と言われていますが、太陽系ができた頃から余り状況が変化しないで存在していると思われ、周囲の恒星からの影響や新星爆発現象などによる強いエネルギーを浴びるなどして、僅かに軌道が乱され、「不安定」な軌道に遷移した結果、太陽近傍まで接近してくると考えられますが、太陽系には「木星」という門番がいて、不安定な軌道を持つ天体を全て平らげてしまう、というわけです。

 生命の進化には「安定的」環境が「長期」に渡って存在する、という事が必要であり、そのためには「小惑星」との衝突、と言うような事態は「滅多に起こらない」という条件が必要となると思われますが、その条件を造ってくれているのが「木星」と言うこととなるわけです。
 もし木星がいなければ、生命は発生してもあるいはやや進化したとしても、降り注ぐ小天体により「絶滅」が頻繁に起きてしまい、そのたびに進化のリセットがかかることとなります。
 現在の太陽系においても全ての天体が「木星」の引力によき寄せられるわけではなく、一部はやはり「地球」と「小惑星」や「彗星」本体との衝突という現象の発生となってしまうわけであり、化石の研究からは幾度も大絶滅が起きていることが確認できます。しかし、その間隔や頻度が生命の進化のスピード比べると充分小さく、それを大きく妨げないものであったために、現在地球には多様な生命が棲息することとなっているのです。その意味では「木星」は「地球」とその上に生存している動植物類の「守り神」でもあるといえるでしょう。

さらに、木星の質量がもっと大きかったら「小惑星帯」はもっと「木星側」に寄って形成されると思われ、それは一見地球にとって都合が良さそうですが、その場合多分「木星」は「惑星」というより「恒星」(矮星)となっていたと思われ、(現在でも木星の中心部からX線が出ているという説もあるぐらいであり、それは「恒星」的特徴でもありますから、ひょっとすると「惑星」と「矮星」の中間ぐらいに位置する天体なのかもしれません。)そのぐらい質量が大きいと「太陽」も「木星」から受ける引力がかなり大きくなり、安定した軌道をとれない可能性が出てきます。つまり周辺の惑星は通常の楕円軌道から外れる公算が強く、「太陽」からの距離に大きな変化が生じることとなると思われ、受ける「輻射量」(「熱量」)が一定ではなくなり、「生命」の進化を促進させる環境が形成されない可能性が高いと見られます。
 一般に惑星の軌道は太陽を焦点の一つとする楕円であるとされますが、これは太陽がほぼ「不動」であるとすることができるからです。(ただし「太陽系」という慣性系においての話です)しかし、一般に二重星など多重星系においては「主星」の位置はその慣性系の中で固定(不動)ではなくなり、ある軌道を描いてふらつきます。それは当然その系に拘束されている全ての天体に影響が及び、「惑星」があればその惑星の軌道も「楕円軌道」ではなくなります。(場合によっては「カオス」つまり特定の軌道を持たないというような場合も想定されることとなります。)
 このような環境の中では「主星」や「伴星」から受ける引力や輻射量などにも不規則な変化が発生することとなるでしょうから、生命の進化という点では非常にマイナスの要素が大きいこととなります。
 新しく発見された地球によく似た天体においても木星のように主星の軌道を大きくは乱さず、微少天体はこれを悉く引きつけてしまうような惑星がないとすると、充分に生命の進化を担保する環境が整っていないという可能性も考えられるでしょう。

