アナタは酒が強い。
そう言われることがよくあったし、自ら認めてもいた。
過去形なのは、加齢とともにお世辞にもそうとは言えなくなったと自認しているからだ。
しかし、けっして強くはなくなった今でも「弱い」と言われることはない。
どうにかこうにか、かつての体裁を保っているかのように見えているらしいのは、長い年月のうちに身についた酒席のテクニックゆえだろう。
したがって、気を許すとイチコロだ。
そんなものだから、強い酒は極力飲まないようにしているし、努めて酔わないような呑み方をしている。
ところがきのう、泥酔をしてしまった。
何年ぶりだろう。さいわい昼酒、しかも比較的短時間だったので、朝には回復し、無事出勤できたが、それほどに酔った記憶は、この二十年ほどのあいだであと2度しかないほどの大酔いだった。たのしくて気を許したうえに、冷や酒を数杯一気飲みしたのが相まった結果、あえなく轟沈だ。
朝起きて、記憶をたどる脳内に浮かんだ言葉は「ぶざま」。
我昔所造諸悪業
皆由無始貪瞋癡
従身口意之所生
一切我今皆懺悔
読経のはじめに唱える懺悔文が、今朝ほど身に沁みたことはない。
いやはや酒は怖い。