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芥川賞作家は大多喜駅勤務!

2009年09月14日 | いすみ鉄道沿線の文学・歴史

(財)千葉市勤労者福祉サービスセンター発行の「ゆるり」にいすみ鉄道が掲載されていました。 

房総紀行☆大多喜町 半田義之「鶏騒動

 半田義之は1939年、国鉄の大多喜駅に勤務している時に、本作を書き上げた。田舎の村に引っ越してきた、ロシア人男性ドナイフと、偏屈な与介の婆の交流を描いた本作は、第9回芥川賞を受賞。作家としての第一歩となった。

 口を開けば悪口ばかり。食い意地が張っていて、友達もいない。亭主も息子も家を出て行った。そんな婆にとってドナイフは、卵を高く売りつけられる格好の金づる。古い卵を産みたてと装い、高く売りつけることもあった。しかし、いつしか婆にとって、唯一の友人となっていた。ある日ドナイフは、婆のためにマカロニを買ってきた。初めて食べるマカロニの味の尊さは、婆に初めての感情を芽生えさせた。それはひたむきに優しさを向けてくるドナイフへの感謝の気持ち。喜びが心を満たしていく。マカロニをくわえ、ぷーっと吹き、2人は膝をくっつけて笑った。

 ある日ドナイフは「お婆さんにだけは見てもらいたい」と、いつも大切に抱えていた、財布の中身を見せた。そこには婆の見たこともない大金が。身寄りもなく、祖国にも帰れないドナイフが大金を持っている。驚きとともに、婆によぎる悪い考え。しかし次第にそれは薄れていく。「これでドナさんも大安心だ」人の幸福を見て、自分も恵まれた心になることを、婆は初めて経験したのだった。

 大多喜駅は現在いすみ鉄道が所有する。のどかな里山を走る足として、今も昔も変わらずに愛され続けている。 

「ゆるり」より