社会を見て、聞いて、感じる。

人生そのものがフィールドワーク。

8月4日(金)

2017年08月06日 18時47分12秒 | 2017年

  5時50分起床。今日は夏休みの第1弾で、千葉のいすみ鉄道に乗りに行く。

  6時半前に家を出て、東京駅7時15分発の外房線特急わかしお1号に乗る。指定席が完売ということで混雑するのかと思いきや、東京を出る時の自由席はガラガラだった。朝食は、東京駅で購入した「神田明神下みやび」の牛めし弁当を車内で頂く。

  途中、蘇我から茂原の20分ほどの間だけ車内が混雑したが、それ以外は空いていて、私が下車する大原駅に着く頃にはほとんど人がいなくなっていた。

  大原駅から、今日のお目当てのいすみ鉄道に乗り換え。1日乗車券を購入し、ホームに出る。

  いすみ鉄道は、千葉県の大原と上総中野を結ぶ全長約27キロの小さなローカル線である。元々はJR東日本の木原線だったが、昭和63年に現在のいすみ鉄道に経営が移管された。千葉県や近隣の市が株主となっている、俗にいう「第三セクター」と呼ばれる路線だ。他の第三セクターに漏れず、この路線も以前は大規模な赤字を垂れ流しており、存続の危機に陥っていた。

  しかし、平成21年に公募で元航空会社勤務の鳥塚社長が就任してから、数々の経営活性化策を打ち立て、改善に向けて歩を進めている。その活性化策がなかなか斬新で、一番の売りは「なにもない」ことだという。地域のありのままの現状を、ローカル線の魅力として打ち出したのだ。加えて、ムーミン列車の運行や鉄道ファンに人気のあるキハ28、52を活用した観光列車の充実、売店やWEBでのグッズ販売など、鉄道マニアだけでなく多くの人の目に留まる取り組みを続けており、ファンを増やしている。

  また、これは実際に乗車していて気付いたのだが、近所の子どもたちは電車が来ると笑顔で手を振っているし、駅では近所の老人が駅の掃除をしていたりする。地域住民が一体となっていすみ鉄道を応援しているのがひしひしと伝わってくる。決算書の数字だけを見ると、本質的な経営改善への道はまだまだ遠い。しかし、この鉄道は間違いなく前に進んでいる。この鉄道に乗った多くの人が、その実感を感動と共に持ったことと思う。…と、先にまとめを書いてしまったが、そろそろ先に進もう。

  大原駅8時55分発の大多喜行きに乗る。ムーミン列車の名にふさわしく、至る所にムーミンのキャラクターが点在している。また、「なにもない」ことを売りにしているだけあって、沿線の景色を眺めていると、本当に何もない。よくこんなところに鉄道を通そうと思ったなと、関心してしまうほどだ。

  30分弱で、大多喜駅に到着。いすみ鉄道の中では一番と言っていいほど大きな駅で、駅舎のすぐ隣に本社が置かれているようなところなのだが、驚くほど質素な駅である。

  大多喜駅周辺は、大多喜城の城下町だったことから、今もその雰囲気を残している。雨が降っていたのでそれほど歩き回ることは出来なかったのだが、なかなか風情のある街並みである。

遠くに大多喜城が見える。雨が降っていなければ行ってみたかった。

  大多喜駅へ戻り、今度は9時55分発の大原行きに乗って、先ほど乗って来た線路を引き返す。車両にくっついているサボ(行先などが書かれたプレート)がやけにアニメちっくだなと思ったら、いすみ鉄道の活性化に尽力してくれた大多喜高校の女子高生への感謝を込めて、卒業の際に作ったものだということだった。こういう地域密着感が素晴らしい。また、車内広告では、近隣の市町村の観光案内が多く掲載されていた。行政も鉄道を応援し、鉄道もまた地域のPRに一役買っているのだ。ローカル線として理想的な行政との関係性を構築しているように感じられる。

  10分ほどの乗車で、国吉駅へ到着。駅の周りで猫がくつろいでおり、平気で駅舎の中も歩き回っている。また、国吉駅に限ったことではないが、いすみ鉄道の駅には大抵、いすみ鉄道を応援する自動販売機が設置されている。せっかくなので、この自動販売機でお茶を購入。

  国吉駅では、無料で自転車を借りることが出来る。無料というのが珍しい。自転車にはかなり年季が入っているが、無料だし、雰囲気的にも合っている。さっそくお借りし、散策に出かける。

  自転車で目指すのは、「ポッポの丘」。ファームリゾート鶏卵牧場が運営する施設である。私の勝手な想像の中では国吉駅からそれほど遠くないだろうと思っていたのだが、いざ地図を見てみると、約5キロも離れていた。自転車がなかったら、到底辿り着けない距離である。延々と続く田園風景を眺めながら、のんびりと自転車を漕ぐ。

