投信メモ

調べたことをメモしてます
・『AI日本株式オープン(絶対収益追求型)(愛称:日本AI(あい))』03314172:JP

見栄えの良くない期間を意図的に除外している?:AI日本株式オープン(絶対収益追求型)

2018-03-07 | 投信メモ:AI日本株式オープン

 

 

冒頭にある見出しの図は、日経コンピュータ『ディープラーニングで資産運用、三菱UFJ信託が新たな金融商品[2017.02.06]』に掲載されたもので、以下のように解説されていました。

  • 三菱UFJ信託銀行では、2016年3月から2017年1月までの10カ月間にわたって、深層学習を使った投資ファンドを試験運用してきた。

    同社の検証によると、深層学習を導入したことで、大きく二つの効果を確認できたという。「多層化効果」と「学習効果」だ。
    多層化効果は、深層学習の層数を増やすことで、予測精度が高まるというもの。2009年12月から2015年9月までの入力データを基にシミュレーションしたところ、多層モデルは3層モデルに比べて、年率で約10%利回りが高くなる結果が得られた。
    学習効果は、「毎日蓄積されるデータで学習させると、予測モデルの精度が向上する」(岡本チーフファンドマネージャー)というもの。日々学習させた場合の予測モデルは、学習させない予測モデルに比べて年率で約10%利回りが高くなったという。

 

 

 

 

このようにAI日本株式オープン(絶対収益追求型)に導入されている、自社製AIの性能の高さが対外的にアピールされていたのですが、

よくよく見ると、あることに気付かれたと思います(図の細かい点が見やすいように、意識して、ちょっと大きめにして載せています)。

 

 

 

 

それは、 図のスタート日付が「2012/3/29」からだったということです。

 

 

 

 

 

記事には「2009年12月から2015年9月までの入力データを基にシミュレーションした」とありました。

インサンプルが27ヶ月程度必要で、実際に予測値を作れるのは2012年3月29日時点からなのかもしれませんが、

かりにそうだったとしても、なぜ、この期間にしているのでしょうか?

 

 

 

 

先日の記事で書きましたが、AI日本株式オープン(絶対収益追求型)のシミュレーションは、

「2008年度スタート」or 「2009年度スタート」

の2パターンです。

   参照:「消えた2008年」問題:AI日本株式オープン(絶対収益追求型)のバックテスト期間の設定について

 

 

普通に考えれば、バックテストをする以上、この期間の予測結果は作成しているはずです。

予測値は作ることができるはずなのに、なぜ、2012年3月29日からの結果しか掲載していないのでしょうか?

 

 

 

 

 

先日のブログ記事『ティーブレイク:日経新聞が「AI日本株式オープン」に見せた“忖度”!?』で書きましたような視点で考えると、

「予測値の精度検証期間が、バックテスト期間より短いのはなぜだろう?なぜ、わざわざ、こんなことをしたのだろう?」

と引っかかるのではないでしょうか?

(都合の悪い結果があるので、検証期間を意図的に短くしたようだ、と。) 

こういった、見落としがちな、ちょっとしたところに、往々にして「不都合な真実」というのもが潜んでいるように思います。

 

 

 

 

では、カットされて隠されてしまった部分は、どんな結果だったのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

調べてみると、「2012年3月29日」よりも前の日付から検証を行っている資料がありました:

 

 

 

 

 

 

さらに遡って検証している資料もありました:

この図では、まさに「2009年12月」からプロットされていました。

 

 

 

 

 

そして、もう少し遡った期間で見ている図もありました:

  • 三菱UFJ信託銀行『人工知能を用いたファンド運用システム(特開2018-025851)』特許情報プラットフォーム
    • 審査書類情報:添付書類「人工知能(AI)を活用した絶対収益追求ファンド(ディスカッション資料)」2016.02.10

 

この図では、スタート日付は「2009年11月16日」でした。

 

 

ちなみに、この資料のバックテスト期間は2008年度スタートですが、なぜ、予測精度評価の期間は「2009年11月16日」と中途半端なのでしょうか?
下図は、この資料にあったバックテストの要因分解を行ったもので、「AIモデル」がこの予測モデルを使ったことによる効果を表しています。

これをみると、2009年10月までの期間で、パフォーマンスへの寄与が一時マイナスになっています。
おそらく、AIによる学習効果の図の見栄えが良くなるように、スタート日付が「2009年11月16日」と中途半端な設定になったのではないかと思います。
「AIを活用することで、全ての年度でプラスのリターンを獲得」と言っているのに、マイナスになってる期間が強調されてしまうのは、いかにも都合が悪いのでしょう。

他の資料が「2010年3月」「2009年12月」スタートとなっていたのも、同じ理由ではないでしょうか?2009年11月より先は、遡ると不都合

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、以上の資料があったことからわかるように、冒頭の図では、

「2012年3月29日」以前からでも掲載できたのに、それを、あえて、意図的にしなかったのです。

 

 

 

 

 

 

これらの資料の結果をみると、冒頭の図でカットされた「2009年12月~2012年3月」の間は、

パフォーマンスがヨコヨコであったのではないでしょうか(リターンは小さくても、それを安定的に積み上げるような感じではない)。

これでは、ぱっと見で、あまり見栄えがよくありません。

 

特に、この「非常に長く続くヨコヨコ感」は、このファンドが設定された2017年2月頃の相場感を思い出せば、

世間一般にとって、今からこのAIファンド(絶対収益追求型)に投資することを躊躇させる結果であるとも言えそうです。

 

 

 

 

メディアにおいて、対外的にアピールする際、全体として、右肩上がりな印象になるように、

つまりは、今からでも買いたくなるように、不都合な部分を隠してしまったのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

バックテスト期間の設定(2008年度 or 2009年度)もそうですが、このファンドが行っている検証は、分析期間が恣意的に選択されており

とても手癖が悪そうな印象を受けてしまいます。

 

つまりは、ちょっと、信用できない感じの印象を受けてしまいます。

 

 

 

批判的な言い方をすれば、いったい全体、何のために、こうまでしても、資産運用システムに、AI(人工知能)技術を組み込もうとしたのでしょうか?

  誰がために『AIファンド』はあるのだろうか?