天空の星と神話の世界(二)「シリウスは赤かった?」

2015年05月28日 | 宇宙・天体

 「火瓊瓊杵尊」の美称部分と思われる「火」は「赤」いという意味があります。これは「穂」に通じるという説もありますが、「穂」の色はいわゆる「黄金色」であり、もし古代米であったなら「赤米」であってその色はやはり「赤」であったという可能性さえあると思われますから、少なくとも「白」や「青白」ではないと思われます。
 また、当時の技術では「火」の温度として「白色」になるほどの高温は作れなかったであろうと思われ(色温度として「1万℃程度」となる)、人工的に作る「火」はすなわち「赤」であったと思われます。語源的にも、「あかるい」という語の語源は「火」の色を示すものであり、「赤」という色のイメージからできた言葉ではないかと思われます。
 今も日本人が太陽を描くと「赤」に塗るなど太陽に「赤」というイメージを持っているのは「火」が赤いことからの類推と思われるわけです。
 ただし、「太陽は実際には黄色に近い。」という言い方もされ、またそのように描く地域(国)もあるようですが、確かに太陽の表面温度は「6千℃」とされますから「色温度」では「黄色」となります。しかし、もし太陽が遠くにあれば確かに「黄色」に見えるとは思われるものの、地上からは光が強すぎて人間の目の中にある「色」を感じる細胞では入力信号がオーバーフローしてしまうため「色」は判別できないと思われます。つまり「太陽」の色を赤や黄色に描いているのは一種のイメージであり、「明るい」と「赤」が近縁の言葉であることからの類推と思われるわけです。その意味では「火」はまさに「赤」であることとなります。
(「瓊瓊杵尊」の「瓊」も「赤い玉」を意味する語ですからその意味でも「赤」のイメージの強い名前です(20151103追加注))
 しかし前項で行った「神話」と「天空」の星との関係の解析からは「シリウス」が最も「火瓊瓊杵尊」に該当する可能性が高く、そうであれば「白い」星に対して「赤」を意味する美称がつけられたこととなってしまいます。そうするとこの神話が形成されたころには「シリウス」は「赤かった」こととならざるを得ませんが、実際に古代において「シリウス」が「赤かった」という記録が複数あるのです。

 「斉藤国治」氏の『星の古記録』という書には、各種の古い記録に「シリウス」についてその色を「赤」と表現する記事があると書かれています。なかでも「紀元前一五〇年頃のエジプトのプトレマイオス(トレミー)は「アルマゲスト」という天文書の中で「赤い星」として、「アルクトゥルス」(うしかい座α星)「アルデバラン」(牡牛座α星)「ポルックス」(双子座α星)「アンタレス」(さそり座α星)「ベテルギウス」(オリオン座α星)という現在でも「赤い星」の代表ともいえるこれらの星の同列のものとして「シリウス」を挙げているのです。しかし同時代の「司馬遷」の『史記』を見ると「白い」という表現がされているものがあり、食い違っています。ただし、「色を変える」というように受け取ることのできる記事もあるなど不確定な部分も見られます。(以下の記事)

「參為白虎。…其東有大星曰狼。狼角變色,多盜賊。…」
「太白 白,比狼;赤,比心;黃,比參左肩;蒼,比參右肩;,比奎大星。」(史記/書 凡八卷/卷二十七 天官書第五)

 これらによれば「太白」つまり「金星」自体色を変えることがあるとされ、そのうち「白」い場合は「狼」(シリウスを指す)と同じような「白さ」であるというわけです。
 「金星」は地平線の近くに出ることが多く(内惑星のため太陽からの離角を大きくはとれない)、上層の大気の様相を反映して色が赤くなるようなことがあります。望遠鏡で見ても「プリズム」で見たように七色に見えることがよくあります。

 ところで上の「太白」の色に関する記事の中に「黄」に対するものとして「參左肩」というものがあります。この「参」とは「オリオン座」を示すものですが、上の記事では「白虎」とされており、その左肩というのは「γ星」(ベラトリックス)のことでしょう。これが「黄」とされています。また「赤」の代表は「心」とされますが、「心」とは「さそり座」を指すもののようですから、「アンタレス」を意味すると思われます。ところが、「蒼」つまり「青」の代表として「參右肩」が出てきますが、これを「オリオン座」のα星「ベテルギウス」であるとすると、これは明らかな「赤」ですから、「蒼」という色とは合いません。最も「蒼」にふさわしいのは「β星」である「リゲル」ですが、これは一般には「左足」とされます。これは明るさもベテルギウスと変わらないほどであり、また「青色巨星」とされていますから、これであれば「蒼」という色に対応するものとして不審はないのですが、実際には「左肩」とされています。たとえばこれが「右」「左」が逆であったとしても「ベテルギウス」に対して「黄」という表現がされたこととなってしまいます。ただし、現時点では「白虎」の姿勢と星の配列がどう対応しているかが不明のため『史記』の記述を性格には判断できないわけですが、「ベテルギウス」は「赤色超巨星」に分類され、「太陽系」でいうと「木星軌道」を超える程のサイズまで膨張していると考えられており、超新星爆発が間近いとされますが、このような星が2~3000年前まで「黄色」であったとは考えにくいものです。
 「ベテルギウス」のような状態になるまでには「赤色超巨星」の期間がかなり長く続いたあげくのことと思われますから、2~3000年ではそれほど進化しないものと思われるのです。
 しかし『史記』において「赤」の代表を「アンタレス」に譲っている事態は「ベテルギウス」の赤みがそれほど強くなかったということもいえるのかも知れません。
 消極的ですが、このことは「白」という色とされている「狼」(シリウス)もそれ以前は違う色であった可能性も考えられることとなるでしょう。
 また「狼」とされる「シリウス」も「變色」つまり「色」を変えることがあり、そのような場合は不吉なことがある(ここでは盗賊が増える)とされているわけです。これについては「金星」と同様「大気」の影響ということももちろん考えられますが、当時は何か不安定な状態で「色」を変えていたのかもしれません。しかし「シリウス」は「主系列」に部類され、変光とか色変化というようなことがあったとは想像しにくいのは事実です。ただし鍵を握っているのは「シリウス」の「伴星」です。