  色々と寄り道をしたので、30分ほど掛けて「ポッポの丘」に到着。本来ここは牧場が経営する卵の販売所やカフェなのだが、なぜか周辺に鉄道車両がたくさん設置されている。しかも、鉄道ファンにとっては大変貴重な車両が並んでいることから、有名な観光スポットになっている。私も到着した瞬間、これはすごいやと舌を巻いた。

旧型の丸ノ内線車両。車内では、実際に警笛を鳴らすことも出来る。

塗装し直してあるが、旧型客車が並んでいて、車掌室などもそのまま残されている。

貨物用コンテナまで置いてある。

箱根登山鉄道の旧型車両。

銚子電鉄のデハ701。

同じく銚子電鉄のデハ702。奥の2両(北陸鉄道モハ3752といすみ鉄道旧型車両)はカフェの座席用になっている。

坂の斜面に沿って、大山ロープ―ウェイが設置されている。ちょうど良い勾配。

ここが圧巻。DE10と24系客車に始まり、183系特急車両が置かれている。

  鉄道車両を見て回っているとここが牧場の敷地であることを忘れてしまいそうになるが、ここのもうひとつの名物が、カフェで食べられる卵かけご飯である。牧場でとれた卵のご飯を、鉄道車両の中で食べられるのだ。車両が丘の上にあるので、窓からの景色も素晴らしい。卵は黄身が濃厚で、卵かけご飯にするとほんのり甘みがあって美味しかった。

  自転車にまたがり、来た道を戻る。その途中、作田稲荷神社に立ち寄る。コンパクトだが、とても雰囲気のある神社である。一面に生えている苔も美しい。

  段々と雲行きが怪しくなってきた。ここで降られると困るので、駅の近くまで少し急いで自転車をこぐ。

  駅の近くまで来たところで、国吉神社と、隣接する上総出雲大社へお参りする。最近は神社仏閣にお願いしたいことがあるので、見つけると立ち寄るようにしている。国吉神社には御神木となっている大銀杏やあじさい小路など、見どころも揃っていた。次は銀杏が色づく頃に来てみたい。

  国吉駅へ戻る。この駅にも、驚くほど何もない。駅舎と反対側にある上総中野方面行きのホームから奥に入ると、ムーミンの像などが置かれた庭園があったりするが、私の技術では写真で撮るとどうにも魅力的に見えないので、載せるのはやめておく。

  国吉駅13時01分の上総中野行きに乗り、終点まで乗車。効率的に回るために一部行ったり来たりしたが、これでいすみ鉄道の全区間を乗車した。先のまとめで述べたように、魅力的な路線だった。

  上総中野駅からは小湊鉄道に乗り換えて内房(五井)に抜け、房総半島を横断するのだが、次の小湊鉄道の出発まで約1時間半もある。駅から少し歩くと何軒かご飯屋さんもあるらしいが、お腹も空いていなかったので、駅でゆっくりと過ごすことにした。こんな時間の過ごし方も、贅沢に感じられる。最初はホームのベンチで過ごし、途中で雨が降ってきてからは駅舎の中に移動した。駅舎の中には来訪者ノートが置いてあって、たくさんの人がコメントを残していた。そのコメントがいすみ鉄道や小湊鉄道、周辺地域に関する温かい内容で、読んでいるほうもほっこりとした気持ちになる。私だけでなく、多くの人にとって、ここは自然と心穏やかになれる場所なのだろう。

  いすみ鉄道の列車が到着したのに続いて、小湊鉄道の列車も15時頃に到着。一気に駅が華やかになる。折り返しの出発までの間に一通りの写真を撮る。小湊鉄道の車両もまた、味があって魅力的だ。上総中野駅の発車は15時09分。切符は、車内で車掌さんから購入する。今では珍しい硬券で、その場でパンチをつかって日付や乗車駅、降車駅、値段などを打ち込んでいく。終点の五井駅までは約1時間10分。古い車両ならではの揺れを楽しむ。

  定刻通り、16時20分に五井駅へ到着。これにて、本日のローカル線の旅は終了である。

  内房線で千葉へ出て、総武線快速に乗り換える。さすがに疲れが出てきたので、千葉から品川まではグリーン車に乗った。

  18時過ぎに蒲田に到着。品川で乗り換えた頃から、人の多さに辟易している。

  会社から帰ってくる妻を待つため、駅前の喫茶店「和蘭豆」で休憩。卵かけご飯以来何も口にしていなかったので、フレンチトーストを頂く。

  妻と合流し、サブウェイでサンドイッチを買ってから帰宅。久しぶりに食べたローストビーフサンドは、やっぱり美味しかった。サブウェイが職場の近くにあれば、確実に通うのだが。

  今日のお土産で、妻にはミーのエコバッグ、自分にはキハ52系のポーチを買ってきた。ポーチに関しては一目ぼれなので、何に使うかはこれから考える。