霊の「関東……もとい、長州ウォーキング」

「関東歩き旅」の続編で、「長州歩き旅」を始めました

セルリアンタワーで、能楽と料亭の味を堪能

2007年07月28日 | 能楽鑑賞

渋谷にある、セルリアンタワー能楽堂で能・狂言を堪能し、続いて、隣接している新橋の老舗料亭「金田中」の料理を味わってきた。
この二つの場所は、僅か障子一枚で仕切られていて、能楽堂が開演すると共にその障子が開けられ、正面の一等席から能楽が鑑賞できると言う、国内で唯一の贅沢な造りになっている。
16時30分に開演し、最初に、歌人で文芸評論家の馬場あき子氏による分かり易い演目解説があったあと、狂言「柑子」が始まる。太郎冠者の野村万作師は、一週間前に重要無形文化財(人間国宝)に選ばれたばかりだが、相変わらずの存在感の大きさと安定感には感服。「柑子」は、15分程度の比較的短い演目だが、見所(客席)から溢れる笑いと共に、あっという間に終わってしまった感じ。
そして次は、見所と能舞台の照明をグンと落とし、舞台前から橋掛りの白州に立てられた大きな「ろうそく」に火を灯すところから、ろうそく能「黒塚」が始まる。一噌幸弘師(笛)が、闇をつんざくような「ひしぎ」を演じ始めると、もうそこはまさしく「能」の世界のまっただ中だ。
今最も感動を与える能楽師と言われる、喜多流の友枝昭世師は、前シテの里の女であっても、後シテの鬼女であっても、当にそのまま魂ごと乗り移っているかのような錯覚を覚えさせる程の緊迫感で、ぐいぐいと引き込まれていってしまう。

ろうそくの灯りで始まった時は、最初はとても暗く感じていたが、次第に目が慣れたのか気にならなくなり、逆に周りが暗い分、舞台上の演者の面(おもて)や装束がくっきりと瞼に刻まれるような気がしてきたから、不思議だ。考えてみれば、今の様な明るい照明のもとで演じるようになったのは、つい最近のことだろうから、特に夜間に演じる場合は、この位の明るさで鑑賞したのが普通だろうなと改めて感じる。
とは言え、600年も前の人達が、ろうそくによる照明の効果について、観客側の感覚まで考慮していたとしたら、それはまた感服するしかないなぁ。

18時45分位に全てが終了し、今度はそのままの席で金田中の料理を味わうことになる。献立を全て書くと商売に支障がでるといけないので、前肴(写真)のみを紹介する。
 前肴(丸盆に梶の葉)
  ・硝子鉢(右奥)
   蒸し鮑 温玉子 どんこ オクラ 掛け琥珀 払柚子
  ・切子長皿(手前)
   刻み野菜 紫別 胡瓜 玉葱 海月 鶏 胡麻
  ・切子小鉢(左奥)
   瓜素麺 順菜 白葡萄 蛸湯引き 梅醤油 吸い酢
  ・切子つぼつぼ(中央)
   あて塩雲丹 霰芋
これが前肴で、この後は以下が続々と出てくる。
 小吸椀 造り 焼物 温物 煮物 飯 水菓子
素材は勿論、味付けや盛り合わせ、そして器や箸にいたるまで、洗練された料亭の味とはこんなものなのかと、日頃縁のない貧乏人にとっては、『恐れいったぁ~』のひとときであった。


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