2011年8月7日(日)
楽しみにしていた野田神社能楽堂での観能に、奥様と出かけてきた。野田神社すぐ側の菜香亭駐車場が、今夜は臨時の駐車場になっていて、午後6時前に到着したのだが既に半分以上が埋まっていた。
そして午後6時半からいよいよ開演だが、いい席のチケットを取ってもらったので前から2列目というほぼかぶりつき状態。演目は次の通り。
舞囃子「忠度」 粟谷明生
仕舞「羽衣」 粟谷幸雄
仕舞「融」 友枝昭世
-火入れ式-
狂言「磁石」野村萬斎、野村遼太、深田博治
能「船弁慶」粟谷能夫、森常好、野村萬斎
喜多流習いのオイラとしてはもちろんだが、当世随一の文句なしに最高のキャストである。
特に、友枝昭世師の仕舞を久し振りにそして間近に拝めたのがなによりで、これだけでもS席1万円の価値があったと思うほど。優雅さと力強さ、静謐さの中の唐突、言わば静と動を混沌かつシームレスに演じ切れる能楽師として、友枝師はやはり大きく抜きん出ていると思う。ま、単にオイラの好みなのかも知れないがネ。
多くの観客の目当てである、狂言「磁石」と能「船弁慶」のアイを演じる野村萬斎師は、野田神社境内の隅々まで届かんばかりの、相変わらず通りの良い朗々たる美声である。萬斎師の甥にあたる野村遼太も精一杯の演技で、叔父と比べられると少し辛いが、それでもこれからが楽しみな若手だと思う。
能「船弁慶」のシテを演じる粟谷能夫師はオイラと同年代だが、何だか既に老獪の雰囲気をも漂わせる程に安心して見ていられるのがご同慶の至り。前シテの静御前での優美な「中ノ舞」は、烏帽子を被った悲しい別れの舞いの所作にぐいぐいと引き込まれていく内に、そこで舞っているのが実はオジサンであることを完全に忘れてしまう程だ。
ワキの森常好師は、いつもよりも「語り」の調子が大きくうねっていたように聞こえたが、これも実はオイラの好みだから、聞いていてとても心地良かった。
三王清師の大鼓(おおつづみ)は、屋外だからかそれとも少し湿気が残っていたからか、大鼓特有の「カァ~ン」という響を今日は聞くことができなかった。それでも、船弁慶の見せ場の一つでもある描写的な囃子はやはり楽しく、神社の闇をつんざく能管の響が、蝉や蜩までも聴衆にしてしまったようだ。
と、いいところばかりを挙げたが、実は唯一残念だったのがPA(拡声設備)のクォリティがお粗末であったことだ。本来、能楽にPAは不要なのだが、屋外の公演なので、多分後ろの席では聞こえにくいなどからの配慮だとは思う。
しかし、マイクを本舞台や橋掛りの上に直に置くという愚行の為に、舞いの際の裾捌きが突如聞こえたり、大鼓・小鼓方の床几を置く音がカツンと大きく響いたり、はたまた、船弁慶の後半には風切り音がビュービュー聞こえたりで、本来は聞こえない(聞きたくない)音が盛大に聞こえてしまう有様。
更に一番最悪なのは、演者の立ち位置とは関係なく、左右のスピーカーから均一な声が聞こえてしまうことで、PAとしてはそれでいいのかも知れないが、「能楽という芸術を楽しむ観点」からは完全に外れている。演者の立ち位置に応じた拡声ができないのであれば、PAそのものを止めていただいた方が、例え後の席で聞こえにくかったとしても観能に没頭できる。
また、電源自体の品質も悪かったようで、何かのスイッチ入切によると思われるプチノイズが、途中何度も聞こえてしまい、これも興醒めさせられた。
次回は是非、PAについて再考願いたいものだ。
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合否の発表はまだかも知れませんが、おそらく無事に合格されたことと確信しています。是非、オンエアでお会いできることを楽しみにしています。73!