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投信メモ

調べたことをメモしてます
・『AI日本株式オープン(絶対収益追求型)(愛称:日本AI(あい))』03314172:JP

運用成績が『最低評価』となった投資信託(国内株型)とは?

2018-09-05 | 「運用会社の質」について

 

突然ですが、国内株型の投資信託で、最低評価の運用成績となったファンドって、どんなものがあるのかご存知でしょうか?

私は、先日調べて、初めて知ったのですが

R&Iの格付(過去10年間で評価)によると、2018年7月末時点で、以下の「27ファンド」存在していました。(評価対象は、評価時点で生存しているファンド)

 

 出所:R&I定量投信レーティング・投信データ https://www.r-i.co.jp/investment/toushinrating.html

 

 

 

 

ところで、このリストの中に、以前、このブログで取り上げた

   「三菱UFJ システムバリューオープン(愛称:プロフェッサー)」 https://www.am.mufg.jp/fund/531901.html

がランクインしていました。

確かに、このファンドのパフォーマンスは、とても悪いものでしたが、投信全体(国内株型)で見ても、最低ランクのファンドだったようです。

 

 

 

 

このファンドは、その愛称である「プロフェッサー」からもわかるように、運用には、「プロフェッサー」でなければ、理解することが出来ないような

高度で先端的な投資理論・技術が用いられているようです。

 

 出所:交付目論見書 https://www.am.mufg.jp/pdf/koumokuromi/531901/531901_20180615.pdf

 

まさに、クオンツ運用というイメージそのものです。

 

 

にもかかわらず、「割安度」の評価に、「わり算」を使えば算出できるような、ただの単純な投資指標である、PBRなどを使って見ているだけの

三菱UFJ バリューオープン」というファンドと比べて、パフォーマンスが大きく劣後(過去10年間)しているのです。

そして、TOPIX連動型のインデックスファンド(現時点での信託報酬:0.6804%:“低コスト”のインデックスファンドではありません)にすらも負けていました。

 

 出所:楽天証券 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/comparison/?codes=JP90C0000SY3_JP90C0000PH4_JP90C0000VK6

 

 

さらに、比較可能な全期間で評価した場合だと(2001/3/30~)、

プロフェッサーは、三菱UFJバリューオープンの半分にも満たないパフォーマンスしか出せていませんでした(結果は、惨憺たるものです)。

そして、TOPIX連動型のインデックスファンドにも負けています。
 

 

 

 

なぜ、シンプル(単純)なアプローチにすら、こんなにも大きく後れを取ってしまっているのでしょうか?

そして、“なにもしていない”  TOPIX(インデックスファンド)にすら負けているのでしょうか?

それどころか、国内株型の投信の中で、最低ランクに位置しているのでしょうか?

 

 

「最新の投資理論」「高度なモデル」などの歯の浮くような口上は、いったい、何だったのでしょうか?

(これらを利用すると、決まって、シミュレーションでは「泥棒も裸足で逃げ出すような」素晴らしいパフォーマンスを出すにもかかわらず、です)

 

 

もう、いったい全体、何だったのでしょうか?

そして、仕舞いには、舌の根の乾かぬ内に、バリュエーションモデルなんて役には立たないから、
むしろ、ファクターETFに注目すべきだったんですよ、なんて言ってくるかもしれません。

   cf. 三菱UFJ信託銀行「新潮流で広がるクオンツ運用のフロンティア」https://www.tr.mufg.jp/houjin/jutaku/pdf/u201606_1.pdf

 

 

 

実は、このような事例は、よくあることで、

手段を “目的” にしてしまったファンド 」に見られる典型的な現象です。

 

 

 「運用に最新の高度な投資理論・技術を使っています」なんていうセリフは、なんともプロフェッショナルな感じがして、カッコよく、

やってる感のあるものですから、誰もが使いたくなります。それに、売る時のアピールにも使えます。

 

 

 

だからでしょうか、「最新の高度な投資理論・技術」がパフォーマンス向上に役立つかどうかをシビアに検証し、

既存の、シンプルで、ありふれた、人目を引かない、冴えない手法に比べて、明らかな優位性があるかどうか、

冷静な検証が出来ない人が多いように感じます。

 

むしろ、何が何でも、運用に取り入れてやろうと、見たい結論を見せてくれる部分にだけ注目し、

果ては、鉛筆を舐めるような検証を平然と行う人が多くいます。(驚くほど酷い事例を見たこともありますが、それは後ほど紹介したいと思います)


しかし、これでは、実用性のある、まともな「モデル」など、出来るはずもありません。

「進化の名のもとに、モデルが劣化していく」悲惨な現象が生じるだけです。

 

 

 