 「シリウス」は確かに青白く見えますが「主系列星」に分類されています。また伴星がありこれは「白色矮星」であるとされています。「白色矮星」は「新星」爆発の残骸といえるものであり、多くの場合「赤色巨星」が爆発現象を起こした後に残るものです。
 「シリウス」とその伴星は連星系を形成していますが、その公転周期は五十年といわれています。この周期から考えられる双方の距離は「20天文単位」と計測されており、かなり近いといえます。(太陽から天王星までの距離に相当する)しかもそれは平均距離であり、伴星が元「赤色巨星」であったとするとそのサイズはかなり大きかったものと見られ、両星は今以上に接近していたという可能性があります。そう考えると当時は「近接連星系」を形成していたといえるかも知れません。
 
 連星系において一方が終末期近い「赤色巨星」である場合、「進化」の過程で「膨張」し(既にそこに至るまでにかなり膨張しているわけですが)、終末期には大きさがいわゆる「ロッシュ限界」まで達する場合があり、そうなると「内部ラグランジュ点」を通って伴星側(これが「シリウス」)に質量が移動する現象が起きることとなります。主星側が伴星に対して質量が圧倒的に大きい場合この「ラグランジュ点」もかなり伴星側に近い場所にできる事となり、このような場合、主星側から質量がもたらされる伴星(この場合はシリウス)は、条件によってはそのまま「質量増加」という結果になる場合もあり得ます。その結果「伴星」であった「シリウス」はやや質量が増加し、発生エネルギーも大きく増加した結果1万度にもなる事となったと見られます。
 シリウスに金属元素が多いという観測結果があるようですが、基本的に「金属元素」や「重金属」元素は「重い星の内部」で作られるものであり、その金属元素は「赤色巨星」(これは重い星)からもたらされたものであると考えると理論的に整合するといえるでしょう。

 ところで「シリウス」の現在の状態は「白色矮星」と「主系列」の組み合わせであるわけですが、当然それ以前は「巨星」と「主系列」という組み合わせであったこととなります。しかもその場合「主星」である「巨星」(現在の伴星)がロッシュ限界に先に達することとなっていた可能性が高いものと推察されます。
 ところが観測された事実からはこのような組み合わせは一例も発見されていないとされます。すべての近接連星系では質量の大きい星、つまり主星が「ロッシュ限界」内にあり、質量の小さい方、つまり伴星が「ロッシュ限界」に達しているのです。この逆パターンつまり「シリウス」の以前の状態の連星系は確認されていないのです。(これをアルゴルパラドックスと称するようです)
 これについては各々の星の「進化」のスピードの違いで説明されています。
 
 先に「主星」が進化・膨張して「ロッシュ限界」に達すると質量の小さい進化の遅い星の方へ(ラグランジュ点を通じて)質量移動が起こり、それにより主星側の「ロッシュ限界」が小さくなり、さらに質量移動が促進されることとなります。ついにはもとの伴星よりも質量が小さくなると急激な膨張はほぼ収まり、その結果「ロッシュ限界内」に止まる新たな主星と「ロッシュ限界」に達している新たな伴星という組み合わせが発生するわけです。この状態が「シリウス」の以前の状態と考えられるわけです。
 この状態でさらに伴星側の進化が進行し、ついには「中心部」から供給されるエネルギーが急激に減少すると重力崩壊を起こし、その結果「白色矮星」が形成されることとなります。これが今のシリウスの状態と思われますが、この「最終段階」のイベントが「紀元前」に起きていたとすると、その時点以前では「赤い」「伴星」と「白い」「主星」という組み合わせであったものと思われますが、この時点では両方の間にそれほど明るさの差がなかったという可能性もあります。特に「赤い星」の状態が末期であるとすると、大きく変光していた可能性が強く、この両星は肉眼では一つの星として見えないわけですから、全体として「赤」くみえたり「白」くみえたりという両方が観測されたとしても不思議ではないと思われるわけです。