散日拾遺

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「しおかぜ」から「いずも」へ/時刻表を懐かしむ

2014-08-14 23:48:34 | 日記
2014年8月14日(木)
 長男が合気道の合宿か何かで、鳥取へ移動したいのだという。飛行機やらバスやら検討したあげく、古式ゆかしく鉄道ということに落ちついた。
 「しおかぜ」で岡山、そこで「いずも」に乗り継いで米子まで。それってJRの何線?と訊いて即答のないのが、スマホ検索の盲点である。
 8月6日(水)の卒論ゼミで京都のFさんの嘆いたのが、まさにそのこと。僕よりも上の世代に属する旅行好きのFさんにとって、かつての旅の大きな楽しみが時刻表をめくるそれだった。実に真に奥の深いもので、時間と予算と目的地を勘案しながらページをめくっていると、思いがけない選択肢が次々に現れる。際どい乗り継ぎのタイミング、季節列車というジョーカーの発見、そしてクラスの中には、どういう頭の構造をしてるんだか、時刻表をあらかた諳んじている鉄道オタクが必ずいた。(今なら発達障害で片づけられてしまいそうだ。)
 そのように時刻表と相談して計画を練る限り、何線だか分からないということは起きえなかったのである。
 「今はもうダメです。堕落やと思うても、一発で正解の出てくるスマホの便利には敵いません。」
 Fさんの嘆き、まったく同感である。機械の進歩が人間を日増しにバカにする。そうと分かっていても、抗うのはきわめて難しい。

***

 正解は伯備線、むろん伯は伯耆、備は備中だ。山陽と山陰を連絡する路線を「陰陽連絡線」と総称するが、伯備線はその中でいち早く電化や改良工事が進んだ歴史をもち、運転本数も最多という。
 「太田先生は、その経路で東京と松江を往復していらした」と母が懐かしんだ。
 伊予北条駅まで車で送っていくと、駅には体格の良い女性駅員が一人だけ、長距離発券から構内アナウンス、検札から高齢の客の誘導まで、よろずを一手にこなしている。予讃線は単線なので、目の前の一番線ホームに列車が左から入ってきたり、右から入ってきたりする。
 「しおかぜ」では瀬戸内の海の眺めを堪能できるだろう。岡山からの「いずも」は残り少なくなった寝台特急列車で、中国の夏の山間を楽しませてくれる。海山兼行のお得な道行だ。
 おまけに8時23分発の「しおかぜ」は、めでたくもアンパンマン列車なのだった。見送って帰ろうとすると、件の駅員さんが「さびしいですねえ」と親の胸中を忖度してくれる。気持ちが嬉しいけれど、ちょっと違うんだな、「さびしい」というのと。

 昨日の疲れが残って、午後は長い午睡。珍しくシリーズものの夢を見た。きれいな人だったな・・・
 起きて土間に降りたら、PCのモニターにチビヤモリが貼りつき、気配を感じてそそくさと逃げていった。


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