強調すべきことですが、最新の高度な投資理論・技術」というものは、単なる『手段』でしかありません。それ以上のものにはなりえません。


にもかかわらず、最新の理論・高度なモデルを使っていること、それ自体が目的であるかの如く、殊更に強調するファンドがあります。

(ある意味で、それが運用会社の“売り”になる部分もありますので、経営判断として、そうなりがちな部分もあるのでしょう)

 

 

そして、このようなファンドを作り、不思議なくらい、殊更に強調しているような運用会社は、警戒すべきだといえます。

なぜなら、単なる手段を、目的化してしまうことは、運用会社の質を低下させている危険性が非常に高いからです。

 

例えば、ガバナンスの視点から、企業経営者が、短期的な経営目標の数値を設定することを嫌う人がいます。
それは、短期的な数値目標の達成(長期的な経営目標達成のための手段に過ぎない)のために、本来の経営目標をおざなりにして、企業価値を毀損するような経営判断を下したり、果ては、不正会計に手を染めてしまう危険性を高めてしまうためです。
これと視点は、まったく同じです。
本来は手段に過ぎないものに、達成のインセンティブを与えすぎると、本末転倒な結果を招くことがあると言えます。

 

 

実際、そのような運用会社が実施した検証をみると、非常に低レベルで、悪質な検証しかしていないことが多いように思います


☞ 「バフェットからの手紙」に学ぶ、投資信託選びで失敗しないための注意点

  

 

 

 

 

私は、クオンツファンドで「先駆的に、最新の、先進的な、高度な」などのようなフレーズを好んで多用する運用会社は警戒すべきだと思います。

運用において、投資理論や技術が、とても有用なものであることは、疑いもしません。

ただ、やたらと、先ほど挙げたようなフレーズを好んで使うところは、実用性の検証がおざなりになり、

「モデル」自体は陳腐で、何の役にも立たないものであることが多いような気がします。

 

   

 

 

 

 

それは、まるで、とあるジョークに出てくる、深夜に街路灯の下で必死に何かを探っている姿を友人に見られた「酔っ払い」と同じだと言えます:

友人「何をしているんだ?」

酔っ払い「鍵を探している」

友人「それなら手伝おう。この辺りに落としたんだね?」

酔っ払い「違う。そっちの暗い方に落としたんだ。でも、ここの方が明るいから」

(これは マクロスキー著「ノーベル賞経済学者の大罪」を読んでいた時に見かけた一節です)

 

 

 

 

キャッチーな『最新の高度な投資理論・技術』が照らし出す、明るい足元でしか “鍵” を探さない、ただの「酔っ払い」には、気を付けるべきです。

 

 

ですから、私は、クオンツファンドを見るときには、いつもこう心がけています:

私は、芸術品を買うのではない。

だから、どんな豪華な施設で、それっぽい評論家が出て来て、どんなに美辞麗句を並べたてて、称賛しようとも

「それで腹は満たされるのかね?」とさも当然のように言える“場違いさ”を忘れてはいけないし、それを恥じても、恐れてもいけない。

 

くどいように、何度も言いますが、結局のところ、「手段は手段に過ぎないのであって、目的にしてはいけない」のです。

 

  

   ☞ AI日本株式オープン(除く、転換点予測モデル)のパフォーマンス (追記:2018.09.15)

 

 

良いクオンツファンドであれば、「最新」だろうがなんであろうが、パフォーマンス向上に役立つのであれば、それを取り入れて当然と言えます。

当たり前のことであり、何よりも真っ先に、強調されるべきフレーズではないのです。

まず語られるべきは「パフォーマンス」であって、優れていた理由を説明する段階になって、そこで初めて「最新の手段」が登場すべきなのです。

 

 

 

結果こそがすべてであり、クオンツ・ファンドのアピールポイントが、「結果(実運用での実績)」でなければ、

そんなファンドは、実力がないので、無視して問題ないと思います。

  ☞ クオンツファンドの選び方:「クオンツのセンス」を見る

 

 

 

もちろん、私たちが理解も出来ないような、とても高度で先端的な理論や技術を駆使して、そして、それだからこそ、

他では実現できない高いパフォーマンスを実現した、というのであれば、心から本当に尊敬します。

ですが、残念ながら、調べてみた限りでは、実態は、そうではありません。

 

 

 

結果が出ていない焦りから、目先の“成果”ばかりを求めて、間違った方向を向いたまま、さらに進もうとすることもあるかもしれません。

ですが、そのせいで、手段の目的化がさらに進み、それがさらなる質の低下につながるという、悪循環に陥っているように思えてなりません。

 

ただ、そうであっても、『結果がすべて』の視点で評価し続ければ、いつかは、その評価をクリア出来るようなモデル開発の重要性に気付き

尽力してくれるようになると思っています。

私は、そちらの方が、正しい方向であると、信じて疑いませんし、それこそが、日本の運用ビジネスの発展に繋がるものと思います。